イワクラ尾根は入道ヶ岳山頂西部の最高点P915より西北西に鈴鹿山脈稜線(県境尾根)へと延びる水平距離約2km程の尾根を言います。
カシミール3Dによる雲母峰西部よりの展望撮影より加工させていただきました。
水沢岳山腹より見た県境尾根からイワクラ尾根を経て入道ヶ岳へ至るルート。中央部崩落の激しい谷が本谷、その背後が奥の沢(イワクラ谷)その上部にはかすかに仏岩が見える。
この尾根には県境尾根に至る登山道以外にも、尾根の鞍部にイワクラ尾根を分水嶺とする谷沿いに幾つか登山道が分岐しておりイワクラ尾根を経由する登山道は複数存在しますが、一般には水沢峠より県境尾根でイワクラ尾根分岐に至り、其処からイワクラ尾根伝いに山頂へと達するコースを指すようです。
このコースですと、起点は宮妻峡キャンプ場若しくは少し上流側のカズラ谷登山路の駐車場になるでしょう。帰路は宮妻新道をとって下るとすれば宮妻峡キャンプ場の駐車場を起点とするのが便利です。
ただし宮妻新道は最後に宮妻谷を渡渉しますから増水時は極めて危険です。豪雨後などはコースの選択に十分な注意が必要です。
水沢峠への登山口は宮妻峡キャンプ場から谷沿いの林道を40分ほど西に辿ったところにあります。
その少し手前に中谷に架かる不動の滝があります。そのすぐ先で中谷を跨ぐ不動橋、さらに宮妻谷に架かる橋を過ぎて林道が大きく左右に屈曲した先が水沢峠への入り口です。
25000の地図には本谷沿いのルートが記されていますが堰堤工事の影響でか現在ではルートが無いようです。
宮妻谷に架かる橋を渡り右カーブを越えれば水沢峠登山口。ここから峠まで1時間程の距離。
登山口から10分程で小尾根のトラバース道を経て水沢峠を分水嶺とする本谷の右岸上部に至ります。
ここからは林道(旧炭焼き道)を辿り、窯跡の有る杉林を抜け、枯れ沢風の枝谷を幾つか横切る頃には、本谷から分岐して水沢峠を分水嶺とする枝谷が高度を増してきて、その谷筋を辿るようになります。
本谷の左岸を下る沢を横切ると炭焼き釜跡のある杉林に入る。曾てこの辺りを覆っていた広葉樹は薪炭材に切られたのだろう。
峠には、向かって左が仙ガ岳側より、右は鎌ヶ岳側より鈴鹿山脈中南部の主稜線が走っており、鈴鹿山脈の縦走路となっていますから、はっきりした踏跡があり迷う心配はありません。
この稜線を挟んで三重県と滋賀県が県境を接するため県境尾根と呼ばれていますが、入道ヶ岳へはこの尾根を左へ取ります。ヒカゲノカズラの下生えが茂る低木林の間を縫ってすぐに尾根のピーク(930m)へ出ます。尾根上部へ出るに従いイワクラ尾根から入道ヶ岳方面の展望がきくようになります。
イワクラ尾根と県境尾根を分水嶺とするイワクラ谷にはアカヤシオが多く、4月末の開花時期には沢山の美しい花を見ることができます。
イワクラ谷に咲くミツバツツジとアカヤシオ、コブシも花を添える
P930の辺りから入道ヶ岳方面の展望が開ける。本谷に向かって崩落する尾根筋に沿って登山路がある。
尾根上部の宮妻峡側は本谷とイワクラ谷に向かって大規模な崩落が起きており赤土むき出しの状態で痛々しいものですが、この結果東方面に入道ヶ岳を望むパノラマが得られているのは皮肉なものです。
イワクラ尾根への分岐まで来ると、鈴鹿市の行政管理区分に入り、通報ポイントP1の案内標識が有りますから、これ以降は標識に従って進めば安心です。
イワクラ尾根分岐。此処からイワクラ谷(奥の沢)のコルまでは下り坂。P2標識を過ぎた辺りから急勾配で降下する。
イワクラ尾根の左には宮妻峡側の谷が、右には小岐須渓谷の谷が別れて尾根を分水嶺とし、これらの谷より尾根の最初の鞍部(通報ポイントP3)には左右よりイワクラ谷登山路と大岩谷登山路が、次の鞍部には右手より松の木谷登山路が接します。
尾根の高低差は県境尾根分岐点よりイワクラ谷分岐のコル迄が110m、松の木谷分岐のコルからP915の山頂迄が150m程度です。
イワカガミの多い尾根道は良く踏まれていて迷う心配はない。P2からの下りはイワクラ谷と大岩谷の分水嶺となる鞍部P3で終わり、ここからは仏岩へ向けての登りとなる。
874mの尾根ピークは、2つの鞍部の間の西寄りにあり、ピークの北側にはイワクラ尾根の由来となる磐座・仏岩があります。仏岩は三角錐状の見事な造形を持つ花崗岩岩塊で古代の山岳信仰の対象として今に至っています。
切り欠いた様に鮮やかな三角形をした仏岩(磐座)
この先起伏の緩いピークの上を快調に進むとP4があり、この案内板の前が重ね岩です。重ね岩は花崗岩体が断層面に沿って割砕されたような岩体の集合で、どことなく古代の巨石墳墓を想像させるようなところがあります。
P4より変化の多い下りとなる。P5から松ノ木谷分岐までの下りは険しく、尾根筋の岩体をかわすため右手に鎖場の巻き道がある。
P5よりの下りを降り切った鞍部右手(南側)の谷が小岐須峡の大石橋へと流れる松ノ木谷。右は尾根上部より見た松ノ木谷
P5よりの下り終わった地点が尾根の最低鞍部(775m)で右手(南側)より松ノ木谷のルートが合流します。その後915mの最高点、奥宮までの高度差110mの急登となります。
松ノ木谷分岐以降は10分程急登路が続く。ルートの周辺はツツジの低木が覆い、粘板岩や頁岩のザレで覆われた道は足場も悪い。
コルからの水平距離は約550mですから平均斜度は11°程度ですがコルの直後で高度50m程を一気に登るため、疲れた足には結構きついルートです。
此処を頑張ってP6迄登れは、傾斜も緩やかとなり笹の下生えと馬酔木の低木が茂る山頂部に踏み込みます。後は馬酔木の林をぬって踏み跡について歩めば自然と奥宮のあるP915の山頂に到着しています。