池ヶ谷登山口は小岐須キャンプ場の少し下手にある。上の大石橋の手前には普通車数台が駐車可能な小さい駐車スペースがある。
小岐須渓谷の小岐須キャンプ場より入道ヶ岳西斜面を源とする池ヶ谷沿いに山頂に至るコースです。最初の数分は主に杉の植林帯を進みますが、それ以降はヤブツバキ等の常緑広葉樹と落葉樹の混成林を進み、避難小屋の手前で谷と合流して以降は開けた夏緑広葉樹林帯を行くため杉や檜の林道の持つ単調な閉塞感から開放されます。
谷が深く滝が多いためP7の手前まで谷の左岸に切られた巻き道(P1~P4迄は左岸上部をP5~P7迄は左岸山腹を大迂回する)を進みますがP5の避難小屋から上部は直接谷の右岸を遡ることも可能です。
これ以降小滝が連続して谷を駆け上がるため、谷沿いに踏み跡は有りませんが、難路を厭わなければどの滝も左岸から高巻きできます。滝の眺めを楽しみながら遡ると時間が掛かっても疲れを忘れさせてくれます。
P7以降の夏緑広葉樹の明るい林を沢沿いに辿る道は展望こそ利きませんが傾斜もなだらかで景色もよく、谷沿いのコース中でも指折りのルートではないかと思います。時折ミソサザエが沢に現れて美しい鳴き声を聴かせてくれます。
私には入道ヶ岳の数ある登山コースのうちでも大好きな道です。
登山口P1は小岐須キャンプ場手前の御幣林道沿いにあります。登山口標高370m、山頂906m迄の標高差536m、水平距離2.5kmとすると平均斜度12°で最もキツイのは、P5~P6に至る巻き道の山腹登攀路でしょう。
駐車は小岐須山の家の隣にある無料駐車場を利用する。野登登山口、滝ヶ谷登山口もここにある。
キャンプ場の駐車場(大石橋の先)
登山道入り口のすぐ先にある空き地(数台程度)
車は小岐須山の家に隣接する駐車場に止めるか、大石橋まで車を乗り入れその先の駐車場を利用するか、大石橋たもとの空き地に駐車します。
ただし、大石橋(登山道入り口の少し先)までの道は狭くて対向出来る場所が僅かしかありませんので足慣らしに下の駐車場から歩く(15分程)のも楽しいものです。
ことに小岐須の谷が美しい春や秋には渓谷沿いに登山口まで歩いてゆくことを勧めます。林道の途中には大理石の浸蝕崖が美しい屏風岩があります。登山口の手前辺りまで林道周辺の岩には結晶化石灰岩(大理石)の露頭が多いため岩を割ってみると内部が大変美しいことに驚きます。
小岐須谷上流より屏風岩を望む。白い岩は石灰岩(大理石)の露頭。谷の両崖も石灰岩からなる。
屏風岩の手前には、石灰岩の岩盤の内部から湧き出る水場があり、天然の湧水として地元ではよく知られている様子で、近くの民宿や料亭からも水汲みに来ていることがあります。
たいへん美しい岩清水なのだけれど、水汲み場の様子が今ひとつ情ない。この少し先に池ヶ谷登山口P1標識がある。
林道の先には大石橋の向こうにキャンプ場がある。駐車場はこの先100mほど。
ここから少し歩くと大石橋を渡った先に屏風岩キャンプ場があります。池が谷の登山口は大石橋の手前、恩幣林道右手より通じる角の尖った砂泥質変成岩のガレが積もった林道です。
林道山側に池ヶ谷登山口の分岐
登山口から暫くは、谷上部の尾根の北西斜面に切られたトラバース道で、暫くは杉の植林帯の中を抜けてゆきます。時折尾根上部より谷へと下る沢を渡りますがP1~P3の手前辺りまでは、谷筋は林道の遙か下を流れており、殆ど瀬音も聞かれません。
P2辺りまで杉の植林帯を行く。山腹を横切って着られた道は、滑落の危険が高い場所もあり要注意。
日当たりの悪い北西斜面であるためか、植林帯はP2辺りから疎らになり、ヤブツバキ等の照葉樹が多い山腹を歩くようになります。
P3を過ぎた辺りから、それまで左手遙か下にあった谷は、滝によって急速に高度を上げ登山道とおなじ高さまで上昇してきます。
P3の先で谷の右岸に渡り、P4迄の間瀬音を右に聞きながら谷筋を遡る。
登山道が谷と交差する点で沢を左に二度渡り、池ヶ谷の右岸へと出ます。この辺りから谷は小滝の連続となり、高度の上昇も早いので登りがきつくなります。
炭焼き窯跡の横を抜け、右下に瀬音を聞きながら暫く登るとU字谷の上部に巨大な岩が挟まって下の谷にトンネルを造ったくぐり岩に出ます。P4標識はこの直ぐ先にあります。
