SUB STORY


COLORS 番外編

COLORS Emblem


事の発端はCOLORSリーダーのひと言
「チームの紋章が欲しい」
道化ウサギとその仲間が紡ぐはちゃめちゃコメディ※全年齢向け※なんでも許せる方向け 

◆主な登場人物

◆グレイ

本編【COLORS】の主人公。

チームCOLORSの新入り。

少しずつゲームに慣れてきてはいる。


イエロー

本作の中心人物。

COLORSのムードメーカー。

自身も他人を振り回すが、今回は振り回される側。

手先が器用らしい。


レッド

本作の元凶。

たまに気まぐれなひと言でチームを困らせる。

今回も無駄にわがまま。


ブラック

COLORSのブレーン。

頭脳明晰でアイディアマン。

ただ1つ、残念な事を除けば完璧。


ホワイト

COLORSの副リーダー

今回あまり出番ない。

紋章とかどうでもいい。


◆ブルー

COLORSリーダーの弟

紋章とかどうでもいい。


【COLORS Emblem】※Ch.03~Ch.04の間に起きたほのぼのコメディ※主にグレイ視点   「だ~か~ら~!! お前の案はクッソダサいんだから、却下だって言ってんの!」「はぁ!? お前さんが『COLORSと言えば、何?』って聞いてきたから素直に答えてやったんだろが!!」
   今日も今日とて、新人のボク…グレイが所属するCOLORSの先輩がたは元気だ。
  元の世界に戻れなくなったボクはこのマルチプレイヤーチーム【COLORS】の先輩がたと共に、GAME WORLDに構えていたアジトで寝食を過ごす事になったのだ。 あてがってもらえたマイルームから談話室兼会議室に入ると、そこは既に不穏な空気となっていた。 「…いったい何が??」  ボクの先輩は5人いるのだが、普段から騒がしいという印象を誰もが感じるほどに、本当に騒がしいとつくづく思う。 だが、今回は良い意味での騒がしさではなく、悪い意味での騒がしさだった。 所謂、喧騒。 これがしっくりくるかも。 今回は黄色の道化ウサギのヘルメットに大きな赤いゴーグル、横にはねた緑の髪が特徴のボクより低身長なイエロー先輩と、真っ赤な小悪魔・デビデビくんをモチーフにしたフードを黒帽子ごと被ったCOLORSのリーダー、レッド先輩…この2人が喧嘩しているようだ。 「あぁ、グレイ。お疲れ様です」  呆気に取られているボクに優しく声をかけてくれたのは、この喧騒のなか、我関せずを貫いて優雅にコーヒーを飲んでいる…ジト目黒猫のパイロットキャップに右目を隠すかのように長い前髪が特徴的なブラック先輩だった。 ボクも慌てて「お、お疲れ様です! ブラック先輩」とあいさつを返したが、あの2人について伺っていいのか迷った。 「くすくす…あの2人が何故喧嘩しているのか、気になりますか?」「ふぇ…!? あ、ちょっとだけ」「君がここに来る2時間前から、彼らは論争してますね」「に…2時間も前から?! しかも、論争!?」「何やら意見が合わないみたいで。お互い譲る事なく、そのままループしているんです」  ブラック先輩が言うには、事の発端はレッド先輩の何気ないひと言だったという。      ―2時間前。
