2011-34

計画停電と医療

相次ぐ原発の停止のため,政府 は,関西電力に対し10%以上の節電目標を提示した.電力の融通をあてにしていた中国電力も問題が発生したためである.ストレステストや九電やらせメール 等も電力の需給バランスを崩す要因となった.計画停電は現在のところ,東電が主であるが,状況によっては他の電力会社に飛び火する可能性は否定できない.

このような計画を作る際,政策担当者はどのようなシミュレーションを行っているのだろうか.

東電の計画停電の場合,信号が消えたため交通事故が発生し,負傷者が病院に運ばれたが,停電でレントゲンが撮れなかったそうである.医療機関の多くは電子カルテのシステムが使えないため,休診や手書きで対応せざるをえなかったと報道されている.

「細かいことまでシミュレーションしていたら,計画停電なって不可能だよ」と聞こえてくるような気がする.

それにしてもお粗末である.平成11年度から,一部の例外を除きすべての医療機関(病院,診療所,薬局)はオンラインによるレセプトの請求が義務づけられることになった.

地域医療を支える小さな医院の医師は高年齢で新システムに対応できない場合も多い.彼らが「義務化なら廃業」と反発の声をあげたため,それに押されて見直しがなされた.その医師達は,今「年寄りの言うことに間違いはない」と言っているような気がする.

それにしても,先行した政策との整合性がとれない状況が立て続けに起こっている.停電対策システムやデータのバックアップシステムが整備されていない現状ではデジタルとアナログは共存すべき時代かもしれない.

情報教育を推進してきた者として,デジタル化の問題点のひとつとして停電対策は教えてきたが.このような想定外の事態は考えたことはなかった.

追記

医療情報のデジタル化を否定するものではない.むしろ推進すべきと思っている.その理由は,オンライン化により,業務の効率化ばかりでなく,診療報酬改定の際,迅速・正確な政策議論が可能になること,また各地域の患者・疾患の実態把握,生活習慣病の発症や重症化の防止や保健指導などに役立てることなどが期待できる.紙資源の節約は言うまでもない.(H23/7/21)