合唱通信 No.17 ◆野口雨情コンサートに向けて◆ 2014/08/06
「野口雨情童謡・抒情歌コンサート」が来月に迫りました。先日のこと、担当の方から選曲の理由について問い合わせがありました。
その回答として、下のような趣旨の内容(文面は若干異なりますが)でお答えいたしましたので、皆さんにもお知らせしておきたいと思います。
雨情メドレーに関しては、特に申し上げるまでもなく、雨情の代表的な童謡で構成したものですから、ここでは割愛させていただきます。
◆若い合唱
活動の拠点としている三日月橋生涯学習センターは、牛久沼に注ぎ込む稲荷川の畔にあり、豊かな水の流れと広々とした川辺の風景が
見渡せる風光明媚な場所に建っている。
私がかつて作曲した勝承夫作詞の「若い合唱」に詠われる光景を彷彿とさせる場で、不思議な縁を感じている。
この場を練習会場としている牛久フロイデ混声合唱団は、熟年合唱団ではあるが、若々しく瑞々しい響きの表出をめざして活動するグル
ープであることから、この詩に描かれた風景と心情は団のめざす方向にまさしくマッチしていると感じている。
そこで、愛唱曲の一つとしてこの曲をプログラムに取り上げてみた。
◆埴生の宿
三年前の東日本大震災とそれに続く大津波、さらに福島の原発事故により、日本人の多くは多くのことを学んだはずであった。
とりわけ突然に昨日までの「当たり前」で「何気ない」日常が奪われ、物の豊かさ以上に大切なかけがえのないものがあったことに気づかさ
れ、生き方について改めて見直す心の動きを持てたことは大きな犠牲と引き替えに学んだ得がたい教訓であったはずだ。
この曲は、たとえみすぼらしい粗末な家であっても、周囲をとりまくのどかな景色、虫や鳥の声、月の光や空の色に豊かさを感じ、どんな立
派な家にも負けない「誇り」を持っていることを静かなそして美しい口調で語りかけてくる内容の曲である。
震災後三年を経て、あの折に学んだことを忘れてしまったかのように物質的な豊かさを追い求める風潮もあるが、この曲を歌うことで、あの
当時の強い思いを風化させないようにしたいものだ。美しい旋律を持つ抒情歌だからというだけでなく、そうした思いをかみしめ味わうことも
大切だという思いから、この曲を心をこめて表現したいと思うのである。
◆花の街
この曲はよく知られているように、第二次世界大戦で焦土と化した日本の国土がいつの日か確かな復興を遂げ、美しい花々で彩られ平和
に満ちた夢のような国に生まれ変わることを願って書かれた曲である。
あの大震災から三年を経ても今なお足踏み状態の遅々とした復興の足取り、先の見えない過酷な生活を余儀なくされている多くの被災者
の方々、ふるさとに帰還することを断念するなど人生設計を大きく変えざるを得ない無念さや辛さをかみしめながら困難さに立ち向かってい
る人々の思いを共有することは日本に生きている私たちにとって欠かすことのできない重大事であろう。
せめて「夢に向かい、希望に満ちた明日を望む」趣旨のこの曲をお聴きいただき、そうした思いを共有する機会とすることで、一日も早い復
興の支えになることを願い最後に合唱したいと思い、選曲したものである。
選曲に関わる他の諸条件と併せて上のようなことも思い、発表曲としてプログラムを組んでみましたが、そのような趣旨で歌い上げることにつ
いて皆さんのご同意がいただけると幸いです。