芸濃側コース
安濃ダム建設後、錫杖ヶ岳の芸濃側山麓はダム湖の錫杖湖畔一帯が観光地として整備され、湖上公園やキャンプ場、レストラン等の施設や駐車場にも事欠かないので、麓からの気楽な登山を楽しむことができます。
錫杖湖畔より見た湖水荘。その背後のピークが錫杖ヶ岳。
芸濃側からの登山道は3コースあって下之垣内橋西の本法寺裏よりのものと、下之垣内橋をわずかに下り左手より河内谷(安濃川)に合流する枝谷沿いに錫杖ヶ岳東稜線の鞍部に登るもの、最後は更に西の北畑集落より柚乃木峠をへて加太側ルートから登るものですが、こちらは加太側コースと言えます。
二万五千の地図には下之垣内から山頂にいたる林道が二本描かれていますが現在の登山道からは外れています。地図のルートに近い山頂に直接通じる尾根沿いのルートがありますが登ったと言う話は殆ど聞きません。
このルートは本法寺裏から少し進むと登山道左手に尾根(P373)に至る中電の送電線管理道があり、この道の途中から尾根鞍部へ行くものです。
山頂直下までは尾根上に林道が通っているので特に苦労なく進めますが、最後の山頂部の花崗岩ドームにぶつかるとほぼ垂直の壁として尾根前面に立ちはだかります。左手の谷沿いに進めば山頂直下の休憩所に出ますが、山歩きに慣れた方以外は進められません。
車を利用する場合、安濃ダムを越えレストラン湖水荘で左折して300mほど走ると下之垣内橋に出ます。この橋の周辺に駐車場がありますが、手前の湖水荘とふれあい公園周辺にはより広い駐車場やトイレが整備されていますから此方を利用することも出来ます。
本法寺裏(西口)
登山道の入り口へは、下の垣内橋を渡り正面の民家の槙垣に沿って少し行くと、右手に本法寺へ通じる小道があり、そこに登山道入り口の案内板があります。
下之垣内橋の前面左に本法寺の屋根が見える。この裏手に登山道がある。
このコースは町によって最もよく整備されており道を誤る心配はありませんが、登山道に人工の階段が多数つけられており、階段の段差が大きいので、普通の山道に比べると必要以上にひざの屈伸を強いられ足が疲れます。
ことに下りでは着地の衝撃が蓄積して膝を痛めるので、脚力の弱い方は注意が要ります。一部足場の悪い場所では階段も有難いものですが、それ以外では山登りにはおせっかいではないかと思えます。
登山道は杉檜の林道を行くが、沢を横切るときだけは植生が変わり気分も変わる。
山の南斜面は植林帯ですから登山道もほとんどが杉檜の人工林の中を進みます。最初は楽な傾斜ですが沢沿いにマタタビの木がある辺から傾斜がキツくなってきます。
途中で3箇所の小溪を横切ります。普段はどれも殆ど水量がなく問題有りませんが梅雨時など増水のあるときはそれなりの注意が必要です。
道には案内が多く、傾斜には至るところに階段が有り迷う心配はない。急な岩場にも階段か付いている。
案内標識によると麓から山頂まで1800m程度です。頑張れば一時間もあれば楽に山頂に立てますが路程の殆どが杉、檜の人工林であるため前半は単調な登りになります。
マタタビの半白葉が目立つ渓を過ぎる辺りから、標高を稼ぐにしたがって広葉樹も目立つようになって周りの風景を楽しめるようになりますが、東に見晴らしの効く岩場を超えると再び植林帯に入り、登山口から50分程で山頂から東に向かう稜線に出て、福徳側(東コース)からの尾根道と合流します。
植林帯を抜けると福徳からの尾根道と出会う。此処にはベンチがあって休憩に丁度よい。
山頂直下の尾根道にあるベンチで小休止して山頂に向かいますが巨大な花崗岩の岩塊が突出した山だけに此処からの登り200mはかなりの急登です。
稜線上のベンチより山頂まで200m。最後の登りが結構キツイ。
山頂手前まで登ると、東に見晴らしが開け屋根のある休憩所が現れます。ここを素通りして山頂を巻くように南面から上に向かうと、クマザザの茂る加太からの登山道と合流し山頂に到着します。
