SUB STORY


COLORS 番外編

【Team MONOCHRO】

 これは白狼と黒猫の出会いと絆の物語※BL表現あり(全年齢向け)※なんでも許せる方向け 

◆主な登場人物

◆グレイ本編【COLORS】の主人公。マルチチーム【COLORS】の新入り。最近はメンバーを観察し、メモする事が日課になっている。
◆ブラック本作の中心人物。グレイをCOLORSに勧誘した張本人。シューティングゲーム・マスターの称号を持つ。
◆ホワイト本作の中心人物。自他共に認める女嫌いのサブリーダー。ダンスゲーム・マスターの称号を持つ。
◆レッドCOLORSのリーダー。弟のブルーがあまりにもログインしないのが悩み。もう1人ぐらい増やしたいとホワイトに無茶ぶりかます、所謂立役者ポジ。
◆イエローCOLORSのムードメーカー。今回あまり出番なし!でも面白い事にはちょっかいかけたがる。
◆ブルーCOLORSのメンバーの1人。今回出番なし。可愛い子が入るかもしれないと知り、内心超嬉しい。
Episode.0 プロローグ   ここは《Everyone’s Welcome(誰でも歓迎)》を掲げ、誰もが平等に暮らし遊べる世界―GAME WORLD。 その名の通り、誰もが『ゲーム』で遊び、その報酬としてポイントを獲得し、ライフポイントとして利用することで何不自由なく時間を過ごせる世界…を提供する施設。そんな誰もが望むであろう世界にも、薄暗い影が潜んでいるもの。 その影は日に日に色濃くなりつつある。先日もまた、この世界の正体を知らない無知で憐れな《同志》が被害を受けそうになっていたところを助けたばかりだった。 「皆さん、おはようございます!」  この元気に挨拶してきた人物は、先ほど述べた《同志》の一人、グレイ。 彼は諸事情により、この世界に閉じ込められてしまった。保護した僕らも同様に元の世界に戻れなくなってしまった為、このチームのアジトでの生活を余儀なくされることになった。 最初は不慣れな環境に緊張も伴って強張っていた表情も数日過ぎれば、笑顔を見せるようになった。興味本位とはいえ、このチームに加える事を薦めた者として胸をなでおろす。 「お疲れさまです、グレイ。今日も元気そうで何よりです」「おっつ~♪ グレイちんもだいぶ慣れてきたんじゃない?」「はい、おかげさまで! 今日もご指導よろしくお願いします!ブラック先輩、イエロー先輩!」  グレイはこの世界に来たばかり。 称号もゲーム・ルーキー…ゲーム自体初心者だが、ここに迷い込んでしまった時に真の姿を知られてしまい、この世界を管理している運営に目をつけられた。いつなんどき彼らの魔の手がかかってしまうか分からない為、僕たちでグレイをゲーム・マスターにするべく『育てる』ことに。 これも僕、ブラックが提案したものだ。 当初はリーダーもこのやけに落ち着きのないイエローもこの提案に乗ってくれたものの、肝心な僕の相棒がなぜか頑なに反対していた。結局、グレイの執念やリーダーの威圧で折れてくれたみたいだが… 「ピーピーうるせぇぞ、ドジ助ぇ」  あぁ、その相棒もお出ましだ。 彼の名前はホワイト。 その名に相応しい白い毛並みが目立つオオカミを模した毛皮マントのフードを深く被っている。 ただでさえそのオオカミの顔も凶悪だというのに、本人も目は影で見えずとも持ち前の犬歯をむき出しで威嚇するものだから、その威圧感に誰もが縮こまってしまう。 ホワイトはズカズカと僕のほうに歩いてきたかと思えば、当然のように隣にドカッと座った。するとポケットから串の先に付いてる丸い形のキャンディを取り出し、口に含む。 そして― 「……ブラック」  呼ばれた僕は「はいはい」と少し苦笑ぎみに応えた。 それもさも当然の事のように、というよりはいつも通り彼の身体に自分の身を横向きに委ね、何事もなかったかのように持っていたコーヒーを啜り一息ついた。 傍から見たら「異常」だとイエロー辺りが言っていたが、慣れてしまえばどうって事ない。彼はただ抱きついてくるだけなので、特に害がある訳ではない。それに僕自身、ホワイトという《椅子》の座り心地が思いのほか良いものである為、こうして彼の『おねだり』を甘受しているだけなのだ。 