MAIN STORY

Chapter .02

【We are "COLORS"!!】

近づく者は"勇者"か?"愚者"か?彼らの『色』に染まる頃手遅れとなるだろう

Episode.03

   あれからどのくらい経ってしまったのか。 息を切らして、その場に座り込んだ。 (こ、怖かった…でも、どうしよう)
 あまりの怖さに耐えきれず、無我夢中で走ってきたが、肝心の装置に関しては結局何もわからずじまいだ。 だいぶ疲労がたまってきてる気がする。これは空腹感からだろうか、確かにこの世界に来てから何も食べていない。 「な、何か食べ物は……ふぇ? ここは…」  周りを見渡すと、そこは今まで見てきたエリアよりも薄暗く、1つ1つの台ごとに囲いがされており、簡易的な個室のようなものがずらっと並んでいた。さらに銃器らしきものも設置されているものも見えた。 看板には《SHOOTING GAMES CORNER》と書かれている。 『ここはシューティングゲームコーナー。設置された銃器を使って、画面に表示されるターゲットを狙い撃つのが基本ダ。初心者でも銃器の扱いに慣れればポイントを稼ぎやすいゾ!』「…このゾンビバスターって」『オッ!それは敵(エネミー)のアンデッド型ゾンビがうじゃうじゃ出てくるクレイジーなゲームだゼ♪ やってくカ? 初心者にもおすすめだゾ!』「絶対、やりたくない……ヒッ!」  ゲーム自体は初心者でも挑戦しやすいらしい。 しかし、中にはゾンビなどクリーチャーがターゲットの種類もあるらしい。恐怖耐性のないユーザーはあまり近づかなさそうなエリアだった。 さらにエリアを歩いていると、最も苦手な《異形種:ヘドロスライムやゾンビなど》の姿をしたユーザーとぶつかりそうになってしまった。 「ひ、ひぇ…」   恐ろしいものを目の当たりにしてゆっくりと後ずさる。 すると、何かにぶつかってしまった。 「ああ~~~っ!? くそっ…あともうちょっとでゲームクリアだってんのに…!! 誰だっ邪魔しやがったのは!!?」「ひっ…あぅ…ご、ごめんなさいっ!」  叫びそうになったのを堪え、なんとか謝罪をした。 シューティングゲームをプレイしていた男性ユーザーにぶつかってしまったらしい。 この男性ユーザーも異形種のアバターで、おそらく「フランケンシュタイン」を模したアバター姿だった。頭や首に大きなネジが食い込んでおり、ところどころに縫い目がついていた。 本当は逃げ出したかったが、脚がすくんで逃げるタイミングを見失ってしまった。 さらに、彼の相棒だろうか。 フランケンシュタイン男の傍らでゲームを見ていた男性ユーザーは細型の異形種らしい。ガスマスクで顔全体を隠していたが、露出している皮膚にはいくつもの目玉がついていた。彼の場合「百目鬼」という鬼人族(オーガ)を模したアバターの姿のようだ。 フランケンシュタイン男はゲームの最中にぶつかってきた自分のせいでゲームをクリアできなかったと怒り狂っているようで、謝罪にも聞く耳を持たない。 「ごめんなさいだぁ? 謝って済むもんじゃねぇんだよっ! どう落とし前つけてくれんだ!? あぁん??」「え…そ、そんな事言われても…」「そうだ、ゴートンさん! ここはひとつ、ゲームでポイント賭けた勝負するのはどうっすか?」  嫌な予感がする。 まさかと思うが、この異形コンビはとんでもない事を言い出しそうな雰囲気だった。 「ああ〜ん?…ビートの言う通りだな。ここは《GAME WORLD》。そりゃあ、名案だ!どれどれ〜、チビっ子のポイントは~?」「ま、待ってください...! 私、この世界には来たばかりで…! ゲームをしろと言われても、やり方が分かりませんっ」  必死に抗議する。 自分の不注意とはいえ、彼らと出会ってしまったことが運の尽きなのか。 二人は私の抗議など無視し、データが表示された半透明なモニターをスクロールしだした。すると、何かを見つけたらしい。二人はニヤッと悪い笑みを浮かべた。先に口を開いたのはフランケンシュタイン男、ゴートンだった。 「やい、チビっ子。心優し~このゴートン様が、お前にチャンスを与えてやる」「チャ…チャンス?」「さっきお前に邪魔されたゲーム…このシューティングゲーム《バルーン・シューティング》で勝負しようや」「でも、やり方が」「なあに、やり方もルールも簡単。このトリガーでヒットポイントを稼いだほうの勝ち。もしお前がオレ様に万が一でも、勝てたら…今回の事はチャラにしてやるよ。ただし、もし負けた場合、お前の持っているポイントはぜ~んぶ、いただくぜ?」「ポイントが無くなったら、この《GAME WORLD》では奴隷並の扱いをされるって噂だぜ〜?キヒヒヒッ」「そ…そんなっ!」   確かにルールは簡単だった。 しかし、私はゲーム自体初心者でこの世界に来たばかりだ。この勝負は明らかに結果が見えている。 (どう考えても、私に勝ち目なんて…)  ―その願い、叶えてやろうか?    夢の中で耳にした少年の言葉をふと、思い出した。 (私の…願い……まだ、叶えて、ない)  そうだ、私は私自身を変えたかった。 弱いままの役立たずな自分を変えたくて。  私は意を決して、勝負に挑もうと顔をあげた、その瞬間。  「ちょっといいですか?」   どこからか、凛とした声がした。 声のほうを見ると、暗がりから黄緑色に発光しているジト目と髭が現れた。一同がギョッと驚くと同時に、その声の主はさらに前へ出てきて姿を現した。 その姿は黒猫のパイロット帽に首には大きなヘッドフォン。黄緑の発光色のラインが入った黒服にズボン。右目は長い前髪で隠し、左目は紫の瞳がうっすらと見える。顔も中性的で独特な雰囲気を持っていたユーザーだった。 「だ、誰だ、おめぇ!!」「オレ様に口出しする気か、ゴルァッ!!!!」「貴方がたにわざわざ名乗るほどの者ではありませんが。一応、お答えしますと…僕は『ブラック』といいます」  ブラックと名乗ったユーザーは荒ぶる二人に対して怖気づくことなく、穏やかに丁寧に答えた。 そして私の前へ出て、まるでかばうかのようにコンビの前に立ちはばかった。 「貴方がたのやり方は品に欠ける…彼女が新規ユーザーだからといって、碌に説明もせずに全ポイントを使わせ、いきなり勝負を申し込むなど…素人ユーザーのよくやる手口ですね」「な、なにぃ!!?」  ブラックは笑顔を崩さずに、二人の所業に言及した。 顔は優しく笑っているが、発言の内容には所々トゲを感じた。 「ブラッドだかなんだか知らねぇが、オレらの問題に口挟むんじゃねぇ!!」「(ヒソッ)ゴートンさん、『ブラック』っすよ」
 (さて、どうしたものか)  横目でチラッと彼女を見ると、今にも泣きそうで手も震えていた。 よほど怖い思いをしていたのだろう。 僕はある提案をもちかける事にした。 「事情がなんにせよ、こんな勝負の勝敗が分かり切ったものなど、僕からしてみたらフェアでもなんでもない。ただの悪質な《WORLD OUT》を仕向けるユーザー・キラーです」  とにもかくにも、荒療治になるが、手段を選んでいる時間はない。 「これも何かの縁……どうですか? 『僕と彼女』VS『貴方がた2名』のダブルスゲームをしませんか?もちろん、各々今所持しているポイントを『全て』使いましょう。それなら貴方がたも文句はないでしょう?」  相手が確実に弱者だと分かっている上で勝負を提案したとなると悪質だと言われても致し方のない事。 だが、彼女とのトラブルの場合、ゲームで帳尻を合わせるという彼らの言い分もこの世界ではよくある事だ。 ならば、お互いが文句のないように《ダブルスゲーム》、2対2のゲーム体制に切り替えればいい。 いまだに状況をうまく理解できない彼女に「貴女もそれでいいですね?」と優しく確認する。 彼女はためらっているようだ。 おそらく警戒されているのかもしれない。 相手が無理難題の勝負をしかけてきたにせよ、見ず知らずの自分を助けてくれるのか。 何か裏があるのではないかと、思われても無理はない。
 「大丈夫、僕を信じてください」
 不安を抱いていることに気づいたのか、ブラックは優しく微笑んだ。 まるで彼はすでにこの勝負の行く末を分かっているようだった。 不思議と、不安はもう感じなくなっていた。 (…きっと、この人なら大丈夫。)  そう、信じて。 私は強くうなずいた。 「上等だ、どこのどいつか知らねぇが! その勝負、受けてやらぁ!! 後で泣き言ほざいても知らねぇからなっ!!」「で、でもよぉ、こいつ…どっかで見たことあるような…?」「では、決まりですね」  ビートが何か言いかけていたが、ブラックはそれを無視してゲームの設定をし始めた。 彼が操作を終えると、ゲームモニターはシングルモードからダブルスモードに表示が切り替わった。 「…少し、再起動するのに時間がかかります。その間、互いのチームで作戦会議をしましょうか」「ふんっ! どうせ無駄だろうが、オレ様は寛大だからな、いいだろう」  彼のおかげで不安は解消されたはずだが、いざ挑戦となると緊張のせいか、手が震えていた。 「大丈夫ですか?」  ブラックは膝をつき、顔色を伺うように覗き込んだ。 涙をこらえ、「はいっ…!」と精一杯答えた。とにかく足手まといにならないようにしなければならない。 「あ、あの…作戦って具体的に私はどうしたら…?えっと…この世界に来てから一度もゲームというものに触れていなくて…その」「ご心配なく。ルールの簡単な説明をしましょう。本来なら、ルーキーかつ初プレイのユーザーにはお助けマスコットのエンジュちゃんがチュートリアルでサポートしてくれるんですが…今回は経験者の僕とタッグを組む事により、チュートリアルがありませんので」  ニコッと微笑むブラック。 彼の説明によると以下の通りになる。

