よく似た名で北アルプスには峻険なことで知られる2000m級の錫杖岳が有ります。こちらは山岳登山経験者でもなければ登頂が難しい山なのに対し、錫杖ヶ岳は休日に足が向けば気楽に登りにゆける楽しい山です。
芸濃側の麓には安濃ダム湖畔に造られた公園やレストラン湖水荘があり家族連れで訪れやすいことから、津市周辺に存在する山のうちでは経ヶ峰と並び最も親しまれている山の一つでしょう。
特にダム湖畔には多数の駐車場があり、多人数のグループで訪れても駐車の心配をする必要のないことから、錫杖湖の登山者も多くがこの安濃ダムよりのコースを利用するようです。
下之垣内東の谷の転石には、白っぽい酸性深成岩(花崗岩)と黒っぽい塩基性深成岩(斑レイ岩、閃緑岩)が半々で見られる。
これらの基盤岩は3000万年前ころからアジア大陸東縁に大量に湧出したスポット的なマントル流の拡張に伴って日本海の形成と拡大が行われ、日本の基盤岩は拡張するマントルの流れによって移動して1500万年前ころには現在の日本列島の位置に落ち着いたと考えられています。
この頃すでに現在の山脈の多くは陸上にあリましたがその標高は低く、錫丈ヶ岳北部の名阪関トンネルの辺りなども当時の堆積岩層で覆われています。
急速に隆起したのは100万年前以降で、フィリピン海プレートと太平洋プレートの沈み込みに伴う圧縮の応力場によって山脈が持ち上げられたものですが、この力は現在も継続しています。
東陵線上の小雀の頭の西面より眺めた山頂。東西稜線下の南斜面は杉檜の単相林が占める。
山容
山頂から山の東西に沿って主尾根が走り、その尾根筋が、津市(芸濃町)と亀山市(関町)の区画線となっています。南の芸濃側山腹は、麓の錫杖湖に至るまで、その殆どが杉と檜の人工林で占められています。
これとは対照的に、関側の主尾根北麓は、稜線から名阪国道に至るかなりの部分が樫、椎、楓といった広葉樹の自然林です。
山頂は蝶の通り道になっているようで、麓から風に乗っていろんな種類の蝶が飛んできます。
遮るものが無い山頂付近では色々な蝶を見かける。風に乗って尾根を越えてゆくもの、付近の草木で羽を休めるもの様々だ。
登山路の周辺では四季折々の花が咲きます。これはどの山でも言えますが登山道の環境の変化が多様であるほどに多くの種類の花が見つかります。
加太コースのところにも載せましたが、花の種類は広葉樹の多い西斜面に多く見られるようです。
若葉が芽吹く季節は本当に美しい。これは2005年5月2日の加太側コース南西稜の様子。
登山コース
山には主な4本の登山道があって、そのうちの二本は芸濃側、錫杖湖畔(ダム湖)の下の垣内より山頂に至るルートです。他の一本は関側の加太より、最後の一本は名阪関インター麓より福徳を経て、主尾根より北東に伸びる尾根筋をへて主尾根伝いに山頂に至るものです。
以下のサブページに簡単な案内があります。
よく利用されるのは1、2の芸濃側「下之垣内橋」よりの二つのルートです。錫杖湖畔の一帯が安濃ダム建設後、観光地として整備されており登山道の道標もはっきりしていて迷う心配がありません。
ただこれらのコースは山復の南斜面を登るため鈴鹿の多くの山の例にもれずその殆どが杉檜の単層林の中に付けられた林道を行くもので周囲の変化に乏しいコースです。
加太側のルートは登山道の変化に富んでおり、四季の変化を最も良く感じることの出来るものです。コースも自然に配慮してよく管理されています。
福徳側のコースは錫杖岳から東に伸びる陵線が副尾根となって北に伸びる尾根伝いに登るもので関インターから徒歩で登るのに適しています。
ただし登山口から山頂まで5km程の距離があり他のコースの二倍近い時間を要します。また登山口の近くには駐車場がありませんから縦走を楽しむ方向きでしょうか。尾根筋を行きますからコースの眺めもそれなりに楽しめます。