「チームの紋章が欲しい」  誰に対して発したわけでもなく、リーダーのただの独り言だとその場に居合わせたメンバー、イエローとブラックはスルーする事にした。 「…チームの紋章が欲しい」  ところが、まさかの同じ発言をするリーダー。 イエローとブラックはお互いに顔を見合わせるが、やはり独り言だと思って何事もなかったふりをした。 「……なぁ『紋章が欲しい』って言ってんだろが、イエロー」「は? 僕!?」  「ブラックもいるじゃん!」とイエローは抗議したが、ブラックは素知らぬ顔をしてコーヒーを嗜む。 ブラックは特に緊急性がないと判断した。むしろ関わったら面倒しかない事を知っている為、敢えてスルーしていた。 「ほら、俺たちグレイも入って6人になったろ? 可愛い後輩の為にもかっこいい紋章の1つや2つなきゃ、締まりがないじゃんよ」「無視かよ!…つぅか、その思いつき癖、いい加減にしてほしいんだけど? 僕、こう見えて暇じゃないんですぅ」 「ここ(会議室)にいる奴はたいてい暇だろが」「だ・か・ら!! ブラックもいるじゃん! なんで僕だけ指名なのさ!?」「お前、デザイン考えるの得意だろ? 本職、装飾デザイナーじゃん」「そーゆーの、他力本願っていうだよ、知ってた? あと本職だからってなんでもできると思うんじゃないよ!」「……そうか、じゃあ他の奴に頼むか。ブr」「 言っておきますが、僕はそういったものは専門外です。リーダーが適任だと仰るなら、イエローに頼むのが妥当かと」「食い気味に押し付けてきた…!!」       …そんなこんなと押し付け合った結果、結局最初に指名されたイエロー先輩がデザインを考える事になったらしい。 しかし、いきなり紋章を考えろと言われても思いつくモノも思いつかないようで、イエロー先輩の「紋章作るのはいいけど、どんなのを作りたいのさ?」から始まり、今に至る。 さりげなくレッド先輩の口からイエロー先輩の情報が漏出している事はここではツッコまないでおこう。 すると、ようやくボクが会議室に来た事に気づいたイエロー先輩は「丁度いいところに!」と言い、ボクに話を振ってきた。 「グレイちん、グレイちんからも言ってやってよ、この馬鹿に!! 超クソダサなデザインの紋章にしようとしてくるんだよ!?」
「分かってねぇな、おめぇは! COLORSと言えば、この『俺様』に決まってんだろ? だから俺をデザインに入れろって言ってんだろが」「なんでそんなに自信満々なの!? お前なんかデザインに入れたところで結局『デビデビくん』のイメージにしかならないし!おっさんを描くのも嫌だわ!」「…グレイ~、イエローのケチがひでぇ事言う〜!! 慰めてくれ~!!」  2人の勢いに呆然としていると、レッド先輩がボクの胸に飛び込んでこようとしてきた。 少し反応が遅れてしまったので、このままだとボクは後ろに倒れてしまうかも…なんて思っていた、その瞬間。  ――ヒュッ!!「ぐほぇ!!?」  一瞬、風が起こったと感じたときには既に、レッド先輩は青い眠りクマのバンダナに赤髪をおさげに結った先輩…ブルー先輩に思い切り、かかと落としを喰らっていた。 床にめり込んだのではないかと思うほどの衝撃だったが、床から煙が上がっているだけで穴は開いていないみたいだ。良かった…いや、良くない。音もなく現れたブルー先輩はまるで汚物でも見るかのような冷たい目でレッド先輩を見下ろす。 「……俺の可愛い天使に堂々とセクハラをするとは…よっぽど死にたいらしいな?」「あわわわ…ブ、ブルー先輩! ボクまだセクハラされてないので大丈夫ですよっ!」「まぁあと一歩ってとこ? 相変わらず容赦ないなぁ…あ! 良い事思いついた! ホワイトも呼んで、会議開こう♪ その方が早い、早い♪」  …この時、イエロー先輩はひどく後悔したようだ。 イエロー先輩曰く『会議なんて開くんじゃなかった』とボクに愚痴をこぼしていた程に。        ―しばらくして。 強面な白オオカミのマントを羽織ったCOLORS最恐(グレイの見解)のホワイト先輩を呼び、早速ボクらは【チームの紋章のデザイン】という議題のもと、会議を開くことにした。 