2007.02.23 Asia Gateway Proposal
Submitted to  the Cabinet Office of Japan
第5回 アジア・ゲートウェイ戦略会議 官邸提出資料

NIRAアジア金融プラットフォーム小委員会 提言


(CMAA設立の背景となる参考情報)

第5回 アジア・ゲートウェイ戦略会議 官邸提出資料  2007.02.23

NIRAアジア金融プラットフォーム小委員会 提言 サマリー

-日本とアジアの利用者の視点に立った金融ビッグバンの完成を-

アジアに開かれたオープンで活力あるわが国金融サービス市場の創出と、アジア域内金融資本市場発展のために


NIRAアジア金融プラットフォーム小委員会 提言 


全体の構成

本 編 :提言(サマリーおよび本文)・検討すべき施策項目の例示・メンバーリスト

資料編1:包括的・横断的な金融サービス市場法制グランドデザインの必要性

資料編2:金融プラットフォーム構築のためのグランドデザインの必要性


官邸提出版サマリー
(サマリーの全文掲載)


提言全文 Full Report(日本語 Japanese 及び 英語 English)


日本語 Japanese 英語 English

提言本編         Recommendation by the NIRA Asian Financial Platform Subcommittee

資料編1     Recommendations by NIRA Asian Financial Platform Subcommittee ― Material 1

資料編2     Proposal by the NIRA Asian Financial Platform Subcommittee – Material 2


アジア・ゲートウェイ戦略会議

NIRA アジア金融プラットフォーム小委員会 提言 サマリー全文

現状認識

  わが国が冷戦終焉後の世界的規模での市場間競争・地域間競争に勝ち抜くには、公正かつ効率的な金融サービスや物流サービスが確保される必要があり、そのための市場と市場インフラがしっかりしたものとなっていなければならない。しかしわが国の金融サービス業と金融サービス市場は十分信頼されているとは言い難い。また、各種の市場インフラ整備も、個別には進展している部分も多いが、全体としてみると「グローバル化」および「ITガバナンス」の視点が十分ではなく、アジア市場の発展に伴う国際競争の激化や、ICT(情報通信処理技術)の高度化といったパラダイムの変化に対して、全体最適としての取り組みが不十分である。

  わが国の国際的な大企業はグローバルな資金調達に走る一方、中小企業は高度な金融サービスを享受することが難しい。個人金融資産の太宗は依然としてリスク回避的な運用に留まっている。わが国は対外資産大国であり、1,500兆円の個人金融資産が存在し、市場の規模はアジアで傑出している。このような環境でわが国金融サービス業は、海外、特にアジアに積極展開し日本とアジアの利用者に多くの便益を還元することが可能であるはずである。しかし、個人金融資産は諸外国に比べ圧倒的に高い割合が預貯金で運用され、対外投資も米国債に偏重し、金融資産収益率は低く、わが国はアジアに便益を還元できていないだけでなく、アジアの成長をも十分取り込めていない

  わが国の金融サービス市場と市場インフラ(下記注)は、国を跨いだ決済や指示が日常的に出ることを十分に想定していない上、市場関係者(インフラ運営者含む)の、「外に繋げようとする努力」(国際化)が十分とはいえない。日本の居住者以外の顧客の獲得も不十分である。NY・ロンドン市場や欧米金融機関に比べ国際競争力が劣後していることは明白であり、アジア市場においても(時差上の有利性を含む)地の利を活かせていないのが実情。

  アジアにおいては、金融危機の再発予防や各国国内の金融資本市場インフラの整備に取り組んでいるが、各国の金融資本市場と、それらをつなぐアジア独自のクロス・ボーダーの金融資本市場インフラが未整備なため、欧米主体の仲介決済機能および機関等を通じてアジアの豊富な貯蓄が欧米にまわり、欧米からアジア投資資金として還流してくる状況が続いている。 しかし近年、各国国内規制の及ばない自由な市場(self regulated market)であったユーロ市場がEU指令という規制に従う市場になりつつある。また米国の公募市場は規制コストの上昇に苦しんでいる。 クロス・ボーダーの金融サービスにおいて、日本とアジアの金融サービス市場に絶好のチャンスが巡ってきている。

  アジアと日本の金融サービス市場は欧米との市場間競争・地域間競争に勝つことを目指す必要がある。そのためには、域内各国の市場参加者と政府が協力し、日本をはじめアジア域内各国の国内およびクロス・ボーダーの金融サービス市場と市場インフラを含めて、アジア域内の金融サービス市場全体の魅力と効率の向上をはかるための統合的・包括的なグランドデザインを描く必要がある。しかし、その推進を阻む最大の問題は、アジアチームの代表格ともいうべきわが国の、(1)国内の金融サービス市場の閉鎖性・不透明性と、(2)国内の金融サービス市場インフラの整備(効率化・高度化)の遅れである。

