正式な加入が決まり、次にレッド先輩は最強クラス《リーパー》が集う会議で得た情報を話だした。 まず、今回のリーパーズの召集は『転送装置の不具合』に関する説明がメインだったらしい。 不具合が起きた原因は「エネルギー不足」説が濃厚だという。
「『エネルギー不足』…この世界を維持する為のエネルギーが安定していないからゲートの機能も制限されたと運営サイドは考えているという事ですね」
架空の世界を創り上げるだけでも、おそらく膨大なエネルギーを要したに違いない。 身体と一緒でそれを維持し続けるのならば、なおさらエネルギーが足りないとなると機能が制限されてしまう事は容易に想像がつく。問題は…
「問題は〜、そのエネルギー不足が起こった『原因』と『補充』ってこと〜?無理ゲーにも程があるんですケド〜」
イエロー先輩が気だるげに言う。 そもそも『原因』がわかったとしても、『補充』はどうすればよいのだろうか。 ただのユーザーでしかないボクらにできることは限られてくるはず。
「…ブラック、グレイには【アレ】に関しては説明済みなんだよな?」
唐突にレッド先輩はブラック先輩に問いかける。
「…【アレ】??」「ええ、もちろん。グレイ、僕がココに案内する前にこの世界について少しお話しましたが、覚えていますか?」「あ、はい!…たしか―」
―【野獣人結晶化計画】。 野獣人(ビースト)は生まれつき魔力を身に宿す。万能にみえるが、実は暴走化するリスクもあり、魔力をコントロールできないとそれに身も心も侵され、最終的に純度の高い魔鉱石の結晶となる。そこに目をつけた運営が何も知らずに迷い込んだ野獣人を無理やり結晶化させて原動力にさせる、という非道極まりない計画のことだ。 その実態を調査していると、ブラック先輩から説明があったのを思い出した。
「俺様の読み通りだとしたら、今回の会議では核心に迫るもんがあった」
レッド先輩と目が合った気がした。気のせいだろうか。
「それは―…」
レッド先輩が話そうとした瞬間、まるでそれを阻止するかのように部屋中にサイレンらしきものが鳴り響いた。
「なになになに、このサイレン!?」「…っ!どうやら運営サイドより緊急速報が発信される合図のようですね」
ブラック先輩はモニターを表示させ、通信欄を確認したようだ。
「イエロー!プロジェクターを起動しろっ!!」「あいあいさー!」
レッド先輩が指示を出すと、ただのローテーブルだったはずの卓は瞬時に電子盤に切り替わった。そして部屋も暗くなり、卓の中心部にはホログラム化した円盤が現れた。 その円盤から出てきたのは―