登山道は小神武谷川の枝谷沿いに、植林された杉の林間を進みますが渓が間近を走るため人工林に有りがちな退屈さから解放されます。春から夏場にはオオルリの澄んだ囀りがよくひびきます。杉の山は巨木が多く、風通しが良いために苔むした林間は夏場でも涼しく感じられます。
登山道の保守も森林組合の手で行われており、どの時期に登ってもコースは無駄のない状態で非常によく整備され、山を良く知った方々の手が入っているのが分かります。
杉の林道を10分程登ると柚之木峠に出ます。ここは錫杖岳より延びる東西の稜線上に当たるため、峠からは南麓への眺望が広がります。峠を下ると芸濃側の河内谷北畑へ出ます。木陰に休憩用のベンチも据えられており小休止するのに良い場所です。
ここからルートが東に折れ東西に走る稜線上をしばらく登ると再び植林された杉檜の林間を進みます。日当たりの良い尾根の右斜面(南側)は植林帯ですが暫く進むにつれて植林帯は姿を消し桜や樫、楢などの落葉広葉樹林に入りますから、林間の風景も一気に華やかになります。
植林帯が切れる当たりで錫杖ヶ岳山頂西面に対する眺望が開け、700mに満たない低山とは思えない山容が一望できます。
この山は先端の鋭い形状からも想像できる様に鎌ヶ岳などと同じく一億年近く前に領家花崗岩の貫入によって形成されたものです。
貫入した周囲の岩はジュラ紀のアジア大陸東縁の沈み込み帯で形成された複雑な堆積岩の集合からなる付加体ですが、現在は侵食されて山上には存在しません。
少し行くと休憩用のベンチがあります。ベンチの背後には水楢や樫の茂る西斜面の森が開けてい広葉樹の茂る一帯は休憩するのに良い穏やかな雰囲気があります。
西面の尾根斜面は落葉広葉樹が多い。秋には色とりどりに紅葉する。
この辺りから山の尖頭を形成する岩塊に取り付く形となり登りが急になってきます。笹生えの落葉林を一気に抜けると稜線上の岩場の登りとなり、高さを稼ぐに連れて周囲の見晴らしがどんどん開けてきます。
山頂部西稜線上の登りには何箇所か鎖場がある。コースからの展望も素晴らしい。
芸濃側のコースと決定的に違うのはコース上からの眺めが圧倒的に良いことで、西から南側斜面の眺めはどの季節に登ってもそれぞれに美しいものです。
山頂間近のコース脇には四季折々に花が楽しめるスポットが幾つかありますので、気をつけて登ると楽しめます。岩場を登りつめると山頂直下の笹林の道となりそれを抜ければ、右下からの芸濃側登路と合流して山頂に到着します。