MAIN STORY

  Chapter.03

【The Game Reapers】

 "彼ら"は恐れられていた

 実力主義のこの世界で

 その存在は『脅威』そのもの

Another Story :Episode 5.5




―ヒューマーの演説後、グレイがブラックの部屋に連れていかれた頃。 アジトの会議室に残った4人は、念のために録画しておいた先程の演説内容を再確認していた。
「ねぇ、リーダー。面倒くさい案件ってコレのこと?」「…あぁ」「しかも絶対あの指名手配の件だよね」「…あぁ」「まさか…その指令ってやつに『同意しちゃった☆テヘペロ♪』みたいな?」「………あぁ」 「サイッ…テーだな!!見損なったわ!!」
 イエローはテーブルに長い袖を思い切り叩きつけ、レッドを睨みつける。 普段はお調子者でヒトをおちょくる事が多い彼だが"あの子"が危険な目に晒されるともなると語気も荒くなる。
「口を慎め、チビ助が!兄貴なりに考えがあっての事に決まってるだろ!!」「…だとしても、だろ。可哀想な天使…馬鹿のせいで変な事に巻き込まれるとは」「………れ」「…?リーダー?」「あ、兄貴…?」
 いつもなら言い返すなりなんなりとする彼だが、今回は様子が違った。 イエローとホワイトが覗き込むように、おそるおそる声をかける。
「『黙れ』っつってんだ…聴こえなかったか?」
 一瞬でピリッ…と空気が変わった。 イエローはサッとブルーの背中に隠れ、ホワイトはその場で固まっていた。
「…お前らにはあとで説明する予定だった」
 重たい口を開く。
「この俺が…自分の"嫁"を売るワケねぇだろが」
 ギリィッ…と拳を強く握りしめる。
「奴らが求めているカードはこっちが持っている」
 こんな形でしか守れない悔しさがこみ上げる。
「今は……それだけでも充分だろっ!!」
 最悪のケースは免れた。 手元に置いておけば、失うことはまずないだろう。 今はそう言い聞かせることでしか、冷静を保てなかった。  ("アイツ"をココに誘い込んだというクソガキを見つけねぇと…)
 レッドが先程まで無理やり気丈に振る舞っていたことに、ホワイトは今更気づく。こんな時にサブである自分が支えにならずしてどうすると自問するが、どうすればよいか分からなかった。とにかく何をしでかすか分からない危険な状態の彼を落ち着かせなければ。
「……兄k「んなワケないデショが〜!!こんのポンコツリーダーッ!!!!」「イ゙ ッ…デェェェェェェ!?」「兄貴ィィィィッ!?」
 ホワイトが意を決して声をかけようとした瞬間、隠れていたはずのイエローが長い袖をムチのようにしてリーダーの頭上からはたき落とす。ちなみに逆サイドからブルーが無言で拳を振り落としたから余計に衝撃が倍増されていた。
「余計に見損なったし!!」「…根本的バカ」「な、なにもそこまで言わなくても…なぁ、ホワイト?」
 ひどい言われように、唯一味方になってくれそうな弟分に同意を求めた。
「…ぶっちゃけ…今の兄貴はめっちゃダサいっす」「ダッ!?お前が一番ひでぇなっ!?」
 まさか弟分の裏切りに合うとは。 そのせいか、不思議と吹き出してしまった。
「あ゙ 〜…そんなにダサかったか、そうかそうか」「そうっすね…なんかガキが駄々こねてるみてぇでイタイタしいというか」「別に何がダサかったかなんて聞いてねぇよ。すっげぇ口撃してくんじゃん…あれか?ブラックの影響か??」「追い打ちwwwめちゃウケる〜www」
 少し、いつもの調子に戻ってきた。 (俺としたことが、コイツらに指摘されてちゃまだまだ、だよな)
「ぃよしっ!わりぃ、お前ら!おかげで目が覚めたわ、サンキューな♪」
 運営はまだ気づいていない。 こちらが有利であることに変わりはしない。 今後、どう立ち回るかによっては状況がまた変わることになる。 ならば、いっそ…―
「2人が戻ってきたら、ミーティングを再開な。そん時にちゃんと説明すっからよ」「……待て」
 ちょっと頭がスッキリしてきた矢先に不穏な雰囲気をまとう実弟、ブルーが指をポキポキ鳴らしながら、近づいてくる。
「ん?なんでまだ怒ってんの??」「…馬鹿が不甲斐ないばかりに、天使が傷ついた」「へ?」「…1発殴るだけでは不十分。天使の苦しみの分、否それ以上痛めつけないと気がすまない。俺の気が」「今!?ちょ…まっ」
 普段スロウペースな人物が急に素早い動きを見せると、相手取る方の反応が遅れるというもの。 まさかこんな無様な姿を、戻ってきた2人に見られる事になろうとは…

―Another Story:Ep5.5 Fin.―
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