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合唱通信 No.20 2015/01/14

◇ 年頭に際して ◇

新年明けましておめでとうございます。今年も団員の皆さんにとって、そして牛久フロイデ混声合唱団にとって充実した素晴らしい一年になりますよう、ご祈念申し上げます。

さて、今年は羊(未)年ですが、テレビの番組だったか新聞紙上だったか失念してしまいましたが、次のような川柳が紹介されていました。

『羊さん 見てよし 着てよし 食べてよし』

羊の穏やかで優しそうなしかも堂々としたたたずまいを見ていると心がほんのり温まったり、あのムクムクとした羊毛のおかげで衣服を整えることができたり、ジンギスカン鍋などおいしい料理の食材として私たちの生活を充たしてくれるなど、さまざまな面で人間の営みに貢献してくれていることを“よし”の繰り返しによる心地よいリズムと愉快な調子で詠ったものです。

中国の古い諺『羊頭を掲げて狗肉を売る(羊の頭を看板にして犬の肉を売る)』を意味する四字熟語「羊頭狗肉」で知られているように、古来ひつじの肉はもっとも大切な栄養源、しかも上質なおいしい食材として扱われていたようです。

そこで価値あるモノゴトを意味する文字に「羊」の部首が使われていることは、皆さんもよくご存知のことと思います。たとえば「美」や「善」「義」、あるいは「祥」など好ましいこと、めでたいことなどを表す文字にはこの「羊」が使われていて、古人にとって“ひつじ”がどれほどよいものとして見られていたかがよくわかります。

美や善、義はどれも「よし」と読むことができることからもわかる通り、いずれも「よい」という同じ意味を語源としていることが窺えますが、羊年にふさわしく音楽の「よさ」、とりわけ合唱で自分たちが「よい」と感じること、価値ありと思えること、美しいと実感できることをめざしていっそう活動に弾みをつけていきたいものです。

ところで、本来“ひつじ年”は「羊」の字をあてるのではなく「未」の文字で書かれるべきものだということもご存知のことと思います。

「未」は樹木の端に生えた細い小枝を表す文字ですが、小さく目立たない微妙なものという意味を併せて持っているようです。微妙は「小さいが美しく妙なるもの」という意味で、微妙な味のものを“食べるに値する”ということから「美味(妙なる味)」と言ったのだそうです。

しかも小さく目立たない「未」は、今は目立たないけれどやがて大きく成長するものだと考えられ、開けてゆく将来を予感させる意味を併せ持つとのことです。

「未」は「美」や「微」に通じ、「美」は「よさ」に通じ、しかも来たるべき「よきこと(祥)」を予期させる「美(うま)しことば」であると考えると、合唱音楽の「よさ」を求めアプローチしていこうとする私たちの心に、ほのかに光明がさすようではありませんか。

一説には、アラブ半島はじめ中近東に砂漠が多いのは、昔の遊牧の民が羊を過放牧したために餌となる緑草を食べ尽くし、しかも多くの羊が往来することで土壌が踏み固められ、さらに乾燥気候が働いたためだと言われています。

羊の力恐るべし、といったところでしょうか。優しく愛らしい羊でも思わぬ大きな力を発揮するもののようです。それを私たちにとっての「よき力」とし、素晴らしい一年にしたいものです。