「司会進行は僕、イエローがしまぁす☆ 皆、有力な意見よろ♪」「……んだよ、緊急会議っつうから来たら、しょうもねぇ事じゃねぇか」  後から来たホワイト先輩は、どうやら詳細は訊いていないようだった。 おそらくイエロー先輩、敢えて言ってないだろうな… 「…だってさ、リーダー。サブのホワイトくんはリーダーの提案を『しょうもない事』だと言いたいそうだよ?」「はっ!?」「…ホワイト、てめぇ、今日のおやつ抜きな」「……っ(ガーンッ)!!!?」  イエロー先輩はケタケタッと腹を抱えて笑っている。 イエロー先輩を怒らせると後がどうなるか分からないから気を付けないと。他の先輩たちもだけど。 するとブラック先輩が「ちょっといいですか?」と律儀に手を挙げる。 「およ? 早速ブラックくん、いい案があるのかね?」  いったいどういうキャラで進行しているのか。 先輩がたが誰もツッコまないので、ボクも気にしない事にした。 「意見と言いますか…何故、急にチームの紋章を作る事にしたのか、リーダーから理由を聞きたいのですが」「…確かに、どうでもいい理由だったら作る意味などないな…むしろ無駄」「こらこらこらぁい! ちゃんと理由はあるっつうの!」「え~? 恰好付かないからじゃなかった?」「それはそれだ。チームの紋章ってのは、所謂そのチームの『象徴』。紋章を掲げておけば他のユーザーへの牽制にもなるし、グレイを護る盾にもなる」  まさか自分の名前が出てくるとは思わなかったが、確かに納得のいく理由ではあった。 「なるほど? 敢えてCOLORSのメンバーである事を主張させて、下手に近づかないようにさせるわけですね。特にGRsなど、リーダーが牽制してくれているとは言え、彼らが僕らの事をどこまで把握しているか分かりませんし」「そうそう♪ さっすが、ブラック!俺の言いたい事はずばり、それだ!」「最初からそう言いなよね。じゃあ、本題! どういうデザインにするか!これ、結構重要だからね! 意見のある人は挙手っ!!」  納得のいく理由を聞いたからか、先ほどよりもイエロー先輩は真面目に進行している。 すると真っ先にレッド先輩が手を挙げた。 「はいっはいっ! やっぱり『俺』を入れたほうがいいと思いまっす!」「「「却下」」」「 え゙……イエローとブルーに、ホワイト!? 2人はともかく、なんでお前まで!?」「そ、そうですよ! COLORSと言えば『レッド先輩』です!」  ホワイト先輩に意見するのは、ちょっと、いや、かなり怖かったけど。 「グレイは分かってるなぁ、よ~しよしよし♪」と隣にいたレッド先輩が頭を撫でてくれてたのでちょっと嬉しい。 それにしても『おやつ抜き』にされた腹いせなのか、レッド先輩大好きマンなホワイト先輩が反論するなんて珍しかった。 「けっ、COLORSと言えば『兄貴』なのは当然だろうが。だがドジ助はなんっっっにも分かっちゃいねぇ…兄貴をデザインに加えるって事は兄貴を他の奴らに見せびらかすって事だ、兄貴は見せもんじゃねぇんだぞ!」「…さ、さすがです、ホワイト先輩っ!確かに赤の他人にレッド先輩を見せびらかすなんて…もったいないです!」「そこの似た者同士、黙ってくれる? 理由はどうあれ、リーダーをデザインに入れる気さらっさらないから」「くすくす…そもそもリーダーを描くとなると『デビデビくん』を必然的に使う事になりますから、基本無理でしょうね」「え…!? なんでですか?」「運営の著作権があるからね~…絶対紋章としては許可されないかな。似せてもバレたらアウトだろうし」「んなもん、無視すりゃいいだろ?」「ダメだって言ってんでしょ! もうそこの3人は本当に黙ってなよ!!」  どこから取り出して来たのか、ボクとホワイト先輩、レッド先輩の3人には✖印が大きくつけられたマスクを無理やり付けられてしまった。 どうやらもう発言させてくれないらしい。