 

何を目指すべきか -- わが国の金融サービス市場をアジアの共有インフラに


投資家や発行体など市場の利用者のニーズに合う金融商品・サービスが豊富に存在

金融サービス市場に関する法規制、自主規制ルール・市場慣行、規制監督機関、使いやすい紛争解決機能(金融ADR)など、公的制度インフラが包括的かつ横断的なものとして整備され、金融サービス業者、発行体、規制監督機関などの信頼が高い

市場の各種システムインフラ(一連の電子プラットフォーム:下記注)が、統一的なグランドデザインの下、全体として効果的に整備されている

税制等が簡素で効率的

仲介者たるわが国の金融サービス業者と市場に参加する人材の層が厚く専門性が高い


 

提言:2つの諮問会議ないし委員会の設置 - ①市場の法規制と、②市場の各種システムインフラの、国レベルのグランドデザインの策定

日本版金融サービス市場法制等諮問会議(仮称)

金融サービス市場システムインフラ(電子プラットフォーム)諮問会議(仮称)


:金融サービス市場の市場インフラとは何か

(1)金融サービス市場取引の場所・空間

金融商品が取引される場所としての「金融サービス市場」がある。ここでは金融サービス市場という言葉を、証券取引所市場のような市場型取引が行われる場はもちろんのこと、相対型取引が行われる場としての金融サービス業者間取引市場等も含む広い概念として使っている。(*英語のExchangeは日本語の場所の意味するものよりもさらに広義な取引をする空間という認識であり、取引所取引に限らず、サーバー空間も含む)取引執行システムという意味では下記システムインフラでもある

(2)金融サービス市場の法規制などの公的制度インフラ

金融サービス市場の構成要素としては、上記のほかに、法規制などの高い透明性と法執行力を備えた公的制度インフラとして、

    金融サービス市場を司る各種法令(金融商品取引法、会社法(公開会社法)等)や、自主規制ルール・市場慣行等のソフトロー(規律・規範)、(それらの中には、開示制度や会計制度などを含む)

    公正な金融サービス市場を確保し利用者保護を図ることを任務とする、説明責任を十分果たすことのできる「規制監督機関」(「金融監督当局」「財務当局」「為替当局」)、

    金融サービス業者・利用者間のトラブルを解決する「紛争解決機関(金融ADR)」、

    金融サービス業者破綻時の利用者保護を図る「セーフティーネット」、

    金融サービス関連税制、などが重要である。

日本に最終的に必須となる日本版金融サービス市場法制をはじめとする公的な制度インフラを真に実効性あるものとするためには、こうした要素を横断的・包括的にカバーしておく必要がある。

(3)金融サービス市場の各種システムインフラ(電子プラットフォーム)

市場の各種のシステムインフラ、すなわち、

    金融商品等の開示情報登録システム(取引所などの機能)

    高度な取引執行システム(取引所・PTS(私設取引所システム)など)

    証券清算・決済システム(CCP:セントラルカウンターパーティ、CSD:証券集中預託機関)、

    資産管理信託業務システム(カストディシステム)、

    企業や金融機関の、資金管理(キャッシュマネジメント)システムや、各種のリスクマネジメントシステム、内部牽制のためのシステムなど、

    中央銀行と金融機関等、金融機関の間、あるいは金融機関と企業など金融サービスの供給者と利用者の間を結ぶ、ITコミュニケーションシステムなど、である。

これら各種の市場システムインフラは、統一的なグランドデザインの下全体として効果的に整備され、証券投資等の一連の業務プロセスを統合的に「電子商取引化」する電子プラットフォームとして、複数システムが上手に連携し、シームレスなオペレーションが可能となるような枠組み(フレームワーク)となっていなければならない。例えば、取引の執行の迅速性と正確性を追及する世界中の機関投資家にとって、証券等売買仲介機関、資産管理機関、取引所、およびそれらを繋ぐITコミュニケーションシステムなどをそれらの能力とサービスに基づいて選択する時代に入っており、わが国の証券市場をはじめとする金融サービス市場と市場インフラにとっても、今後そのような世界的競争に参加することは不可避であろう。


金融サービス市場の構成要素 図表(下記参照) 

の①~⑤の番号は、下記の5つのポイントに対応している)



