風力発電にも難題

2011-9 風力発電にも難題

原発事故の後,自然エネルギーを利用する種々の発電が注目を集めた.マスコミから伝わってくるのは主に太陽光と風力である.

九州大学の研究グループは,比較的弱い風で回転する風レンズ風車を考案し,太陽光パネルと組み合わせた発電設備を使って博多湾で洋上風力発電の実証実験を始めた.

そのような報道に会い,太陽光発電,風力発電が中心になって脱原発は軌道に乗りかけていると思っていたら風力発電はバラ色ではないらしい.風力発電は風の強さに大きく依存し,弱い場合の不足分を補うため,火力発電を稼動させる必要があるとのことである.

そのことを理由に電力会社が電力の買取りをしぶっているというから釈然としない.政治が決めても,電力会社が「うん」と言わない姿勢は,九州電力の「やらせメール問題」の居直りで経験済みである.せっかく風力発電装置を設置したのに電気を買ってもらえなくて困っている自治体や団体があるらしい.火力発電所の比重の少ない東北地方が特に問題になっている.全国の送電網が一元的に管理されていれば,平均化できるはずであるが,実現は簡単ではないようだ.

送電分離が前菅首相を降ろすきっかけになったという意見がある.既存権益を守る電力会社,分離を進めたい勢力,その間に介在するいろいろな力,簡単には実現しそうにないというのが結論のようだ.

送電会社を分離設立すべきであるという主張の意味が何となく理解できたと思っていたら,発電,送電,配電の三つに分離する必要があるという意見があるとのことである.

原発が定期検査に入るのは当たり前だが,すべてが停止する事態が生じるのは納得がいかない.そのようにならないように原発増設をしてきたはずである.自分たちの不備は棚にあげて簡単に節電を要求する.仕方ないではないかという態度があちこちに認められる.

大学発の風レンズ風車が,掛け声だけに終わらないことを願っている.(2011/12/21)

参考資料

風レンズ風車の開発 - 九州大学 流体科学研究室

「風レンズ風車」の実験開始=福岡市〔地域〕|asahi.com(朝日新聞社)