くぐり岩の前後は大小の滝が連続し谷の高度が急速に上がる。
くぐり岩の直ぐ先にP4がある。この先の滝を巻くため、黒い堆積岩塊中に白い石灰岩がよく目立つ場所から鎖場となり少し急登する。
鎖場を登った先に、立派な避難小屋があります。この小屋の周囲は渓も美しく、休息するにはうってつけのポイントです。
早春、まだほとんど花のない時期にも滝の周囲の湿った岩のあちこちに、ハナネコノメソウの小群が可愛い花をつけます。
小屋から先は渓の傾斜がきつく、大小の滝が連続します。谷伝いに登ることもできますが幾つか落差の大きい滝があるため超えるのに苦労します。
小屋以降のルートは谷から離れて尾根上に登る。谷は小滝の連続で直接遡上するのはかなりしんどい。
このため登山路は谷を大きく右に迂回して、一旦谷から遠ざかる形でP5へ向かい、谷の左岸上部に発達した尾根に登って高度を稼ぎ、P6にいたって再び谷に接近するルートをとります。
小屋からP5を経てP6に至る間に、谷の高度の多くを稼ぐため、小屋からP6への登りがコース全体を通して最もきつい場所と言えます。
巻き道は楢、楓等の落葉高木の樹間に照葉樹の低木が茂る急傾斜の山腹を行き特にP5~P6に至る九十九折のあたりが最もしんどい。
頑張ってP6 まで登り詰めると、尾根中腹から南の稜線上を南北に平坦な道が拓かれており、左に向かうと先ほどの池ヶ谷へと戻って山頂へ至る登山路で、右(南)に向かうと滝ヶ谷道のP4へと連絡します。
巻道の途中にあるP6。ここから右に進むと滝ガ谷へ抜けられますが林間を分ける道なき道
ここを南に下ると、じきに大きな椿の木の下からルートを東に取って、南陵から伸びる副尾根へと下り、最後は杉林を抜けて滝ヶ谷道へ出ますが、獣道に近いところもあり安易に歩ける道ではありません。
山頂へはルートを左に取ります。ここまでしんどい思いで高度を稼いだ甲斐があってP6から谷上部へと戻る道は、僅かな下りですから鼻歌まじりに進めます。
ただし山腹に切られた道は細く、滑落すればかなりの距離滑り落ちる場所が多いので足元には要注意です。P6より10分程進むと再び左手下方より先ほど別れた池ヶ谷の流れが上がってきます。
谷の手前の炭焼き窯跡。以前はこの一帯に大規模な炭焼き基地があったらしい。
谷へと下り、炭焼き窯跡の先で谷を横切るとP7の通報ポイント標識があります。この辺りからは谷の傾斜が一気に緩くなり、山頂手前のP10まで谷の分岐もありませんから、ルートにこだわらず溪沿いに気ままに進んでも、まず迷う心配はないと思います。
巻き道を取らずに滝を眺めながら直接谷を遡ることも可能ですが、落差のある滝が多く厳しい高巻きを強いられます。登山路以外歩いたことがないと言った方にはまず勧められません。
滝の連続する渓沿いに登るのは心地よいものだが、落差のある滝も多く急傾斜で簡単には越えられない。
P7以降は落葉喬木の茂る林間を谷筋にそって進みます。この谷はP8辺りの高度まで谷の水が豊かで落葉の季節には渓の水面に青空が映えて美しいものです。
P9前後の杉林を抜ければ笹の下生えが広がる山頂部となる。ここから頂上まではわずかの距離だ。
登りの傾斜が緩やかなため、P8からP9へと歩みも捗ります。このルートには山頂手前のP9前後で突然杉の林が登場します。
高度900mを超える樗クラスの植生域にまで針葉樹を植林しだしたのは戦後の植林政策によるようですが、決して好ましい事とは思えません。
過去に日本全土を覆っていた自然林はすでに有史時代の始めころにはあらかた切り倒されて代償植生の自然へと代わり、平地部で自然植生のままの森が残された場所は殆どありません。
嘗ては鈴鹿山脈の上部は言うに及ばず日本の山地の多くがミズナラブナクラス域の自然植生で覆い尽くされていたはずです。しかし人の登場と火を使う文化の発達で、ブナクラスの森の多くも切り倒され代償植物に変わっています。
けれども鈴鹿の山でも人の入りにくい山頂部や尾根筋の一部に現在でも有史以前の森の原型をとどめた場所が点在します。山好きの一人としては、このような場所が、少しでも長く保存されることを願わずに入られません。