会議なのに。 すると、これまた珍しく今度はブルー先輩が手を挙げた。 「お、珍しいじゃん。ブルーくんの意見を聞こうじゃないか」「……グレイ」「「「…は?」」」「もしかしてグレイちんをデザインしろって事?」「…馬鹿よりはマシ。大衆の眼に入れても痛くないし、むしろ癒しになる」「そんな邪な理由で紋章作れる訳ないでしょが!! つぅか、紋章はお披露目会じゃないっての! 趣旨が違うよ、趣旨が!!」「…チッ」「舌打ち!? 僕がしたいよ! も~全然、まともな意見出ないじゃん! イエローさん、ぷんすこだよ!?」  バンッバンッとローテーブルをたたくイエロー先輩。相当いらだっていらっしゃる。 結局発言権を許されているのは、ブラック先輩だけになってしまった。もはや会議の意味などないほどに。 ブラック先輩はというと、なにやらスケッチブックを手にしてスラスラと何かを書いているようだった。書記の役割でもされていたのだろうか。他人の事言える立場ではないが、書き残すような案などないに等しかったと思われる。 「で? ブラックくんは何をしているのかね? そろそろツッコみたくないんだけど?」「…僕なりに紋章を考えていまして。『風見鶏』をご存知ですか?」「『風見鶏』~? たまに人間の街とかで見かける、屋根とかについているやつ?」「そうです。あれはただ風向きを差し示してるだけではなく、ある地域によっては『雄鶏が悪魔を追い払うため』と魔除けとしてつけている家屋もあるのだとか。風に向かって雄々しく立つ姿も、まさに僕らに近いものを感じられませんか?」  「ね?」と微笑むブラック先輩。 さすが《COLORSのブレーン》。誰よりも至極まともな意見だし、何より博識だった。 「なるほどね~、それ良いかも♪ 鶏だけじゃ味気ないから、方角にちなんで『羅針盤』とかも加えるといいかもな~☆」  どうやら、ブラック先輩のおかげでイエロー先輩の調子が戻ってきたようだ。 そして「なるほど、羅針盤ですか」とブラック先輩は言いながら、またスケッチブックに何やら書き加えているようだ。発言権を失ったホワイト先輩が横からその中身を覗いていた。 「…ブラック、何描いてんだ??」「イエロー議長の助けになればと…僕なりにデザインを考えてみたんですよ」「えぇ~! ブラック、優しい~!! それすっごく助かるやつ~☆ 見せて見せて~♪」「えぇ、不慣れではありますが…」  本当にブラック先輩はなんでもできて頼りになる御方だと、その時まではボクだけでなく誰もが思っていた。 既に覗き見したホワイト先輩は「…嘘だろ」と一人、青ざめていたが。ブラック先輩はその様子に気づいておらず、少し照れくさそうにスケッチブックをイエロー先輩に差し出した。 「どれどれ〜?」と受け取ったイエロー先輩の後ろからボクとレッド先輩、ブルー先輩も一緒にそれを見た。  そして…知りたくもない事実を知ってしまった。
風見鶏?と羅針盤?の融合体/描き手:ブラック
「「「……」」」  ボクも先輩がたも言葉を失った。 よほど自信があったのか、サインまでこさえたそのデザイン案は一瞬、なにが描かれているものか分からなかった。ボクはブラック先輩の様子を横目で見る。 ブラック先輩は「にこにこ」と眩しい笑顔で見てくる。どう反応していいか…正直、褒められるイラストじゃない事ぐらいボクでも分かる。しばらくの沈黙のあと、ようやくイエロー先輩が重い口を開いた。 「……ブラック、これ、なに? 」  「ゲテモノ? 妖怪?」とブツブツ呟いているが、イエロー先輩、そんな事言わないであげてください、否定はできないけど。 ブラック先輩は失礼な事を言っているイエロー先輩の言葉に気づいていないのか、笑顔で答えていた。 