休憩所の背後より山頂へ。手前で加太ルートと合流して山頂につく。
周囲に高い山がないために360度の視界が楽しめ、東には伊勢湾、北には鈴鹿山系、南には経ヶ峰から青山高原に至る布引山系を眺望できます。また山頂は蝶の通り道にあたり、春から夏場にはアゲハ、タテハ、ヒョウモン、マダラチヨウ、セセリなどさまざまな蝶に出会うことができます。
東口
第二のコースは下の垣内橋渡って右手に折れ、安濃川を150mほど下り錫杖岳より流れ出る割谷を渡ると渓沿いに錫杖ヶ岳へ至る登山口の案内板があります。
割谷は、錫杖岳の東部稜線上で最も低い鞍部より南斜面をほぼ南北に安濃川(河内谷)の分岐点まで流れ下る谷筋で、途中で西側に間谷を分流します。
谷の入り口付近では黒色系の苦鉄質深成岩の路頭を見ることが出来る。
殊に安濃川より割谷の分岐する一帯では割谷が苦鉄質岩のベルトを横切るため谷の転石には白色系の花崗岩と黒色系の苦鉄質岩が混在しています。
この谷沿いの道は山麓で伐採した木材を搬出するためにつけられた林道で、集材の際には整備されて車でも入り込むことができますが、普段は放置されて荒れています。
登山路入り口は林道の左手にある。
林道を十分ほと進むと道の尽きる少し手前に、左手の山腹へ入り込む登山道の入口の案内標識があります。道の傍らにあるので気をつけないと見落とします。そのまま進むとすぐ小滝にぶつかります。
登山道に入りると、山頂から東に伸びる尾根筋に上り詰めるまでは杉と檜の薄暗い林間を進みます。途中このルートでは唯一の水場で花崗岩の露岩上を流れる小さな沢(間谷)を渡ります。長雨の後などは露岩上一面に水流があふれ、滑りやすくなっています。
割谷より別れる間谷の細流を横切ると、後は東西稜線迄杉檜の植林帯を行く
これ以降は稜線上に出るまで植相の変化にとぼしい人工林を行き、登山口より40分ほどで山頂と小雀の頭を結ぶ尾根の最低部475mに出ます。
尾根の鞍部で福徳よりのルート(写真奥)と合流する。ここは東西稜線の最低部。稜線を挟んで右と左で植生が別れる。
東西に伸びる尾根に出ると錫杖岳に向かって、右側関町側の斜面は椎、樫、楓、桜、椿、馬酔木など落葉樹と照葉樹が混在する林となり、これまで上ってきた杉檜の林とは好対照を成します。
尾根上の登道は杉檜の根が剥き出しの急傾斜が続き山頂まで標高差200mを詰めて行きます。
標識や目印も至る所にある。何処へいっても思うのだが石や木の幹にやたらペンキを塗りまくるのは如何なものか。景観も削ぐし個人所有の山だって多いはずだ。
ピークを越え、下之垣内への分岐点より20分ほど尾根を登ると、林間の笹の間にしつらえられたベンチが現れベンチの麓で本法寺よりの道と合流します。ここから山頂まで標高差は約80m。急傾斜ですが歩行距離200m程を残すまでとなります。
柚之木峠
落合集落手前より柚ノ木越線を北畑集落の外れ迄進み、人家と林道の境界あたりで我賀浦川を左岸に渡渉して柚之木峠より下る谷伝いに柚之木峠をへて加太側ルートに合流して山頂へ至るものです。
車は下ノ垣内橋手前の駐車場か落合集落前の駐車場が利用できます。
北畑集落の人家が切れ、柚之木越線に植林帯が始まる辺りで右手の川を対岸に渡渉します。橋はありませんが増水していなけれは特に問題なく渡ることができます。
柚之木峠へと向かう登山道の入り口の前には地蔵を祀った祠が有るので良い目印になります。この道は柚之木越線が出来るまでは加太・向井と北畑・落合を結ぶ古道として使われていたようです。
峠から流れ下る小沢沿いに植林帯を進み、植林帯が夏緑広葉樹の疎林に変わるあたりから主に広葉樹林帯の端を抜けて柚之木峠へと至ります。道は分かりづらいですが、時折目印が有るのでよく注意してゆけば問題ないでしょう。