第33話. Qちゃんの敗因は帽子を脱いだ事 (2006/11/21 作成)
今回はサイエンス・ウォッチングの香りを少し付けたスポーチ・ウォッチングです。
見ていたわけではないのですが、先日の東京国際女子マラソンでQちゃんが31キロ過ぎで帽子を脱いだ後にズルズルと後退したという記事を見て、随分前ですが瀬古がオリンピックで負けたときのことを思い出しました。
瀬古はそれまで初マラソンを除いて確か一度も負けた事が無く、特に競り合いでの瞬発力が強く、誰かがスパートしても直ぐに楽々と追い付き、やがて逆にスパートして相手をみるみる引き離すというのが、それまで見ていた瀬古のマラソンでした。
瀬古はその前のモスクワ・オリンピックの時も優勝候補でしたが、政治的な理由で日本のオリンピック参加がボイコットされたために、不参加となりました。
男子マラソンで初めてオリンピックで金メダルのシーンを見ようと、当時30代のSEで大変忙しかったのですが、当日の朝に会社に電話を掛けて「体調不良のため休みます」と言ったところ、そういう電話が多かったのか、それとも小生の性格を見透かされていたのか、上司は「分かった。結果を報告しろよ」と言って、アッサリ許可してくれました。
それなのにです。
瀬古は珍しく帽子をかぶっていました。最初から元気に先頭集団に居て、アナウンサーをはじめ解説者も瀬古がいつもの通りのレース運びで勝つ事を予測し余裕で見ていました。ところが、やはり30キロ付近だったと思いますが、瀬古が帽子を脱いだのです。それからみんな信じられない光景を見ました。瀬古が遅れ始め、何回か追いすがるのですが、まもなく先頭集団からどんどん離されていきました。アナウンサーが、「アレッ? 瀬古が遅れ始めましたよ?」、やがて「どうした事でしょう!! 常勝の瀬古が、アア!! 常勝の瀬古がどんどん離されてていきます。」、というような悲鳴に変わって行きました。
このときは、帽子を脱いだことと遅れ始めたことと関係があるのではないかとチラッとは思いましたが、「瀬古もピークを過ぎたのか」とアッサリ片付けていました。
走っていて、おそらく生理的に苦しいから帽子を脱ぐのだと思います。それだけ余裕の無い状況なのかもしれません。だから、帽子を脱がなくても勝てなかったのかも知れません。
しかし、逆に、帽子を脱いで生理的に楽になったことが、我慢力というか闘争力というか、そういうものを削いだということも考えられます。瀬古が何度か追いすがったところを見ると、精神的なものではなく肉体的な影響だとは思いますが、例えば、帽子の下で汗にまみれていた髪が風に吹かれてサッパリさわやかになります。あるいは、急速な頭髪部の表面体温の低下があります。その頭皮部分の体温低下が、ホルモン分泌や神経系に影響を与えたということは無いでしょうか?
スポーツ医学をやっておられる方、誰か研究してくれませんかね。