卒研生や大学院生として「先行研究をひと通り調べる」ことが課題になったとき、どれだけ、どこまで調べればいいのだろうかと不安に思うことがあると思う。もちろん、自分なりの良い方法を見つけられることが一番だ。が、ここでは一つだけ、参考になりそうな論文一つを深く読み込んでみる一歩手前で、いくつかの論文を "ザっと見" することを勧めたい。
調べてみたキーワードで、いったい「どんな論文がそもそも報告されているのか」の全体像を掴む。そして、次に深く読み込む論文をその全体像の中でどう位置付けできるのかを把握して理解するようにしてほしい。
もちろん、気になった一つの論文や一つの記事をしっかりと読み込むことができ、深く理解できるようになることも大切だ。しかし、それが「なぜ、どう『気になった』一本なのか」、そして関連した複数の論文、もっと言えばその分野や業界の中で「その一本がどういう位置付けにあるのか」を把握し、人に伝わる自分の言葉で簡潔に説明できるようになることはもっと大切だ。
インターネットの無い時代の論文調査は私も経験がないけれど、無かった時代のそれはおそらく、複数の冊子からまず参考になる可能性のある論文の所在を探るところから毎回スタートしていたのだろう。今はインターネットでキーワードを入れて検索すると、それっぽい論文をすぐに引っ掛けて見つけることができる。それは便利でもちろん活用すべきもの方法だが、「2, 3コ見つけてよし安心」でなく、そのキーワードで検索するとそもそもどういう内容の論文がヒットするのかということを把握できるといい。
論文検索するとキーワードにヒットするものが、一秒未満でいくつも返ってくる。その「いくつも」を使わない手は無いのだ。「いくつも」の中から少数を選んで読み込むにしても、「それを選んだのはなぜか」という自身の判断にどれだけ注意を払ってほしい。それに、「いくつも」の中には、「探しかったのはこういう内容じゃないんだけどな」「このキーワードだとこういう内容の論文の方が多いんだな」という意外な検索結果もあるだろう。もちろん、探し求めていた論文や記事もあるだろう。その広い情報をいずれは短時間で要約し、分類するべく試行錯誤をしてみる。それができるだけで、自身で整理し理解できる情報が質・量ともに格段に向上するはずだ。
毎日図書館に行けとは言わない。場所を問わずに情報をやり取りできるようになったことが、インターネットを活用できることの最大の利点だ。だからこそ、インターネットで得られる情報を自身で整理し、理解して分類できるようになってほしいと思うし、そのための試行錯誤を繰り返してみてほしいと思う。いきなり巧くできなくても落ち込む必要はない。巧くできない中で試行錯誤した人だけが、問題を巧くクリアする自分なりの方法を持てるようになるのだから。