衆議院予算委員会公聴会公述人意見陳述 犬飼重仁
(2012年2月27日午後開催)
2012年2月27日の午後に開催された衆議院予算委員会公聴会の公述人として、犬飼重仁早稲田大学法学学術院教授(早稲田大学GCOE総合研究所所属、及び アジア資本市場協議会代表兼事務局長)が意見陳述を行いました。
平成24年度予算案に関連する我が国経済(円高・デフレ)の問題に関して、日本経済と日本の企業をどう見るか、消費税と日本の債務問題についてどう考えるか、また今後の我が国経済及び我が国企業の課題は何か、さらに早稲田大学GCOEが提言を行いその後官民で取り組みが行われつつあるABMFとアジア域内横断的なプロ向け新債券市場創設に関して、意見陳述を行いました。
意見陳述および質疑の内容は、衆議院TVおよび衆議院のHPからご覧いただくことができますが、冒頭の意見陳述部分の内容をPDF形式といたしましたので、併せてご参照ください。
衆議院TVビデオライブラリ
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&u_day=20120227
13:01~13:17 犬飼公述人意見陳述(16分間の冒頭スピーチ)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=41571&media_type=wb
発言内容リンク(PDF):
https://drive.google.com/file/d/1J0TpcR2hMIbi5-4qKdSSEwfAtMMaQuLy/view?usp=drive_link
報告者・レポート:犬飼重仁
陳述の中で最後に述べたアジア域内横断的なプロ向け新債券市場創設に関する部分の抜粋を、ご参考までに以下に記述します。
6. アジア域内横断的なプロ向け新債券市場創設の具体化
最後に、アジア域内の横断的なプロ向け新債券市場創設のプロジェクトについて申し上げます。
まだあまり知られておりませんが、我が国の金融機関等の金融イノベーション発揮の場として、アジア域内の横断的プロ向け債券市場創設が、事実上、我が国の官民のイニシアチブで、具体的に進みつつあるというお話をさせていただきます。
それは、アジア版のユーロ債市場の創設と呼んでもよいものです。
早稲田大学では、2010年4月に提言[1]を行いましたが、同年6月、官邸ご発表の新成長戦略の工程表の金融部分には、「アジア債券市場の構築」に関して、アジア域内の豊富な貯蓄をアジアの成長に向けた投資に活用するために、2010年に 「ASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)の設立」、2020年までに「アジア債券市場を育成し、日系企業等の現地通貨での資金調達を円滑化する」ことがうたわれております。
また、この新成長戦略には、ユーロ市場と比肩(ひけん)する市場を我が国に実現するために、「プロ向けの社債市場の整備」、「アジア域内の豊富な貯蓄をアジアの成長に向けた投資に活用すること」等がうたわれ、「金融自身も成長産業として発展できるよう、市場や取引所の整備、金融法制の改革等を進め、ユーザーにとって信頼できる利便性の高い金融産業を構築することで、金融市場と金融産業の国際競争力を高める」ことが、国家戦略として明確に打ち出されました。また、この一環として、2011年開設された東京プロボンド市場もあるわけです。
それら受けて、アセアン+3(アセアン10カ国と日中韓)の共通の枠組みとして2010年9月に設立された「ASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)」では、サポートメンバーに私自身も加えて頂きましたが、アジア開発銀行を事務局として、我が国財務省、金融庁、日銀等のご尽力とご協力の下で、我が国の市場関係者をはじめとして域内の官民が一体となって協力、一年半に亘ってフェーズ1の活動を行い、域内11カ国の債券市場ガイドと比較分析レポートの策定を終了しました。これは4月の初めに公開されます。
その成果を基礎として、この2012年2月から2年間の予定で始まったABMF第2フェーズでは、域内共通の横断的プロ債券市場創設を実現すべく、域内各国の規制当局や市場関係者との具体的な対話で、各国のプロ市場を結び付けるための各国プロ向け開示基準の共通化や証券発行のドキュメンテーションの標準化を行う予定です。
一国の枠を超えたアジア域内の共通の新たな債券市場を、アセアン+3の共通の財産として創設しようとする壮大なヴィジョンの計画実現に向けて、具体的な作業が、実質的に我が国の官民共同のイニシアチブで動き出し、域内各国の官民の協力の下でプロジェクトが前進していることは、極めて画期的なことであると思います。
これは、アセアン+2の各国からの日本への信頼がいかに厚いものか、そして日本から参加している市場関係者の専門性がいかに高いかを示すものであると思います。
我が国の金融機関各位には、ぜひとも、この動きを、欧米の金融機関との競争に負けない金融イノベーション創造のために、いい機会として活用してもらいたいと思っております。
[1] 「アジ域内プロ向け国際債市場」とその日本版である「我が国プロ向け公募債市場」創設の提言 (以下のPDFご参照)
https://sites.google.com/d/1ZiexYwGAZbIM5-_04p_T1fzYe_tvkJg9/p/1hwkyg_h379k9vJTePb3CyEZ0406zs6bV/edit