フクロユキノシタ科

Cephalotaceae

本科において食虫性を有するのはフクロユキノシタ属Cephalotusのみである。カタバミ目に属し、カタバミ目では本科以外に食虫性を示す科は存在しない。姉妹群として提唱されているのはブルネリア科Brunelliaceaeという植物群である(Stevens, 2012)。形態的な比較から、捕虫器は盾状葉由来であると考えられており、カタバミ属Oxalisなどの小葉に分かれた盾状葉との関係も示唆されている。


フクロユキノシタ属Cephalotus

捕虫様式:落とし穴式

生育地:オーストラリア(ウエスタンオーストラリア州)

フクロユキノシタ Cephalotus follicularisの捕虫葉

フクロユキノシタは普通葉と捕虫葉を作り分ける不思議な植物だ。普通葉は特徴がほとんどないが、捕虫葉は複雑な構造である。捕虫葉の蓋部分は色が抜け透けている。

フクロユキノシタ Cephalotus follicularis

フクロユキノシタの名前の由来は、花がユキノシタに似ているからだといわれる。6枚の白く見える部分は花弁ではなく、萼片である。

概要

本属には1種、フクロユキノシタCephalotus follicularisのみが含まれる。多年生ロゼット状の草本植物であり、太い根と2種類の葉を有する。1つは卵形状の捕虫能力のない“普通”の葉であり、もう1つは袋状の捕虫器である。花は花弁を有さず、6つに割れた萼片が白くなる。オーストラリア南西部のごく限られた地域に生育する(Barthlott et al., 2007)。

食虫性

捕虫器は、蓋と袋部分の接続部に植物体とつながり、大きさは2~5 cm程度である(Barthlott et al., 2007)。捕虫器の蓋は、明りとりのために一部が透け、内外ともに蜜腺を有し獲物を誘引する。口部分は、ウツボカズラ属のように口の内側に向かって歯状の突起が並び、この部分にも蜜腺が存在する。捕虫器入口はやや捕虫器内部に陥入し、ねずみ返し状となる。捕虫器内部には液体が溜まり、この部分で獲物を溺死させる。捕虫器の内壁には、微視的な短い下向きに流れる毛状模様が存在し、これにより獲物が内壁に足をかけることを妨害する(Barthlott et al., 2007)。一方で、外壁には垂直な翼状の2本の突起と、中央の2枚のひだのある突起(T字状)を有する(Barthlott et al., 2007)。これらの突起は毛深く、獲物を捕虫器の口まで登りやすくする効果があると考えられている。

名前の由来

属名Cephalotusは「頭状のもの」を意味し、本種の花の葯に由来して名付けられた名前である。種小名follicularisは「小胞」を意味し、この植物の捕虫葉に由来する名前である。英名はAustrarian pitcher plant(オーストラリアの嚢状葉植物)で本種の分布域に由来する。和名はフクロユキノシタで「袋雪の下」と書く。これは本種の花が、別種の植物ユキノシタ(ユキノシタ科ユキノシタ属Saxifraga)に似ているからとされるが、実際はそれほど似ていないように思える。むしろ本種の捕虫葉の蓋とユキノシタの葉の方がよく似ている。和名とともに属名であるセファロトゥスで呼ばれることも多い。