すると、その一部始終を黙って見つめていたグレイが、唐突に疑問を投げかけた。 「…やっぱりおかしくないですか?」「なにが~?」  彼の疑問にすぐに反応したのはイエローだった。 僕はというと、いったい彼は何に対して「おかしい」と指摘しているのか、心当たりがある気もしない事もないが…面倒な事には関わりたくないので敢えてスルーした。ホワイトも我関せずといった感じだった。 「イエロー先輩はなんとも思わないんですか? ボク、ああいうのはセクハラだって教わりましたよ」「ああいうの~? あ、もしかしてモノクロの事?」  敢えてスルーしていたが、やはり僕らの事だったか…と他人事のように思った。 それにしても、たまにグレイは天然なのか、わざとなのか…よく相棒を怒らせるような発言している気がする。 「う~ん、お子ちゃまなグレイちんには刺激が強すぎたとか?」「ム! ボクはお子ちゃまじゃないですっ…じゃなくて! 相手の…その…身体を触る事はセクハラだって」「それは極論ってやつだねぇ。あと、モノクロはお互い合意の上でやっている事みたいだし。なんだったら『お前らデキてんの?』って言いたくなるけど、慣れだよ、慣・れ」「……ちょっとさすがに聞き捨てなりませんけど、イエロー?」  『デキてる』なんて誤解にも程があるし、冗談ではない。 ホワイトとは確かにダブルスチーム《MONOCHRO》としてコンビを組み、一緒に行動する事は多い。互いの好き嫌いなども把握しているし、言わなくても表情や雰囲気でなんとなく察する事もあるが、断じて付き合っている訳ではない。これは、そう所謂ビジネスパートナーという言葉がしっくり来る。なにせこのチームの稼ぎ頭とリーダーにも言われているくらいなのだから。 「僕らはコンビとして付き合ってますが、そういう馴れ合いはしてません。ましてや男同士なんですから、変な誤解を招くような言い回しは控えて頂きたいです」「え、もしかして照れてるの~? ブラックってば案外可愛いとこあるじゃい゙った~~⁉ いきなり何すんのさ、アホホワイト!!」  どうやら、舐め終わった飴の残った串をイエローに向けて投げつけたようだ。 まるでダーツの矢のごとく。 イエローのウサギ型ヘルメット越しとはいえ、彼の腕力だからこその威力だろう。相当痛そうだ。 「さっきから、うっせぇんだっつってんだろが。黙って聞いてりゃ、好き勝手な事ほざきやがって…文句があるならまずはルーキー卒業しろや。ドジ助の分際でいっちょ前に口出してくんじゃねぇよ」  意外と話は聞いていたようだが、相変わらず口が悪い男だ。 だが、たまに自分が言いにくい事も言ってくれるところは有難い。自意識過剰かもしれないが、彼なりに僕をフォローしてくれた気もする。 それにイエローに対する体裁は本当にスッキリしたから、後でプレミアム級の甘菓子を馳走しよう。それで彼も機嫌が良くなる事だろうし。 二人ともホワイトの一喝に反抗する気力がないのか「はぁい…」と返事をして、部屋を後にした。おそらくイエローがグレイの特訓に付き合う形になるだろう。 彼らが部屋を出たのを確認し、僕はホワイトの身体に今一度ふぅっと力を抜くように凭れ掛かる。 ホワイトは「どうした?」と先ほどとは違って少し柔らかい印象を抱く声で問いかけた。 「…ふふっ、貴方にはいつも助けられてばかりだな、と。《あの頃》から貴方は変わらない」  部屋にホワイトしかいないせいか、いつになく自分でも驚くぐらい弱音を吐いてしまった。それぐらい、彼に気を許し過ぎてしまっているのかもしれない。 「けっ…お前らしくねぇな、前はムカつくぐらい負けず嫌いで生意気な野郎だったのによぉ」  揶揄っているであろう彼の表情は、いつものしかめっ面と違い穏やかな笑顔だった。普段からそうであれば、他人を引き寄せる魅力があるだろうに、勿体ない男だと思った。 「『負けず嫌いで生意気』は貴方もでしょう? …そういえば貴方と初めて会ったのもダンスゲームでしたね、今こうしてコンビ組んでいるとは信じられないくらい―」  そう、信じられないくらい、彼との出会いは誰から見ても…     …《最悪》な出会いだった。    ― ― ―  ¦  NEXT