MAIN STORY

  Chapter.03

【The Game Reapers】

 "彼ら"は恐れられていた

 実力主義のこの世界で

 その存在は『脅威』そのもの

Another Story :Episode 6.5




 ドクン…ドクン…
 まるで生き物の脈動音のように鳴り響く騒音。 この《GAME WORLD》の中枢区に位置する都市《コアビート・シティ》の連なる配管を辿ると行き着く場所に、独り佇む黒フードの男がいた。彼は壁一面に広がるガラス越しに、おびただしい数の埋め尽くされた巨大なカプセルを静観していた。
「美しい光景だろう?」
 黒フードの男の背後から別の男の声がした。 この世界の創設者にして総支配人、ヒューマーだ。 彼はあの怪しい仮面をつけたまま、かつての《同志》の横に並び、意気揚々と語る。
「ようやく実現できるのだよ。《私達の理想の世界》が!…だが、まだ足りない。《世界の理想郷》そのものを創り上げるにはさらなるエネルギーが必要なのだ」
 今まで静観していた黒フードの男が重い口を開く。
「……その《結果》がコレか?随分とお粗末な事をしているな」
 ヒューマーとは打って変わって淡々と、言葉を吐き捨てる。
「『何かを得る為には、何かを犠牲にしなければならない』…かつて君が私に告げた言葉だ。私はそれを実行したまでさ、そうだろう?」
 フードの男の表情は分からない。 全てを覆い隠すかのようなその出立ちのせいで、彼が今、何を感じ、考えているのかは誰にも分からない。 しかし、一瞬だけどこかうら寂しい雰囲気を漂わせた。

「………変わっちまったな、アンタは
「何か言ったかね?」
 黒フードの男はくるりと後ろを振り向き、その場所を後にしようとした。 そんな彼のことなど、おかまいなしに話を続ける。
「私は君に期待しているのだよ、"Z"。君ならば"死神"にふさわしい力を誰よりも魅せてくれる、とね」
 Zは立ち止まる。
「……勝手にしてくれ。俺は、俺なりの"やり方"でやらせてもらう……それだけだ」
 再びZは歩き出す。  彼の後ろ姿を見送ったヒューマーは、再び《世界の心臓》を見つめ、目を細めた。 未だに行方を掴めない、エネルギーの供給に大きく影響する存在。 とある空のカプセルに手を伸ばし、何かを捕まえるかのようにギュッと拳を握る。

(…必ず、手に入れてみせよう。どんな手を、使ってでも…)
 

Another Story:Ep6.5 Fin.―
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