連日の原発事故ニュースの中で、自然放射能程度だから安全と言いながら、出荷制限、 摂取制限などの言葉が飛び交っている。別の情報を求めてテレビのチャンネルを変えると、そこでも同じようなことを言っている。一般市民は、新聞、テレビ情 報に加えてインターネット情報に振り回されていると言っても過言ではない。 報道番組では、司会者が専門家(学者、専門解説員)に尋ねる場面が多く、極端な内容の質問を度々聞かされる。気を引くための発言と思うが、視聴者はそれ だけで不安になっているのではないだろうか。番組の司会者やコメンテーターがそれなりに理解しているとかなり印象が異なるのではないだろうか。恐らく打ち 合わせはしていると思うが、予備知識なしで初めて聞いた時の顔つきや言動は与える影響が大きい。それなりに理解して別の意見も存在することを踏まえて対応 してもらいたいものである。
原発の状況説明も納得がいかない。セシウム137やヨウ素131は自然界には存在しない。ウラン235の核分裂によってのみ生じるが、低濃度ウランはセ ラミック状の固形燃料ペレットとして金属容器中に密閉されているため、分裂後も外界に出ることはない。それが遠く離れた農場や海で検出されているのだか ら、原発で起きてはならない密閉容器の破壊が起きていることは確実である。ところが、報道では「可能性がある」としか言っていない。
視覚的に検証することができない場合、客観的なエビデンスに基づいて結論を出すのは科学では当たり前のことである。本当のことを言うと混乱を招くため、多様な解釈ができるような表現にしているのかもしれないが、かえって混乱を招くことに繋がることを銘記すべきである。
注)
ウラン238は安定であるが、ウラン235は核分裂の連鎖反応をおこす。
セシウム137は、ウランの核分裂によって人工的に作られる、半減期は30.07年の放射性同位体である。
ヨウ素131は同様に核分裂によって生成する。半減期は8.1日で、崩壊(ベータ)し半減期11.8日のキセノン(131mXe)となる。
(2011/3/25)