2009.11.28
アジア版MTN(Medium Term Note)プログラムの実行可能性に関する調査報告と提言

日本政策金融公庫・国際協力銀行よりの受託研究

サマリー

 発行体の資金ニーズに合わせて随時機動的に債券発行が可能となる「アジアMTN プログラム」の促進は、アジアの膨大な貯蓄を背景とする域内各国の運用者・機関投資家の優良な域内投資機会を、合理的なコストでシステマティックに拡大する契機となる。

 アジア域内の巨大な貯蓄・外貨準備は、現状、運用者・機関投資家にとっての投資コストが相対的に低いとの観点から米国の国債・公債をはじめとする欧米の投資機会に太宗が振り向けられている。換言すれば、アジア内の運用者・機関投資家は、21 世紀の成長センターであるべきアジア域内の投資機会を発見するための機会とインフラに相対的に乏しいと言わざるを得ない。

 今後、

(1) プロ向け市場の法規制システムをはじめとするアジア域内共通の金融資本市場関連インフラの整備、

(2) アジア域内金融機関の投資銀行機能の強化、

(3) アジア域内のプロの調達者(発行体)、投資者(運用者・機関投資家)、仲介者(金融機関等)、規制規制監督当局の4者が相互に触発されるフォーラム等の戦略的な対話機会の増大、等を通じて、

A. アジア域内発行体の資本市場資金調達が円滑化・効率化され、域内の運用者・機関投資家にとっての域内投資機会が増大することが期待される。

またそれらにより、

B. 調達手段と調達ソースの多様化と安定化・低コスト化が実現し、

C. もって域内資金循環の円滑化の進展により、アジア域内経済成長のさらなる促進と、アジア独自の(かつ将来「世界標準」となりうる可能性もつ)アジア域内金融資本市場と市場インフラの形成と発展に貢献するものと期待される。

 アジア域内共通の金融資本市場関連インフラ整備の最初の第一歩としてのアジア版 MTN プログラムの振興は、アジア全体として、グローバル金融危機対応、国際金融秩序維持対応、地域間競争対応の観点からも重要であり、日本とアジアの政府系等の機関、及び域内経済の要である民間金融機関や企業グループにとって必須である。従って、アジア MTN プログラムの活用可能性を高めるための、国の枠を超えた、いわばアジア経済共同体としての関連諸政策の立案と実施は、喫緊の課題である。

犬飼 重仁

早稲田大学大学院法学研究科

2009/11/28

リンク: https://drive.google.com/file/d/1Defdz52YfRq7c94qw_b5na9bE6XHCxKj/view?usp=drive_link