2008.6.16 NIRA Research Reports

NIRA研究報告書 

金融資本市場インフラ改革への構想 

NIRA研究報告書

 

金融資本市場インフラ改革への構想 


Ⅰ.論考・提言編

 
Ⅱ.連続講演会議事要旨 

第1回「日本版金融オンブズマンへの構想」(2008.1.19)

第2回「金融サービス市場法制のグランドデザイン」 (2008.3.15)

犬飼 重仁 編

 

2008年6月 

 

総合研究開発機構(NIRA)

早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所

金融ADR・オンブズマン研究会

アジア資本市場協議会(CMAA)
日本資本市場協議会(JCMA) 

はじめに

 

NIRAにおいて行なわれた、平成17(2005)年7月からの「東アジア地域の金融市場の一体性確立に向けての戦略ヴィジョン」研究プロジェクト、それを引き継いだ平成18(2006)年11月からの「アジア域内の金融資本市場育成への戦略ヴィジョン」研究プロジェクト等の成果も踏まえ、平成14(2002)年以来NIRAにおいて継続してきた金融資本市場に関する一連の「シリーズ研究」の総まとめを行うべく、平成19(2007)年9月から平成20(2008)年3月までの7ヶ月実施されたのが、今般の「金融資本市場改革への構想」研究プロジェクトである。

 

 その間、

 

(1)  平成17(2005)年から平成19(2007)年にかけてNIRAで行なったアジア資本市場に関する研究の成果は、平成19(2007)年3月に、神田秀樹座長のもと、犬飼以下で、NIRA研究報告書・提言『アジア域内国際債市場創設構想』(犬飼重仁編著.単行本としてLexisNexisより出版)にまとめられた。
これと並行して、首相官邸が主催し伊藤元重NIRA理事長が座長を務めた「アジア・ゲートウェイ戦略会議」に対して、金融資本市場関連の政策提言を行うべく、NIRAの研究会の中に分科会が組織された。その提言は、『NIRA金融プラットフォーム小委員会提言』として、平成19(2007)年3月、アジア・ゲートウェイ戦略会議に提出された。
このNIRA小委員会提言と上記NIRA研究報告書の提言は、官邸のアジア・ゲートウェイ戦略会議事務局において詳細にわたって参照され、それらの重要な骨子部分が、同戦略会議の金融部分の提言に活かされることとなった。(本報告書1-2及び1-3参照)

(2)  NIRAの平成17(2005)年以降のアジア域内金融資本市場に関する研究成果として、平成19(2007)年6月に設立した「アジア資本市場協議会(CMAA)」では、NIRAの研究会と相互に協力し、アジア域内の金融資本市場のヴィジョンと市場ルールと市場インフラのあり方について、継続的に議論を行なってきた。
これらの研究の成果は、平成19(2007)年10月初頭にボストンで開催されたSIBOS 2007*において、「アジア資本市場のハーモナイゼーションへの戦略; Asian Inter-Regional Professional Securities Market(AIR-PSM)」(講演者:犬飼重仁)として、発表された。
その講演内容を含む継続研究の成果は、平成20(2008)年3月31日に、LexisNexisより、NIRA英文研究報告書『Grand Design for An Asian Inter-Regional Professional Securities Market (AIR-PSM)』(犬飼重仁編著)として出版された。これは、NIRAとアジア資本市場協議会(CMAA)、早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所、SWIFTグループの協力によって実現したものである。

* SIBOS 2007: 全世界レベルでの金融サービスの動向とSWIFTコミュニティの今後について討議し、戦略を共有することを目的とした国際的なイベント(Conference & Exhibition)。犬飼は、SWIFTより、同イベントに、講演者として招待を受けた。

