オオバコ科

Plantaginaceae

本科において、食虫性が認められるのはフィルコクシア属Philcoxiaのみである。オオバコ科は多様なグループであり、フィルコクシア属はオオアブノメ連Gratioleaeに属する(Fritsch et al., 2007)。オオバコ科はシソ目に属するため、タヌキモ科やビブリス科に比較的近縁である(Fritsch et al., 2007; Müller et al., 2004; Refulio-Rodriguez and Olmstead, 2014)。


フィルコクシア属Philcoxia

捕虫様式:鳥もち式

生育地:ブラジルのセラード

Philcoxia

筆者も実物を見たことがない。2012年に食虫植物の仲間入りをした植物であり、まだまだ情報は少ない。これからもっと情報が出回ることに期待しよう(Pereira et al.(2012)、Fritsch et al.(2007)をもとに作成)

概要

本属には、3種Philcoxia bahiensisP. goiasensisP. minensisが存在する(ICPS, 2014)。一年生もしくは多年生草本であり、茎は地下に存在する。直径0.5~1.5 mmの円形から腎臓形の盾状葉を有し、地表面近くに葉を配置する。種によっては地下に存在する茎から葉柄が長く伸びて、葉は地表面に出てくる。根は貧弱であり、菌根菌と共生関係にない点は、他の食虫植物と共通する特徴である。花は葉のない花茎につく(Fritsch et al., 2007)。花茎は植物体に比して長い。

3種いずれもブラジルのセラードCerradoと呼ばれる熱帯サバナに生育する。生育地は標高800~1450 m の地域であり、白砂に生育する。これらの植物が生育する土地は、食虫植物であるタヌキモ属やゲンリセア属も生育しており、生育地の特性が食虫植物に適した環境であることを示唆している(Pereira et al., 2012)。

食虫性

これらの植物は属の記載は、Taylor et al.により2000年になされた(Pereira et al., 2012)。形態的には他の食虫植物のような有柄腺を有していたが、野外観察において捕獲されている獲物が存在しないことからTaylor et al.(2000)は食虫性に否定的であった(Pereira et al., 2012)。食虫性を実験的に確かめようとしたのはFritsch et al.(2007)である。フィルコクシアの葉の表面には線虫が捕えられており、ゲンリセア属のような微生物を捕える食虫植物である可能性があったためである。しかし、Fritsch et al.(2007)はプロテアーゼの検出により食虫性を検証しようとしたが、プロテアーゼは検出されなかった。フィルコクシアの食虫性が確認されたのは、Pereira et al.(2012)の実験による。Pereira et al.(2012)は15Nで標識した線虫を餌として与えると、15Nが葉内に吸収されることを確かめた。また、葉にフォスファターゼ活性があることも確認しており(Pereira et al., 2012)、食虫性に関する強力な証拠となっている。

名前の由来

属名PhilcoxiaはKew王立植物園の植物学者David Philcoxに由来する。英名で見かけるものも無く、また和名も無い。日本では、ほとんどこの植物の存在が浸透しておらず、筆者は未だにこの植物の呼称を聞いたことがない。しかし、おそらく、属名で呼ばれることになるであろう。