MAIN STORY

Chapter .02

【We are "COLORS"!!】

近づく者は"勇者"か"愚者"か?彼らの『色』に染まる頃手遅れとなるだろう

Episode.01

  ―電子コードが無造作に流れる亜空間の中。 銀髪の少女が独り、漂う。  私は、私が嫌いだ。 『なんと素晴らしい!』『まさに“奇跡”だ!』『我々にはない魔力に愛されている!』  やめて。 好きで授かったわけじゃないの。 『ハクア、俺とリュウの愛しい娘』『お前はいつか誰よりも強く、美しくなることだろう』  父さま。 『顔を上げなさい。もっと自信を持ってよいのですよ』『私たちの自慢の娘なのですから』  母さま。 『余計な事はするな』  兄さま。 ごめんなさい。 出来損ないの娘で、妹で…   ごめんなさい。 『なんで謝るんだ?』  ザンザ様… いつだったか、彼と森を散歩した日。 悩みを打ち明けたあの日。 『…自分に自信が持てないのです。この力も、容姿も。全てが中途半端だから』  そして、また私は謝る。 こんな私でごめんなさい。 弱くて、何も役に立たない私で。 情けない嫁でごめんなさい。  私は自分の価値が分からなくなっていた。  それでも彼は俯く私に手を差し伸べてくれた。 何度も、何度も。   このままじゃ駄目だ。 変わりたい。 私は私自身を変えたい。  「その願い、叶えてやろうか?」  ――…え?
『…イ、おイ!』「ん…」『おイ!起きロ!!』  誰かの呼びかけにハッと目を覚ました。 慌てて身体を起こすと、先程までいたはずの路地裏ではなかった。そこはきらびやかなネオンが壁に広がっている薄暗い場所だった。まだ寝ぼけているのかもしれない、いや、夢の中かもしれないと頭を振ってみたが、景色は変わらなかった。 『デビデビくん、そんな乱暴は良くないわ。かわいそうよ』『ケケケッ!かわいそうなもんカ。エンジュは甘いネ。甘すぎるからユーザーは育たなイ、育たなイ』  目の前で口喧嘩を繰り広げる何かがいた。 1体は天使のような出で立ちで、頭には茶色いベレー帽。翼のついた茶色のポンチョとその下には灰色のローブをしていた。もう1体はどこかで見たことある悪魔のような出で立ちで黒い2本の角、真っ赤な身体に黒いコウモリ羽がついていた。 「…妖精(フェアリー)?」  2体をじっ…と見つめた私は、彼らの姿に希少種の1つ、妖精の姿を連想した。 私の声に反応した2体は口喧嘩をやめて、一斉にこちらを向いた。 『あら、起きたのね?はじめまして。ワタシはあなた達ユーザーをお助けするマスコットキャラクター、エンジュちゃん♪ よろしくね!』  突然自己紹介が始まってしまった。 『ケケケッ!オレ様はお前たちユーザーにイタズラするのが生きがいのマスコットキャラクター、デビデビくんだゾ♪ よろしくナ!』  2体は親切に状況を説明してくれた。 ここは超大型アミューズメント施設で造られた架空世界【GAME WORLD】。今私たちがいるこの場所は、その世界にあるアミューズメント・コーナーの一角らしい。立ち上がると、服装がここに来る前と違う事に気づいた。 『貴女はここに来て間もないから、初期アバター衣装のままなの』  初期アバター衣装というのは、新規ユーザーは必ず支給されるアイテムの1つだという。そもそもユーザーになった覚えはないのだが。抗議をしようにも説明はまだ続く。 『安心しろヨ、たくさんゲームして勝ち抜けば、色んなアイテムが手に入るんだからサ♪ケケケッ』「まぁ…服はこの際、別にいいや。帰る方法は? 施設だというなら、勿論あるでしょう?」  2体は顔を見合わせる。 何かおかしいことでも言っただろうか。帰り道さえ分かれば、あとはこのおかしな世界を探索して噂が本当かどうかを確かめたいだけなのだが。 『帰る方法は、貴女がここに来た時に使用した転移装置を起動することなの』「それはどこにあるの?」『『さあ?』』  ガクッと肩を落とした。どうやら、私が目覚めたここにはないらしい。 本来なら転移装置は元の世界とこの世界をつなぐゲートの役割をもつ。私が移動しない限り、転移装置はあるはずだが、ここにないということは… 「帰れないってこと...? 2人は分からないの?」『オレ様たちも万能じゃねぇんダ。お前のユーザーレベルが上がらない限り、オレ様たちの機能は使えなイ。つまり』「つまり、地道にヒトに聞けってこと、ね」  今度は2体がガクッと空中でズッコケた。 『ちっげーヨ!? さっきも言っただろうガ!ゲームでポイント稼げば、お前のユーザーレベルが上がって、できる事が増えるんだってノ!』  そんなに怒らなくてもいいのに。 特にゲームに興味のない私は、帰る方法を探ると同時に本来の目的を遂行することにした。 『コホン、わたしたちはいつも貴女のそばにいるわ。メニュー画面を開けば、いつでも呼べるから、困ったときは呼んでね♪』「めにゅー、画面?」  すると、いきなりホログラム化された半透明のモニターが目の前に現れた。 そこにはいつの間にか登録されているプロフィールに、いくつか鍵のかかったアイコンがあった。デビデビくんの言っていた『レベルを上げないと機能が使えない』というのは、おそらくこのことだろう。 2体はいつの間にかいなくなったと思えば、メニュー画面の中央部分に『アイコンのロックが解除されました』が表示された。解除されたのは、先程のエンジュちゃんとデビデビくんの2つのアイコン。 「よく分からないけど…じっとしていても何も変わらないものね。それに」  ―その願い、叶えてやろうか?   おそらくあのビラ配りの少年が私に囁いたに違いない。なんとなくそんな気がした。彼なら私が帰る為に必要な転送装置の事を知っているかもしれない。 
 ひとまず私が向かった先は――     BACK  ¦  NEXT