《The Balloon Shooting Game》


ルール

 画面上に出現する風船を制限時間内に撃つ。

 ヒットポイントを多く獲得したチームの勝利。


ヒットポイントの内訳

 ※風船の色で獲得ポイントが異なる。

 ・赤:1000P(×50個)

 ・青:500P(×60個)

 ・黄:200P(×50個)

 ・白:100P(×100個)  

 総獲得ポイント:100,000P

 …以上がこのゲームのルール。 しかし、ブラックはこれを踏まえて敢えて「これといった作戦はない」と告げた。 「作戦がない、というのは語弊があるかもしれません。作戦というよりは助言になりますが、貴女はこの4色の風船のうち『1色』に狙いを定めてヒットを稼いでいただければ大丈夫です。どの色にするか…貴女の好きな色で構いません」「私の…好きな色」  彼はどの色でも構わないと言ったが、おそらくこの選択次第では彼への負担だけでなく、このゲームの勝敗にも大きく関わってくるだろう。 デビデビくんにどうするべきか聞こうとしたが、いつの間にか彼の姿がいなくなっていた。 (あれほどゲームを勧めてきたくせに…肝心な時にいない!?)  メニュー画面を開くと、何故か開放されたはずのアイコンは再びロックがかけられていた。おそらくだが、先程彼が言っていた「チュートリアルのサポートがない」事に関与しているのだろう。 仕方なく思考を巡らせる。そして担当する風船は― 「―『白』を、狙います」「ふむ…理由を聞いても?」「け、経験者であるブラックさんがポイントの高い風船を狙う方がたくさん稼げるかな〜と…そしたら、微力ですが…私は数の多い『白色』が良いかなって…」  自分のこの考え方が正しいのかは分からなかった。 言ってしまえばこれは経験者である彼の実力に賭けているようなものだ。 さらに『数撃ちゃ当たる』なんて浅はかな考え方だと思われるかもしれない。 おそるおそる彼の顔色を伺うと、ブラックは笑みを浮かべていた。 「フフッ…了解です♪」  そして、時間の許す限り《トリガー:設置されている銃器》の扱い方の最低限の説明を受け、いよいよ人生初のゲーム対戦に挑戦する。 泣いても笑っても、負ければここで終了… でも、不思議と負けるイメージは湧いてこなかった。 互いのチームがトリガーを装備し、『Ready』と表示されたモニターの前に立った。 私たち2人は互いに目が合うと、同時にうなずく。   私は『白色』の風船を撃てばいい… あとはブラックさんがなんとかしてくれる。    そう、心から信じて。  『『Ready・・・GO!!!!』』  

