特集 「新しい公共」のプラットフォーム 的世界のプレイヤー、この10年そしてこれから
今までもっぱら政府(行政)に委ねられてきた「公共」を再構築し、政府、市民社会組織、市場経済を担う企業など、多様なプレイヤーが協働し形作る空間とする---。
「新しい公共」という言葉が表現する社会の在り方は、縮小時代を迎える21世紀において持続可能な社会を確立・維持するために必要不可欠なものと言えるでしょう。
それぞれのプレイヤーが、官民の統治・非統治関係、公私二元論を克服し、自らの存立意義を問い、使命と役割を見直し、協働の関係を作り上げること。高度消費社会が成熟しグローバリゼーションが進んだこの十余年、こうした試みがそれぞれのプレイヤーによって進められました。一方、それが故にまた「新しい公共」という言葉、社会のありように関するビジョンについてそれぞれのプレイヤーが抱く期待やイメージ、活動のありょうの差が明らかになった十余年でもあります。
そんな今だからこそ、“新しい"公共とは何か、なぜ求められるのか、それを形作るプレイヤーとは誰で、互いのパートナーシッフがどのような分野で確立できるか、協働の基盤として何が必要かについて、今一度原点に返って広く論議される必要があると考えます。

1980年代、ポストモダンの潮流がさまざまな分野で巻き起こる中、「公共性の再構築」というテーマが注目され始めました。その後、バブル経済とその崩壊を経て、公的世界のプレイヤーたちによる現実の取り組みが進むにつれ、「新しい公共」という言葉が広く世間に認知されるようになりました。この十余年、政府・市民社会・市場が求めてきた公共空間とは、そして課題は--- 。

2004.11.25 NIRA政策研究 新しい公共 特集解説 抜粋 山脇論文 犬飼論文 

山脇論文への導入: 現代の公共哲学は、従来の公私二元論に代わって、「政府の公」「民の公共」「私的領域」の三元論的なパラダイムの導入を主張する。その際「民の公共」の担い手は、NPO/NGOなどの組織である場合もあるが、それ以上に市民一人ひとりであることが自覚されなければならない。この理念は、かつての「滅私奉公」に代わる「活私開公」という人間像や、多元的な「自己ー他者ー公共世界」理解という世界観によって基礎付けられよう。公共哲学は、これら三つのアクターの相互作用を「ある」「べき」「できる」の三重の観点から考察し、効率のみならず「福祉」や「公正」をも重視するような「理想主義的現実主義」ないし「現実主義的理想主義」の方法論を採ることによって、「より良い社会」の実現を目指す。

犬飼論文への導入: 国際的な企業グループはもはやプライベー卜な存在ではない。マルチ・ステークホルダーと地域に大きな影響を与え得るのみならず、主体的市場参加者として関係するすべての市場のインテグリティ確保に一定の責任を有する。公共圏のプレイヤーたる自覚と企業の社会的責任への対応は絶対必要条件であり、企業のコストではなく投資である。さらに、公共圏には制度的基盤としての広義の社会的市場経済規制が必要で、そこでは公私二元論を超えた「民の公共」の役割が重要だ。

2004.11.25 NIRA政策研究 犬飼論文 PDF版

2004.11.25 NIRA政策研究 犬飼論文 原稿版

NIRA 政策研究 2005(H17) 年 12 月号 犬飼論文 グローバル化するわが国企業とマーケットガバナンスの課題