(3)  また、平成15(2003)年以来の、NIRAと早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所との共同研究「金融サービス市場法制研究(法と市場と市民社会のあり方に関する研究会)」の成果の一つの反映として、平成19(2007)年4月には「金融ADR・オンブズマン研究会」が設立され、同時に第一次提言が発表された。
さらに同年11月には、NIRAと早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所と金融ADR・オンブズマン研究会の協力によって、この金融ADR制度分野の中間的な研究成果として、LexisNexis社より単行本「日本版金融オンブズマンへの構想」(犬飼重仁・田中圭子編)を出版した。
この「金融ADR・オンブズマン研究会」においては、現在、4つの大手弁護士事務所のメンバーや司法書士の方々等が参加して、平成20(2008)年の年央を目標に、日本に相応しい金融ADR制度モデルの公表を想定し、鋭意「より横断的で実効性の高い第3者型の日本版金融ADR・オンブズマン制度」の詳細な制度設計を行いつつある。
なお、その研究の一環として、同研究会の簗瀬捨治会長と同研究会幹事でNIRA研究会メンバー田中圭子氏と犬飼の3名は、平成19(2007)年9月下旬にロンドンで開催された金融オンブズマン総会(世界大会)に出席したが、そこでの知見をもとに、平成20(2008)年1月19日には、早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所とNIRAの主催、金融ADR・オンブズマン研究会共催の講演会(下記4参照)において、その継続研究の中間的な成果を報告した。

(4)  平成15(2003)年以来、NIRAと早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所との共同研究の成果である2つのNIRA研究報告書、『日本版金融オンブズマンへの構想』(2007年11月LexisNexis社刊)と『金融サービス市場法制のグランドデザイン』(2007年11月東洋経済新報社刊)の出版記念を兼ねて、連続講演会を、早稲田大学西早稲田キャンパスにおいて開催した(第一回:平成20年1月19日/第2回:3月15日)。これらの連続講演会では、いずれも金融庁の総務企画局の課長による特別講演が実現している。

(5)  2008年3月末には、金融ADR・オンブズマン研究会のアドバイザーとして、前金融庁長官の五味廣文氏(西村あさひ法律事務所顧問)を迎えることができた。

 

上記(1)から(5)等の研究成果を踏まえて、2分冊の、本NIRA報告書『金融資本市場インフラ改革構想Ⅰ・Ⅱ』を策定し、公表する次第である。

 

本NIRA報告書『金融資本市場インフラ改革構想Ⅰ』は、論考・提言編であり、NIRA報告書『金融資本市場インフラ改革構想Ⅱ』は、連続講演会議事要旨である。

 

なお、本研究は、通常の研究会の枠組みでNIRAが開催する従来の形式ではなく、NIRAの研究会とは別に、(NIRAのこれまでの研究の成果として)設立された(1)「アジア資本市場協議会(CMAA)」、(2)「金融ADR・オンブズマン研究会」(この2つの会では定期的なミーティングに加え適宜小規模なミーティングも併行して開催する)、及び(3)早稲田大学における講演会実施等の、定例および断続的なミーティング、およびメイルや電話等のやり取りの組み合わせにより、それぞれに、NIRA研究会メンバー同士のコミュニケーションを中核として、これらに外部の研究者や市場関係者や公的機関の方々等が自発的/主体的な協力者として参加することを通じて実施されてきた。

 

 この場をお借りして、われわれの研究にお力をお貸しいただいた方々に、心より御礼を申し上げる。

 

2008年6月16日

 

プロジェクトリーダー

犬飼 重仁


お世話になりました皆様へ

 

拝啓、時下益々ご清祥の段、お慶び申し上げます。

さて、私儀、おかげさまで、この2008年6月16日をもちまして、総合研究開発機構(NIRA)への6年にわたる三菱商事よりの出向期間を無事終了いたしました。
この間、NIRAでの研究活動に対し皆様から頂戴いたしましたご高配とお力添えに、厚く御礼申し上げます。

末筆ながら、皆様の益々のご健勝とご発展をお祈りし、ご挨拶とさせていただきます。

敬具

2008年6月16日

 

犬飼 重仁