2.ひみっ子ラボ
ひみラボでは,地域の子供たちを対象として,『ひみっ子ラボ』と称して,様々な教育・普及啓発活動を行っています.
『ひみっ子ラボ2019』 開催 のお知らせ
以下の通り,ひみっ子ラボ2019を開催します.
『環境DNAを用いた水の中の生き物調べ』
【実施内容】
水の中には、そこに住む生物のDNA(環境DNA・遺伝子)が溶け込んでいます。最近、そのDNAを調べる技術が開発されました。このDNAを調べることで、生物の採集を行わなくても、どのような種類が住んでいるかを知ることができます。そこで、ひみっ子ラボでは、ひみラボ水族館の水槽の水を使って、そこに住む生物のDNAを調べる実験に挑戦してみましょう。一連の実験を通して、身の回りの川に住む生物やDNAに対する理解を深めることを目的とします。
【実施形態】
1日1組。1組2~5名程度。期間中の定員5組程度。
【実施対象】
主に中学生、高校生。
学校やお住まいの地域は問いません。
上記以外の方を対象とすることも可能です。まずはお問い合わせください。
【実施場所】
ひみラボ
【応募方法】
実習を担当する富山大学理学部・山崎研究室まで,電子メールでお申込みください.お問い合わせ先も同じです.
電子メール:yatsume(a)sci.u-toyama.ac.jp
(メール送信時は,(a)を@に変更してください)
以下の開催可能日から,希望日(第三希望まで)を選んでください。
【開講可能日】※青字は開催した日or受付が終了した日
7月18日(木)、20日(土)、21日(日),22日(月)、23日(火)、25日(木)、27日(土)、28日(日)、29日(月)
8月については,お問い合わせください.
【開催(実施)日】
7月18日(木)、20日(月)、23日(火)、29日(月) 氷見高校対象
【応募期間】
上記の開催可能日までの期間、随時受付ます
【内容・進行】(時間は目安)
9時~ 挨拶。水汲み、DNAをろ紙で捕まえる。
11時~ ろ紙からDNAを取り出す。種類別にDNAを見つけ出す作業。(休憩)
13時~ DNAを可視化するための電気泳動。待ち時間に座学。
15時~ 電気泳動結果の観察。まとめ。解散。
以下は,氷見高校を対象とした実施の様子です.氷見高校の探究学習の一環として行われました.
この実習で用いた手法等は,以下の論文に従いました.
山崎裕治・西尾正輝. 印刷中. 簡易的な環境DNA分析方法を用いた絶滅危惧種イタセンパラの検出. 魚類学雑誌(早期公開)
【目的】ひみラボ水槽の水や氷見市内の河川・池の水を調べて,イタセンパラを検出する.
【実験1】ひみラボ水槽を用いたイタセンパラの検出
《方法》
1.ひみラボに設置されている①イタセンパラ飼育水槽と②ヨシノボリ飼育水槽のそれぞれから1リットルの飼育水を採水する.
2.飼育水をステリベクスを用いて,濾過する.
3.ステリベクスからDNAを抽出する.
4.イタセンパラDNA特異的増幅プライマーを用いたPCRを行う.
5.PCR増幅確認のための電気泳動を行う.
6.電気泳動後,LEDトランスイルミネータ―を用いて,DNA増幅を確認する.
《結果》
1.イタセンパラ飼育水槽から採水した水において,2回のPCRのいずれにおいてもイタセンパラDNAと同一サイズのDNAのみの増幅が確認された.
2.ヨシノボリ飼育水槽から採水した水においては,DNAの増幅は確認されなかった.
《まとめ》
1.イタセンパラが飼育されている水槽の水の中にのみ,イタセンパラのDNAが存在することが示唆された.
2.今回の一連の実験により,環境DNA技術の基本的操作を学ぶことができた.
【実験2】氷見市内の河川・池からのイタセンパラの検出
《方法》
1.氷見市の十二町潟や周辺の河川,イタセンパラ保護池において,それぞれ1リットルの飼育水を採水する.
