食虫植物解説

News: 2022.3.10 update

2022.3.10 奇形葉から考える食虫植物 更新

2022.1.28 日本の食虫植物 更新

ここは管理者 野村康之が食虫植物に関する知識の普及のために作成しました

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 世界にはさまざまな場所に植物が生育しており興味深い種も多い。その中でも食虫植物はひときわ目を惹きそして魅力的な植物群である。自然選択による進化論をうちたてたCharles Darwinは手紙の中で次のように述べた。

“…for at this present moment I care more about Drosera than the origin of all the species in the world.”

「…、世界のあらゆる種の起源よりも、モウセンゴケの方もっと興味があるんだ。」

1860年11月24日 Charles DarwinからCharles Lyellへ宛てた手紙より

手紙内の発言を見てもわかるように、Darwinは食虫植物であるモウセンゴケにそうとう興味を示していたようだ。『種の起源』は彼の著書の中であまりに有名なものであるが、実は『食虫植物』という本も出版している。食虫植物研究においてDarwinの果たした役割はとても大きい。

 生物に携わる者以外にも、その名前くらいは広く知られているDarwin、そして彼を虜にした食虫植物であるが、一方で食虫植物の認識が日本で一般に浸透しているかといえば、きっとそうではない。食虫植物の存在自体は比較的多くの人が認識しているが、「食虫植物がどんな植物か」を理解している人は少数だ。中には“植物が積極的に生物に襲いかかる”というイメージが根強い人も見受けられる。食虫植物の代表として取り上げられるハエトリグサの、あの素早い動きが大きな影響を与えているのではないであろうかと私は考えている。もしくは植物が動物を「喰う」という一般の人から見れば衝撃的な事実がそういうことを想起させるのかもしれない。しかし、ほとんどの食虫植物はまったく動かず、動きのある食虫植物が少数派である。また、全ての食虫植物は罠を利用する、すなわち獲物が罠にかかるのを待ち伏せているのであり、獲物に「襲いかかる」ことはない。

ハエトリグサDionaea muscipula

ハエトリグサは食虫植物の中でもっとも有名な種類の一つと言って過言ではないだろう。その特徴的な生態は、現代人だけならず、歴史上の人々にも多大な興味、インスピレーション、そして誤解をも生みだしてきた。

 これらの現象は、そもそも日本語文献で食虫植物に関するものが少なく、その文献も一部の人に知られるだけであるというのが大きな要因ではないかと思う。また数少ない日本語文献もほとんどは園芸書であり、食虫植物の生態学や進化学についてまとめたものはもっと少ない。一方で海外ではさまざまな本が出版されていて、生態学や進化学についてまとめたものもある。ドイツではその歴史から食虫植物研究が盛んであると聞く。

 決して、日本における研究や知識の質が低いとは思わない。日本の地の利を活かした研究や、食虫植物の起源に迫るような研究もある。栽培家の人々の中に蓄積された知識も、全く馬鹿にできるものではない。むしろ学術誌として文面に残っていないというのが、非常に残念である。しかしながら、日本人内で知識が偏在している、という事実も認めざるを得ないであろう。

 そこで私の覚書的意味も込めながら、新旧、国内外、一般的に言われていたことや、覆ったことなどを日本語にして集めてみたのが本ページである。なるべく感情をこめず、中立的に書いているつもりだが、思い入れの強い植物群であるし、また調べが足りていないところもあり、しばしば感情的、随筆的になっている点もあるが、どうかご容赦願いたい。