 ゲーム開始から3分経過。 先に出てきたのは、チンピラの異形アバターコンビ、ゴートン・ビートペアだった。 意気揚々と自分たちの結果を確認した。 モニターには―

《ゴートン&ビート ペア 獲得ポイント:71,500P》

「ふんっ!まぁまぁの出来じゃねぇか、なぁ?ビート」
 相手チームにはあの超初心者がいる。 どう考えても、ほぼ2対1の状態に近い中、一人でこの3分以内に70,000ポイント以上に稼ぐなどありえない…はずだった。ビートは自分の目を疑った。 そんなはずはないのに、と。
「あ…あ…そんなっ」「ビート?どうした??」
 相棒の様子がおかしい事に気づいたゴートンは、相手の結果を見ると、信じられない数値が表示されていた。
「ば、馬鹿な…!!?ありえねぇっ!!」
 《ブラック・ハクア ペア 獲得ポイント:92,500P》

 ゲームの勝者はブラックとハクアのチームだった。 なぜ、このような結果になったのか。 相手はゲーム初心者と組んでいたはず。 こんな結果になるはずがない。 二人は、この結果を到底信じられなかった。 何かの間違いではないか、と。 二人が口をあんぐりとさせている最中、他の二人も個室から出てきた。
「す、すみません…まだ、なんかクラクラ、しますぅ…」「フフッ…トレーニング無しのシューティングでしたから、感覚が少し乱れてしまったのでしょう。しばらくしたら、落ち着きますよ」
 やっと終わった。 無我夢中で白色の風船を打ちまくってみたが、あまり手応えを感じられなかった。 それ以前にこれが画面酔いというものだろうか、それとも緊張からの解放で気が抜けてしまったのか。すぐに立ち上がれなかった。 ブラックの介抱により、なんとか落ち着きを取り戻して外に出る。 まだ少し残る立ち眩みでフラフラしていると、フランケンシュタイン男のゴートンがズカズカと勢いよく近づいてきた。 「おいっ!この得点はなんだっ!こんなのありえねぇだろうが!!何をしやがった!?」「ひぇっ…特に何も」「あぁん? そんなわけないだろうがっ!」「いえ、彼女の言う通り、これといった特別な事はしていませんよ?彼女はただ『白風船のみ』ヒットを稼いでくれたので…おかげで僕は白風船以外に集中してポイントを稼げた。ただそれだけです♪」「……でも、結局25個しか当てれませんでしたけどね…うぅ」「な、なんだと!?」 (もし、もしも、本当に女のほうが白風船のみに的を絞ったとしたら…)  内訳はハクアが2,500ポイント、それに対してブラックは一人で90,000ポイント獲得したことになる。さらに90,000という事は、白風船以外の『風船全て』をヒットさせた事になる。並大抵のユーザーでは成しえない、神業をもつ相当な実力者だということだ。 ブラックからしたら、彼女は確かにどこまでポイントを稼げるか分からないユーザーのはずだった。さらに初心者となると、ただがむしゃらにポイントを稼げばいいという訳にはいかない。だが、それは彼にとっては大したハンデにもならなかったようだ。 しばらくすると、それぞれの目の前にモニターが表示された。
 【ポイント:15,500P】ガ付与サレマシタ―
