4.野生哺乳動物調査
現在,多くの野生動物は,さまざまな人為的影響を受け,そこ生息範囲や個体数を減少させています.その一方で,数を増やしている動物もいます.たとえば最近,日本各地でニホンイノシシやニホンジカの生息範囲や個体数が増加していることが知られています.それに伴って,イノシシやシカが農作物を荒らしたり,貴重な植物を食べてしまったりという被害が増加しています.このような野生動物は,生態系の一員であると同時に,時として駆除の対象ともなります.この状況は富山でも同じです.そのため,イノシシやシカとどのように接していくべきか,考えていかなければなりません.
【イノシシ研究】
富山大学理学部山崎研究室では,富山県と連携して,これまでイノシシの遺伝子解析調査を行ってきました.そして2012年度から,ひみラボを拠点として,野外におけるイノシシ生息状況調査を開始しました.
調査は,ひみラボ周辺の山地から始めています.この辺りにもイノシシやシカの目撃情報や被害情報があります.しかし,自然状態のイノシシやシカを観察することは困難であるため,さまざまな痕跡を探します.たとえば,足跡や食事をした痕(食痕),そして糞です.特に,糞からは遺伝子を採ることができると期待されますので,正確な種判別や個体識別などには,とても重要な資料になります.
林道を車で走りながら,痕跡を探します.
時には山の中の道なき道を進みます.クマの出没の恐れもあるため,ヘルメット等で身を固め,われわれの存在を知らせるために笛を吹き鳴らしながらの調査になります.
遊歩道沿いの調査も行います.歩きやすい点では,人間も動物も同じようで,結構痕跡を見ることができます.
イノシシの「ぬた場」と思われる場所.休耕田あるいは放棄田で見つかりました.中央の土が見えているあたりで、イノシシが転がりまわっていたと思われます.
ノウサギのものと思われる痕跡.赤矢印は食痕,黄矢印は糞です.
林道でノウサギを発見!写真中央にいるのが見えますか?
上の写真の拡大図.こちらに気がついた様子です.
まさに脱兎の如く逃げて行きました.こういう写真からでも、前脚を前後に着けて走っている様など、動物の生態や行動を知ることができます.
タヌキのものと思われる糞.
現場で発見できた糞をひみラボに持ち帰えり,遺伝子実験を進めていきます.
これまでのところ,明確にイノシシのものとわかる糞などは採集されていません.しかし,調査を続けることにより、イノシシの痕跡(ぬた場など)が見つかってきました.調査は始ったばかり.これからも継続的な現地調査と遺伝子分析により,氷見地域におけるイノシシをはじめとした野生哺乳類の現状を探っていきます.
【シカ調査】
2014年3月から,ニホンジカの調査も開始しました.イノシシと同様に,しかも最近は個体数増加の傾向にあります.これにより農作物への以外が増加すると共に,希少な野生植物に対する食害が懸念されます.
野山を歩いて,糞を広い,そこからDNA鑑定を行うことにより,氷見には何頭のシカが生息しているのか,あるいはその移動はどのように行われているのか?などを明らかにしていきます.