ロリドゥラ科

Roridulaceae

本科にはロリドゥラ属Roridulaのみが含まれる。かつてはモウセンゴケ科や、より形態の似たビブリス科に近縁だと考えられ、一時期はビブリス科に含まれたが(小宮,1995)、現在はそれらと全く類縁関係のないものと考えられている。むしろ食虫植物ならば、サラセニア科に近縁である。ロリドゥラ科自体はマタタビ科と姉妹群をなす(Ellison et al., 2012)。

ロリドゥラ属Roridula

捕虫様式:鳥もち式

生育地:アフリカ大陸南部ケープ地域

Roridula gorgoniasの捕虫葉

Roridulaの捕虫葉はほかの鳥もち式と比較して、非常に粘着力が強く、葉が枯死した後も粘着力が持続する。その秘密は、テルペノイドと呼ばれるヤニ状物質だ。

Roridula gorgonias

ハッとするような目を惹くピンクの花を咲かせるのがRoridulaの特徴だ。日本だといつ咲くのかいまいちはっきりしないが、経験では春先か、秋~冬にかけてが多い。

概要

本属には、2種Roridula dentataR. gorgoniasが含まれる。したがって、ロリドゥラ科には2種のみが存在する。高さは2 mほどになる亜低木であり(Barthlott et al., 2007)、樹木になるという点で他の食虫植物とは対照的である。葉は枝の先端部にまとまり、古くなるにつれ順次落葉する。花は2種とも花弁5枚のピンク色であり、送粉は共生するカメムシ(後述)に依存している。アフリカ大陸南部ケープ地域に生育する(Barthlott et al., 2007)。この地域は、フィンボスfynbosとして知られ、開けた灌木植生である。また、野火が起こることも特徴であり、ロリドゥラ属はその野火に適応し、火事ののちに種子が発芽する。この野火が競争者である他の植物を抑え、ロリドゥラ属の生存に一役をかっている。

食虫性

腺毛は葉の縁につき、他の鳥もち式捕虫葉よりもずっと強力な粘液を出す。また、葉が枯れても粘液が残るという点でかなり異質である。枝自体も粘つく。これは、他の鳥もち式の食虫植物とは異なり、親油性のトリテルペノイドが粘液の主体となっているからである(Simoneit et al., 2008)。この樹脂質の粘液は、長期にわたり粘着性を維持し、さらに乾燥条件下でもほとんど質量が変化しない(Voigt and Gorb, 2010)。この乾燥条件でも粘液が消失しない性質は、夏季に乾燥するフィンボスにおいて、過剰な日光を反射し、蒸発散による余計な水分損失を防ぐのに役立つであろう(Voigt and Gorb, 2010)。

粘液成分の主体は親油性物質のため、粘液中には水溶性である酵素は含まれない。したがって、これを理由に、一度この属は食虫植物から除外されている(Barthlott et al., 2007; Juniper et al., 1989)。しかしながら、この植物はカスミカメムシとの共生関係を結び、カスミカメムシの排泄物を養分としている。Rordula gorgoniasPameridea roridulaeと、R. dentataP. marlothiiとそれぞれ共生関係を結んでいる(Ellis and Midgley, 1995; Anderson and Midgley, 2002)。また、腺表皮にフォスファターゼ活性を有し(Płachno et al., 2006)、この点でも定義からすれば間違いなく食虫植物となる。

名前の由来

属名Roridulaは「露で覆われたもの」という意味であり、植物体の粘液にちなんだものであろう。英名は特にこれ、という名の呼び名がないように思われる。強いてあげるならば、現地名としてvlieëbosというものがあり、意味は「ハエを捕らえる低木」で、この植物の性質を表したものである。和名はムシトリノキがあり、そのまま「虫捕りの木」であるが、この和名を見ることはほぼない。属名の「ロリドゥラ」の方がよく見かける。