タヌキモ

タヌキモUtricularia x japonica Makino

タヌキモの草姿(上段左)、花(上段右)、殖芽(下段左から1番目)、殖芽葉(2番目)、花茎断面(3番目)および捕虫葉(4番目)

イヌタヌキモおよびオオタヌキモと並んで、野外同定が困難な種の1つ。夏ごろの花が咲く時期か、冬前の殖芽が形成されるタイミングでないと、同定は難しい。イヌタヌキモやオオタヌキモと区別されていなかった時代もあり、正確な分布は不明な点が多い。

貧栄養な水域に分布する浮遊性水生多年草。イヌタヌキモおよびオオタヌキモの中間的な形態が特徴。イヌタヌキモを種子親とオオタヌキモを花粉親とした交雑により生じたF1雑種系統である(Kameyama et al., 2005)。雑種であるため種子ができない。イヌタヌキモとの識別が困難であったことを反映してか、シノニムとしてU. australis f. australisがあり、もともとはこちらがU. australisと考えられていた。過去の学名は混乱しているので、種子を作るU. australisであればイヌタヌキモ、種子を作らないU. australisであればタヌキモであることを留意していた方がいいだろう。交雑種であることが明白となったので、両親種(原種)とは同じ扱いをするべきではないが、分布が広く見かける機会が多いためここでは同等の扱いとしている。種小名japonicaは「日本産の」という意味であり、その分布に由来する。和名は「狸藻」と書き、「タヌキの尾に似た藻のような水生植物」を意味する。