「これは?」「このゲームで得た報酬です。各自の所持ポイントを全てゲームに費やした分、勝者には敗者の分まで全て付与されるんです」  ブラックは簡単に説明した。 本来初心者向けのゲームは100Pから利用可能。 しかし今回は『ポイント全賭けマッチ』という特殊なバトル形式となっていた。 さらにダブルスの即席チームでの対戦の場合、相手チームの賭けたビットポイントの50%がボーナスポイントという形で勝利したチームが報酬を得られる。 「つまり、私たちがゲームに勝ったからその報酬がもらえたって事ですか?」「そのとおり。ちなみに敗者の彼らは全てのポイントをビットしていた為、現在彼らの所持ポイントはゼロになっている事でしょうね」  ブラックの言う通りだった。 彼らの目の前に表示されたモニターには赤字で『ポイント:0』と映し出されていた。すると、ゴートンはブラックの足元まで土下座する勢いでやってきた。しかも今にも泣きそうな、必死の形相で。 「ま、待ってくれ! さっきの事は全部許す、許すからそれだけは…ワ、《WORLD OUT》だけは…!!」  なんとも憐れな姿か。 ブラックは「フフ、ハハハッ」と腹を抱えて笑い、必死にすがるゴートン達に無慈悲な微笑みを見せた。 「ふふっ…あなたも先ほど言っていたではありませんか。『後で泣き言ほざいても知らない』と…貴方がたがこれからどうなろうと僕たちにはまったく関係ありませんよ?」
 すると、ビートはブラックを見て「あーっ!」と指差して、さらに顔を青ざめた。
「お、思い出したっ! こ、こいつ、あの《COLORSのブレーン》ブラック…!!確かランクが《シューティング・マスター》じゃ…」
 ブラックは「やれやれ…」とため息をつき、愚かな二人組を哀れんでいた。 しかし突然、何かの気配を察知したのだろうか。 私の手を取り「…っ! まずいっ、こっちへ!!」と言うや否や、走り出した。
 突然の行動に戸惑いを隠せないでいると、キュイイィィ…と何かの機械音が後ろから聞こえた気がした。 後ろを振り向いた先には1mほどの小型のロボットのようなものが見えた。さらにその後ろには二人の少女の姿もあった。 彼女たちは双子なのだろうか、銀髪に白のロリータドレスと金髪に黒のロリータドレス以外は全く同じに見えた。彼女らは周辺をキョロキョロと見渡し、何かを探しているようだった。 「…右方向『ターゲット』無し…コルディ、そっちは?」「…左方向、同じく…オーナーに報告を、シルビィ」  銀髪の少女、シルビィと金髪の少女、コルディ。 怪しげな雰囲気をもつ彼女らは、目の前にいる二人組のユーザーを見つめる。  「「…でも、その前に」」   双子の両脇から機械音を響かせ前に出てきた2体の小型ロボット。 ドーム状のロボットの頭から放射口のようなものが出てきた。彼女らも同時にユーザー二人組を指し示し、ロボットに『指示』を出す。
「ユーザー2名」「所持ポイントゼロを確認…」
「「《WORLD OUT》執行」」
 ロボット達は一斉に放射口を目標に向け、「キュオォォォ…」と音を響かせつつ、青い光を集めだした。
「じょ…冗談じゃねぇ!! ここまで来て、消されてたまるかってんだっ!!」「ひ、ひぃぃぃっ!! ゴ…ゴートンさん、待ってくだせぇ!!」
 ゴートンとビートは走り出したが、時すでに遅し。 小型ロボットが放った青い光線は、逃げ出した二人のユーザーに命中した。 光線が2人の身体を貫いたかと思えば、彼らの身体全体に電子回路が走るように光が流れ、みるみるうちに足元から身体が分散されていく。
「た…たすけっ」
 ビートに続き、ゴートンも『消滅』した。 小型ロボットは放射口を収納し『《WORLD OUT》執行完了』と電子音を鳴らしながら報告した。跡形もなく彼らは、消された。 そして、双子は表情を変えずにロボットを連れて、その場を後にしたのだった。    BACK  ¦  NEXT