合唱通信 No.11 「明けましておめでとうございます」 2013/01/09
平成25年がスタートしました。団員の皆様には、輝かしい新年をお迎えになったことと思います。
牛久フロイデ混声合唱団は、4月の年度切り替えを過ぎると創立6年目に突入します。
ますます充実した合唱活動になりますよう、お祈りしています。
合唱と呼ばれる演奏形態は、それがデュエットであれ、トリオやクァルテットであれ、そしてまた大勢で歌い合わせる合唱であれ、
さまざまな声域や響きを持った複数の人々が声を重ねることで醸し出される響きを以て、音楽的に意味のある表現をしようとするものです。
声の質や声域の異なる複数の人々の声が重なるからこそ、そこにさまざまなサウンドが生じ、独りで歌う時とは異なる表情が生まれ、歌に新たな意味や価値が生じるのです。そこでは声の質や声域の違いに優劣がないことは言うまでもありません。高い声の人がおり、低い声の人がいるからこそ響きに豊かさが生まれ、厚みが生じるのであって、仮に同じ声質・同じ声域の人が音を重ねて歌う場合に比べれば、ずっと豊かな響きで合唱できることは言うまでもありません。
合唱をいくらかでも経験すれば、メロディー(主旋律)を歌うことよりも、副旋律を歌ってメロディーに和し、寄り添ってハーモニーを作り出すことこそずっと楽しいと思えるようになるものです。合唱ではどのパートも重要ですが、低旋律や対旋律などの副旋律がなければ合唱として成立しません。アンサンブルは、それぞれのパートがその働きを自覚し、時に和し、時に主張し、時に支え、全体として調和のとれた一体感のある演奏を表出することに他ならないのです。
いま「和する」と書きました。合唱でも合奏でも重要なのは「和音・和声」という言葉に象徴される「音の重なりが生み出す響き」です。
この「和」という語を漢語林では次のように説明しています。
『和:やわらぐ、なごむ、なごやか、やわらぎ』とした上で、さらに『行き過ぎも不足もない、ほどよいこと』『応える、ととのえる』。
また、これまでになかった表記で評判をとった新明解国語辞典では『相手の言い分・立場を大幅に認め、譲れるものは譲り合うこと、人と協調的な立場を保つこと』としています。
すなわち和音や和声がその言葉通り“調和した響き”を生み出すためには、団員相互が互いに認め、なごみ、打てば響くような反応の良い関係を保つことこそ大事だと言って良いでしょう。
多くの教育機関で合唱活動に取り組む児童・生徒・学生に日頃から「心と心のハーモニー」と呼びかけているのも、そうしたことと無関係ではありません。
音楽に真摯に向き合えば向き合うほど、人は謙虚にならざるを得ません。音楽の奥深さや高い価値に触れるとついつい自分を反省的に見つめ直さざるを得ないからです。
実は、そうした謙虚さがベースにあるからこそ、相手を認め相手と和したいと思えるようになるのではないでしょうか。そして不思議なことに、謙虚に向き合って「音楽を無心に楽しもう」とした時、ミューズの神は遠のくどころか、私たちに優しく頬笑み、音楽にアプローチできる道をそっと開いてくれるもののようです。
音楽を演奏することを英語ではご存知のように「PLAY」と言い表します。この語に示されるように、遊ぶように無心で、謙虚にしかも真摯に音楽を楽しむこと、それが合唱の響きや表情を充実させ、音楽の豊かさや深まりを実感できる最良の道だろうと思っています。
今年も大いに、そして存分に合唱の楽しみを味わっていただければと思います。