6月1日に全国社会福祉協議会(以下、全社協)が示した「新型コロナウイルス感染が懸念される状況における災害ボランティアセンターの設置・運営等について~全社協VCの考え方~」を受け、大阪府社協としても、コロナの状況下での災害支援の課題について、府内の市町村社協と具体的に検討していくため、7月16日付で『新型コロナウイルス状況下における大阪府内の災害支援のあり方について』(以下、『あり方』)を作成しました。
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●『あり方』作成にいたった経緯
大阪府内の市町村社協では「外出自粛高齢者・障がい者等見守り支援事業」に取り組んでいたので、「災害支援」に関しても、全社協の動きを踏まえて、「コロナ×災害支援」の大阪府内版を示す必要性を感じていました。
(コロナの状況下でも社協ができる地域福祉活動、詳細は、FEEL Do特設サイト0722掲載「コロナ禍の地域福祉活動×ICT化」参照)当初、『あり方』に関する検討委員会の設置も選択肢にありましたが、コロナの影響で人が集まりにくいこと等から委員会は設置せずに内部で検討を進めました。いつ大阪で災害が起こるかわからない中で、まずは、大阪府社協の役割として、スピード感をもってメッセージを出すことを優先しました。こうした判断ができたのは、これまで培ってきた大阪府社協と市町村社協のつながりが基盤にあること、平成30年度に大阪北部地震、台風21号災害を経験したことで、大阪府社協内でも災害の意識が向上し、内部での合意が取りやすかったことが大きいと感じています。
●『あり方』の目的
この『あり方』の位置づけは、「コロナの状況下で社協だからこそできる災害支援は何か」を検討するための「たたき台」です。実際の災害対応は、市町村社協ごとに異なります。そうした検討を進めるためのきっかけや課題提起になればと考えています。
例えば、災害ボランティアセンター(以下、災害VC)の運営に関して、どういう方針をもって、感染防止対策をとり、誰がどういう役割を担うのか。そこにはたくさんのボランティアや関係団体の皆さんの協力が必要になりますが、どういう形ならつながることができるのか。それぞれの社協職員が少しでも具体的な支援の動きのイメージを持てることが『あり方』を示すことの意義(目的)になると思うので、是非、『あり方』を活用して、一緒に考えていきたいです。
災害支援は、被災地の状況や要因、環境によって「できること」、「できないこと」が変化します。コロナであっても、大阪府社協の災害に向き合う基本的な考え方はこれまでと変わりません。地元の社協の判断を尊重し、被災者に寄り添い、社協と一緒になって取り組んでいただける団体のお力をお借りして、状況ごとに判断していくことを大切にしています。
●『あり方』作成のプロセス
大阪府社協では、現在、府社協職員18名を災害ボランティアセンター運営支援者(以下:運営支援者)として養成しています。その中で今回は地域福祉部の運営支援者等(9名、うち運営支援者は7名)を中心に検討の場を設け、意見をまとめました。
(※市町村社協連合会と府社協の協定に基づき、独自に運営支援者を養成。アドバイザー:コミュニティ・エンパワメント・オフィスFEEL Do 代表 桒原英文氏、市町村社協職員を含めると約60名)災害支援のあり方は一通りではなく、組みあわせることでより効果的に機能することもあるので、大阪の既存のネットワーク(社協や関係団体)や、今、支援に求められていること(感染防止対策など)を踏まえながら、「大阪の今の仕組みなら、どういう支援が考えられるか」について、支援の可能性を示すことを心掛けました。
一方である程度まとまった段階で内容が市町村社協の実態と乖離していないか、普段からつながりのある市町村社協の運営支援者や災害支援経験者に確認してもらい、できるだけ市町村社協の災害担当者がイメージしやすいように配慮しました。
●苦労した点、参考にしてもらいたい点
コロナの状況下における災害支援のポイントは、これまでの災害支援の考え方をベースとしたうえで、①行政との協議、②社協の柔軟性、③感染防止対策の3点に集約しました。
今年度の災害VCの設置・運営の判断やボランティアの募集範囲の状況からも分かるように、今回のコロナを機に、「社協と行政の連携」の必要性がより一層強調されたと認識しています。常にコロナの感染リスクが伴う中、行政との協議を重ね、一緒に対応していかなければ、災害VCもうまく機能しません。
一方で新しい災害支援の動きの中にも普段の活動に活かせるヒント(オンライン会議やGoogleフォームの活用など)がたくさんあります。今ある既存の取り組みに「ちょい足し」するような柔軟な発想を持ち、「できることを、できるときから、できるだけ」行うように努めてほしいと思います。平時からの災害に対する意識が少し変わるだけでも、今回、『あり方』を示したことに意味づけがされます。
また、大阪府内の被災地以外の社協やNPO等の中間支援組織を仲介したボランティアワゴンなどの取り組みは、今回課題とされた「ボランティアの募集範囲」、「感染防止対策」、「中間支援組織等ネットワークの役割」を考えるうえで、ヒントになるかもしれないので参考にして欲しいと思います。
●この『あり方』を市町村社協にどのように活用して事前準備にあたってもらいたいと考えているか
①行政との協議の場、②災害対応検討委員会、③市域の災害支援ネットワーク、④府社協の担当者会議や⑤運営支援者向けの研修会、⑥運営支援者としての派遣時などの場で参考資料として活用していただけたら幸いです。災害が起こってからではなく、「コロナの状況下で今、被災した時、自分たちの社協では何ができるのか」について、具体的な場面をできるだけ想定し、準備しておくこと。大阪府社協もそうした動きができることが目標です。
●期待している効果
災害支援で大切にしたいことは、「その時々の災害の課題に向き合い、考え続けること」です。そうしたプロセスのなかで、たくさんの支援団体の方とつながり、社協の災害支援の幅が少しでも広がればと思います。
特にコロナの状況下では市町村社協が方針を示し、社協の「受援力(支援を受ける力)」+「支援力(支援できる力)」を高めることが必要です。今後いつ来るかわからない大規模災害に備え、少しでも基盤整備が進むことを期待しています。
●みんなのフィールドをご覧になっている皆さんへ
平成30年度の災害時にはたくさんの方が全国から大阪の支援に入ってくださいました。改めてこの場をお借りしてお礼申しあげます。大阪の良いところは、運営支援者の養成や応援職員の派遣、eコミュニティ・プラットフォーム(国立研究開発法人 防災科学技術研究所開発)の活用など市町村社協と大阪府社協が一緒になって災害支援に取り組んでいることです。災害支援は支えあい、たすけあい。みんなのフィールドを観覧されている皆様、ぜひ、府内の市町村社協や大阪府社協とつながってください。災害支援の輪を広げましょう。
なお、大阪府社協ホームページ内の「災害支援」ページは今年の秋頃にリニューアルを予定しています。専用ページではこれまで大阪府社協の中で蓄積してきた災害支援の報告書や運営マニュアル、あり方検討など、災害に関するデータをボランティア向け、運営支援者向けなどに分類し、掲載する予定です。リニューアルの際には、改めてみんなのフィールドに掲載させてください。
掲載日:2020.08.21
文:社会福祉法人大阪府社会福祉協議会地域福祉部