SUB STORY
SUB STORY
【COLORS】本編・番外編リメイク!(随時更新)
Episode.04 若獅子の憤怒
「お待ちくださいませ、レオの若様」 さらなるお祭りムードもつかの間、ザンザ達の近くに居座っていた女性陣の一人が立ち上がり、ザンザとハクアの前に出てきた。その者は二十前半ぐらいにみえ、スラっと背が高く長い黒髪をした女性だった。その女性はハクアを一瞥し、すぐにザンザに向き直った。 ( 綺麗な女性(ヒト)…この女性は確か、先ほどの…?) ハクアがビャクとここに来た際に冷たい視線を送った人物だった。 ザンザは訝しげな表情をし、目の前の女性に向かって口を開く。 「ん~? 何か用か? パンサー族の」「パンサー族族長が娘、ミラ=パンサーですわ。若様」「あ~…(あ、そんな名前だっけ?)…で? ミラ嬢はオレに何を『待て』と?」 盛り上がっていた場は一気に静まった。 このミラ=パンサーは性格も少し難があった。こういった宴会でもよく我が物顔でザンザの傍らに居座わり、寵愛を受けようとアピールしているお嬢で有名だった。 パンサー族自体はあまり表立って行動する事はなく、慎重な姿勢を貫く印象を持った一族だったはずとその場にいる者たちの誰もが彼女の態度を怪訝に思っていた。 当のザンザは全く相手にしていなかったし、名前も覚えてなかった。ザンザにとってはその程度のものだという事だ。そもそも既に想い人がいた時点で相手などするはずもないのだが。 「いささか、理解しがたいですわ。確かに、そちらのハクア姫は《奇跡の姫》と謳われ、誰もが認める麗人、リュウ様の血を受け継いでいらっしゃるようですが…どうも腑に落ちませんの」 ミラ嬢は手に持っていた扇子を軽く口元ではためかせ、ハクアとの関係に言及しだした。 周囲は一瞬で凍り付いた。どよめきも起こり、ザンザの怒りに触れていないか不安が募る。そんな周囲の反応などお構いなしに、ミラ嬢は続ける。 「聞けば、ハクア姫は御年十六になられたばかり。ですが、ティガー族の娘だとしても…まだまだ幼子のように思えますわ」 周囲はより一層、悪寒が走る。 チムニーやビャクも表情が一変し、ミラ嬢を静かに睨みつける。ハクアは、周囲の目線や彼女の発言にただ黙って聞くしかなかった。 (ミラ嬢の言う通り…私など、他の方々のように立派なモノがあるわけではないものね…) 「……何が言いたい?」「先ほどから、若様のおひざ元で小さく縮こまってばかり…私には到底未来の獣王の妻などには見えませんわ。ここへ来たときなど、兄君のビャク様の後ろについているだけ。どれだけ身内に甘やかされているのやら…私どもには挨拶もないなんて、礼節がまったくなっていないんではなくて? そのようなお子様な姫君が未来の獣王の妻など務まりますでしょうか?(くすくす…)」 ミラ嬢とともに居座っていた他の女性陣もくすくすと嘲笑しだした。 チムニーは「黙って聞いてれば好き勝手言いやがってぇ…」と親指の爪を噛むほど不快感を顕わにした。ビャクもこめかみから血管が浮き出し、今にも殴りにかかる様子だった。