①投資家や発行体など市場の利用者のニーズに合う金融商品・サービスが豊富に存在、

②金融サービス市場に関する法規制、自主規制ルール・市場慣行、規制監督機関、使いやすい紛争解決機能(金融ADR)など、公的制度インフラが包括的かつ横断的なものとして整備され、金融サービス業者、証券発行体、規制監督機関などの信頼が高い、

③市場の各種システムインフラ(一連の電子プラットフォーム)が、統一的なグランドデザインの下、全体として効果的に整備されている、

④税制等が簡素で効率的、

⑤仲介者たるわが国の金融サービス業者と市場に参加する人材の層が厚く専門性が高い。

上記の金融サービス市場の構成要素に対応して作りかえるべき5つのポイント


①投資家や発行体など市場の利用者のニーズに合う金融商品・サービスが豊富に存在、

②金融サービス市場に関する法規制、自主規制ルール・市場慣行、規制監督機関、使いやすい紛争解決機能(金融ADR)など、公的制度インフラが包括的かつ横断的なものとして整備され、金融サービス業者、証券発行体、規制監督機関などの信頼が高い、

③市場の各種システムインフラ(一連の電子プラットフォーム)が、統一的なグランドデザインの下、全体として効果的に整備されている、

④税制等が簡素で効率的、

⑤仲介者たるわが国の金融サービス業者と市場に参加する人材の層が厚く専門性が高い。

 


NIRAアジア金融プラットフォーム小委員会 メンバーリスト

 

2006年11月以降、内外の金融資本市場実務経験者を中心に、NIRAアジア域内の金融資本市場育成への戦略ヴィジョン研究会メンバーより首題小委員会を構成。アジア・ゲートウェイ構想(金融)実現のための具体的課題について検討し、07年2月23日に、NIRA提言サマリーを第5回アジア・ゲートウェイ戦略会議に提出。

 

学識経験者

神田 秀樹    東京大学大学院法学政治学研究科教授

曽野 和明    北海道大学名誉教授・帝塚山大学名誉教授

上村 達男  早稲田大学法学学術院長・法学部長、

早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所所長

 

市場実務家・市場関係者等

吉田 聡     大和証券SMBC(株) IT統括部部長

鈴木 裕彦  バークレイズ・キャピタル証券株式会社 投資銀行本部ディレクター

松本 啓二    松本法律事務所 弁護士

内山 昌秋    トレードウィン(株)代表取締役社長

佐藤 良治    日立キャピタル(株)業務役員・法務部長

村上 雅春    NTTデータ決済ソリューション事業本部企画部決済事業戦略室部長

橋本 圭一郎 フィッチ・レーティングス CEO

吉見 亨     スイフト・ジャパンVice President Commercial Division
増田  雄輔  日本アジアホールディングス取締役

玉木 伸介    元NIRA主任研究員(預金保険機構財務部審理役)

原田 靖博    格付投資情報センター(R&I)代表取締役社長

平井 一志    中央三井インフォーメーションテクノロジー取締役総務部長

仲川 聡     国際協力銀行 ABMIタスクフォース タスクリーダー

宮地 正人    アジア開発銀行(ADB)地域経済統合室シニアアドヴァイザー&キャピタルマーケットヘッド

 

共同研究者

早稲田大学21世紀COE《企業法制と法創造》総合研究所

 

事務局

犬飼 重仁  NIRA主席研究員・早稲田大学客員教授 (取りまとめ担当)

窪田 修   根本内閣総理大臣補佐官付企画調査官 


総合研究開発機構の概要


総合研究開発機構(NIRA)は、昭和49(1974)年3月25日、産業界、学界、労働界、地方公共団体などの代表の発起により、総合研究開発機構法に基づいて政府に認可された政策志向型の研究機関で、官民各界からの出資、寄付による基金で運営されています。

NIRAの主な目的は、平和の理念に基づき現代社会が直面する複雑な諸問題の解明に寄与するため、自主的、長期的な視点をもって総合的な調査研究を実施することで、その研究の対象は時代の潮流をとらえつつ、経済、政治、社会、行政、地域、国際などの領域にわたっています。

このために、総合的な研究開発の実施を基本として、研究情報の提供や国内外の多くの研究機関との交流、研究助成、支援育成など積極的な活動を展開しています。

会      長 : 小  林 陽太郎  富士ゼロックス株式会社 相談役最高顧問

長 : 伊  藤 元  重   東京大学大学院 経済学研究科教授

研究評議会議長 : 塩野谷 祐  一   一橋大学 名誉教授

〒150-6034 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー34階

http://www.nira.go.jp/

連絡先 Tel.03-448-1735  Fax.03-5448-1745  企画広報課

本提言に関する問合せ先 犬飼 重仁 NIRA主席研究員 Tel.03-5448-1710