MAIN STORY
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【COLORS】本編・番外編リメイク!(随時更新)
Episode.02
そこには今まで見たことのない光景が広がっていた。 少し薄暗く、壁や天井、床にも、ところどころに電子回路が張り巡らされた場所だった。まるで夜の街の輝くネオンのように、その電子回路は光っていた。 しばらく歩き、キョロキョロと周りを見渡す。 「ここが……GAME WORLD」 見渡した先には、おそらく自分と同じ《ユーザー》がその街を行き来していた。だがその中には、見たことない人種や衣装を着た者達がいた。彼らの容姿に魅入っていると、どうやらほとんどのユーザーが同じ目的地に向かっているようだ。 「もしかしたら、転送装置があるのかも!」 ヒトの流れに従い、辿り着いた場所は《DANCE GAMES CORNER》。 そこはリズミカルな音楽が大音量でエリア全体に流れており、何やら歓声も負けないぐらい響き渡っていた。耳を塞ぎつつも頭上にある看板を見やると、そこにはヘッドフォンを身につけたネコらしきキャラも描かれていた。 そして看板の奥からさらに歓声が沸き起こり、リングのような台の上に二人のユーザーが向かいあって睨み合っていた。大きな映像には看板にも描かれていたネコのようなマスコットが映し出され、軽快なリズムに合わせて何やらアナウンスをしだした。 『HEY YO♪ レディース、ア〜ンド、ジェントルメ〜ン、チェケラッ♪ ノリ遅れんにゃよ、HEY♪ 今回の《DANCE BATTLE》の対戦カード♪ これはもう盛り上がるにゃ! 唸るぜ大地、決めるぜファンクッ! 赤コーナー、ファンキーー!!』 ネコ型マスコットがユーザーを紹介すると、ファンキーという男性ユーザーはリング上で大きく両腕を振り上げ、観客(ギャラリー)の歓声に応えるかのようにアピールをしていた。 いかにもいかつい、ヒョウ柄のベストを羽織ったファンキーはこれからの対戦に向けてストレッチをしだした。その間にもまたもや、ネコ型マスコットからのアナウンスが会場に響く。 『HEY HEY HEY〜♪瞬き禁止! 吠える白狼(ハクロウ)っ!! 青コーナー、ホワイトーーー!!』 すると、先ほどの歓声とは比べ物にならないほどの大歓声が沸き上がった。 そのユーザーは、強面の凶悪な白いオオカミ…の被り物付きのマントを着た姿。左頬には白のテープをつけていた。彼がマントの下のコートを脱ぎ棄てると、黒のランニングシャツ姿となった。さらに肩をコキッコキッと鳴らすだけでも男女問わず黄色い歓声を上げた。 観客をかきわけ、なんとかリングの近くに辿り着いた。すると、これから何やら対戦でもするのか、ファンキーと名乗るユーザーはホワイトに向かって指を差し、大声を張り上げた。 「今日こそお前を倒してぇ、マスタークラスから引きずり落としてやるぜぃ! ホワイトオォゥ!!!!」 それに対し、ホワイトはニヤァッと余裕を現すかのような笑みを浮かべ、おもむろに中指を立てた。 「… やれるもんならやってみやがれぇ…この●●(ピー)野郎!!」 瞬く間にエリア全体のボルテージが上がっていった。 近くで見ていただけに、ものすごい下品で恐ろしい言葉が聞こえてしまった。 「…一瞬、兄さまかと思ったけど違うや。そもそも兄さまがこんなところにいるはずがないものっ」 背恰好は確かに兄にそっくりだったが、そもそも兄がダンスを嗜むところなど見たことも聞いたこともなかった。気を取り直して、他の観客に装置について訊ねる事にした。 「あ、あの…すみません、ちょっとお訊ねしたい事が…」「キャーーッ♡ ホワイト様、素敵~♡♡」「うお〜〜〜! 早くいつものキメッキメのダンス見せてくれーっ!!」「白狼様~♡ こっち向いて~♡ かっこいいー!!」「あ、あの! もしもーし…!!」 どれだけ声を張り上げても、観客は目の前の対戦の事で頭がいっぱいなのか、誰も気づかない。さらにこのエリアに響き渡る大音量の音楽が張り上げる声をかき消してしまっていた。 「むぅ…兄さまの方が100倍素敵でかっこいいですもん! ふんっ!!」 頬を膨らませて、ぷいっと顔を背けてその場を離れることにした。 (あ? あれは……まさか、な) 見覚えのある後ろ姿をホワイトは横目でとらえていた。 だがまさか『あいつ』がいるわけがない、自分の気のせいだとし、目の前のダンスゲームに集中する事にした。