「フフ♪ 『風見鶏』と『羅針盤』の融合体です♪」  とんでもない返答にボク達はさらに、言葉が出なかった。 「ゆ…!? 怖っ!! どう見ても『鶏が串刺しされている絵』にしか見えないんですけど!?」  イエロー先輩が代表してボク達の言いづらい事を言ってしまった。 確かにモチーフの案として出された『風見鶏』と『羅針盤』らしきものは描かれているが、本当にそれらを合体させただけの絵だった。正直な話、これをチームの紋章にはしたくないし、心の底からどうにかして防ぎたい。 イエロー先輩も「正気っ!?」とブラック先輩の頭の方を疑い出した。当の本人はというと、何を言い出すんだと言わんばかりに「正気も何も…」とこれまたニッコリと微笑み、 「自信作です」  堂々とした発言に対して、先輩がたも驚きを隠せない様子だった。 「…これはさすがに、な。言葉が見つからねぇわ」「…そんなブラックも可愛い」「…俺は認めねぇ…!!」  ホワイト先輩は自分の相棒の絵心の無さに現実逃避しているようだが、分かります、ボクも見てはいけないもの見てしまった気分でいたたまれないですもん。 ブラック先輩は、ボク達の反応があまり良くないと気付いたのか、少し考え込んで「…どこかおかしいところでもあっただろうか?」とブツブツ言っている。 何てことでしょう、まさかの無自覚だったとは。 「んもぉ~~~!! いちいちツッコミしきれないっつぅの!! もういいっ! とにかくブラックの『風見鶏』と『羅針盤』は取り入れるって事で…解散っ!!」  イエロー先輩のフラストレーションが爆発してしまったようだ。 「こらこら、イエロー…お前さんの我儘でわざわざ会議開いたんだから、司会進行を放棄したらダメだろ?」「もとはと言えば、お前の我儘だよ! バーカ!」「てめぇ、ちび助っ!! 兄貴に向かってなんて口聞きやがる!」「うっさい、最初からやる気ないやつは黙ってなよ!」「…イエロー、落ち着け。この馬鹿と阿保は俺が〆ておくから」「「なんでだ!?」」「ともかく、そこの3人は出てってよね! 僕たち『可愛いトリオ』で決めちゃうから!!」「え…ボ、ボクも!?」「グレイはともかく、僕は可愛くなんかないんですけど…?」       …結局、レッド先輩、ホワイト先輩、ブルー先輩は会議室もといアジトまで締め出されてしまい、ボクとブラック先輩、イエロー先輩の3人が会議室に残った。 暫くしてイエロー先輩は「はぁ~~~~…もう疲れた~」とローテーブルに突っ伏してしまった。 ブラック先輩はまだスケッチブックと睨めっこしてらっしゃる…相当気にされていたようだ。 「…会議なんか、開くんじゃなかった……まともな意見を言ってくれたの、ブラックだけじゃん…デザインは壊滅的だけど」「(称賛してくれているのか、けなしているのか)…まぁ、あの3人を追い出したのは正解でしょうね」「ところで、何故ボクも残っているのですか?」  ブラック先輩が残るのは分かる。 確かにデザインは記憶から抹消したいほどだが、いちばん的を得ていたのは他ならずブラック先輩のみだった。そんななか、なぜかボクまで残されたのは理解できなかった。 もしや『可愛い』だけで残された…? 「ん~? まだグレイちんから案をもらってないからだけど?」「え…ホワイト先輩も出してないですよ?」「彼には不向きでしょうからね」「そゆこと~♪ で? グレイちんにとってCOLORSと言えば?」  いいのだろうか、と思いつつも仕方なく、思案してみる。  ―う~ん…レッド先輩やデビデビくんをデザインに入れれないし…かと言ってそれぞれ個性が強すぎてぐちゃぐちゃなデザインになりかねない。ボク達の個性…特徴…《COLORS》…カラー…色…『色』!! 「ボクにとってCOLORSは『色』ですっ」  そう、肝心な事を忘れていた。 