2.飼育水をひみラボに持ち帰り,ステリベクスを用いて濾過する.
※当初は,現場で濾過する予定だったが,降雨のためひみラボに持ち帰った.
3.以下,実験1と同手順.
《結果》
1.イタセンパラの生息が確認されている万尾川およびイタセンパラ保護池において,イタセンパラDNAと判断されるDNA増幅が確認された.
2.上記増幅においては,各サンプルについて10回のPCRのうち,いずれも2回のPCRで増幅が確認された.
3.上記以外の河川・池においては,イタセンパラDNAは検出されなかった.
《まとめ》
1.イタセンパラが生息する川や池において,イタセンパラDNAが含まれていることが示唆された.
2.上記1において,PCRの成功(増幅)回数が少なかったことから,含まれるDNA量は少ないことが考えられる.
3.本方法において,自然界の水を用いても,イタセンパラの存在を確認することができた.
【総括】
1.初めてDNAを扱う高校生の実習においても,本方法により,環境水中からDNAを検出することができた.
2.採水,濾過,DNA抽出,PCR,電気泳動,観察とすべての過程を高校生自らが実施することができたことは,今後の環境DNA技術の普及啓発においても重要な成果である.
3.上記を可能にした要因には,短時間,簡易的な方法,危険性の少ない試薬や機材を用いたことが挙げられる.
4.今後,検出感度のさらなる向上などが期待されるが,現時点でも環境DNAの普及啓発活動としては,十分な取り組みであると判断される.
【実習の様子】※複数日の実習をまとめて掲載しています.
野外河川における採水の様子
ステリベクスを用いた環境水の濾過の様子
DNA抽出作業の様子.
電気泳動実験の様子.実験後半には,ピペット操作にも慣れてきました.
結果観察の様子.LED照射機のため,安全に観察が行える.
結果のゲル画像.右端の下部にDNAの増幅が確認できる.
目的のイタセンパラ増幅産物(200bp弱)とサイズが一致している.
左端は,DNAサイズマーカー(200bp DNAラダー).
以下、昨年度実施の様子です。本年度も概ね同様の内容です。
【中学生対象】
今回は,水槽の水から,フナのDNAを探し出すことを目的としています.
ひみラボ水族館の水槽から採水している様子.
滅菌したボトルを用いて,1リットルの水を汲みます.
採水した水を,実験室で濾過している様子.
水をろ過して,ロートの下に装着したフィルターでDNAを絡め取ります.
DNA抽出の様子.
フィルターからDNAを取り出します.
DNA抽出の様子.
マイクロピペッターを用いて,正確に作業を進めます.
電気泳動の様子.
泳動用ゲルにDNAのPCR試料を添加します.
泳動結果を観察している様子.
フィルターを通して,発色したDNAを観察します.
DNA染色液も照射機(LED)も無害のため,安全に実験が行えます.
電気泳動結果のバンド像.
一番右のレーンが,ポジティブコントロールで流したフナのDNA.左から2番目のレーンは,ひみラボのフナ水槽から採水した試料.フナのバンドが確認できます.
その他,左から3番目のレーンはドジョウ水槽,4番目は氷見の川の水.どちらもフナのDNAは確認できない.
一番左は,サイズマーカー.
水槽の水からフナのDNAを探し出す実験は成功しました.
【高校生対象】
みんな真剣に取り組んでいます.
以上が、昨年度の様子です。
※ひみっ子ラボ以外の期間にも、環境DNA実験を体験したい方は,富山大学理学部・山崎研究室あるいはひみラボまでご連絡ください.
【2019年7月1日更新】
過去に開催した,主な『ひみっ子ラボ』活動
『ひみっ子ラボ』は,
「ひみっ子」 氷見や地域の子供たち
「ラボ」 ラボラトリー(Laboratory)=研究室
「子ラボ(コラボ)」 コラボレーション(Collaboration)=連携,協力など
からなる造語です.