ボク達は偶然にもチーム名らしくそれぞれ名前もイメージカラーと同じだった。そのまんまかもしれないが、紋章に加えるならそれぞれの色を加えたいと思った。 「『色』か~、めっちゃ盲点だったや☆ あ、じゃあ、さっきのブラックのデザイン風にすると…風見鶏の周りにそれぞれの色をつけて、と」「あ、あとレッド先輩をデザインできないのであれば、先輩が以前言っていた『人生、楽しくなきゃ損』って言葉をどうにか表現できませんか?」「くすくす…グレイは本当にリーダー思いですね♪ ではこの風見鶏を笑顔にさせればよいのではないでしょうか?」「なるほどね♪ 『色』と『笑顔』も採用ってことで…う~ん、この鶏、横向きだとつまんないな」「正面を向けたらどうですか? 『どんな逆風でも動じない』…そういう意味を込めて」「ブラック先輩…かっこいい…!!」「くすくす…グレイほどではありませんよ」「おぉ~~! なんか思った以上にいい感じのができそうかも~! 2人とも、ありがと~♪」  なにやらデザインの構図が上手くまとまったようだ。 良かった…一時期はどうなるかと思ったけど、イエロー先輩も納得されたようで異様に長い袖のまま器用に筆を走らせていた。       しばらくして、イエロー先輩は再度、他の3人も呼び、紋章のデザインを公開する事にした。 「じゃ~ん、これが僕ら《COLORS》の紋章デザインでぇす☆」
COLORS Emblem/描き手:イエロー
「「「おぉ~~~~!!」」」  イエロー先輩は会議室のホワイトボードいっぱいに完成された紋章のデザインを掲げ、ボクも含め先輩たちも感嘆の声をあげた。 よくあの恐ろしいデザインからここまで修復されたものだ。 「ここまで考えるの、ほんとに大変だったんだからね! 感謝してよね、特にリーダー!」  「ふんだっ」と両腕を腰にあて、ドヤ顔を決めている。 そうは言うが、デザインを考えている時のイエロー先輩はゲームをプレイされている時よりも生き生きとされていたように感じた。本当にそういうことを考えるのがお好きなんだとこっちにも伝わるほどに。 「…この風見鶏、笑っているな」「あ~、それはグレイちんが提案したんだよ? リーダーをデザインに入れる事できないなら、せめてリーダーの『人生楽しくなきゃ損』が伝わるやつを入れろって、ねぇ~グレイちん♪」「はいっ! やっぱりCOLORSと言えば『レッド先輩』ですから♪」「~~~っ!! グレイ~!! お前ってやつは…! ほんと可愛いや、ぐはぁっ!?」「…調子に乗るな、馬鹿」  相変わらず、ブルー先輩はレッド先輩に容赦がない。 でもブルー先輩もこのデザインに納得してくださったみたいで「…よく考えたな、大変だったろ」と頭を撫でて労ってくださった。 「…正面に向けたのは、お前の提案か? ブラック」「おや、よく分かりましたね。『どんな逆風にも動じない』…誰かさんたちらしいと思いません?」「…ばぁか、そりゃお前も含まれてんだろが」  「フフフ♪ どうでしょうね」とブラック先輩もホワイト先輩も気に入ってくださったようだ。   こうして、波乱万丈な会議を経て、無事ボク達《COLORS》の紋章が誕生したのだった。     「あ、そうだ☆ せっかく作ったんだもんねぇ…良い事、思いついちゃった☆」   後に、COLORSのアジト入口周辺にボクらのシンボルマークが大きく描かれた。 そのせいかはわからないが、より一層、近づくユーザーはいなくなった。     
COLORS Emblem Art/絵:KURONEKO.Projects
―Fin.―
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