2011-67

「青田刈り」になってしまった「青田買い」

「意味を間違えやすい言葉」を集めた ホームページがある.その中に「青田買い」と「青田刈り」が紹介されている.

卒業前の学生に対し、企業が早い時期から採用内定を出すことを「青田買い」と言い,「青田刈り」は、昔の軍事作戦の一つで、敵が兵糧不足になるように、敵地のまだ青い田を刈り取ってしまうことを 指している.

したがって,「青田刈り」の言葉を誤って使うと、まだ実る前の役に立たない学生を採用するという意味になってしまうことになる.

ところで,現実はどうなっているか一般の人は知っているだろうか.

大学教育では,一定の基礎教育の後,自分で問題点を掘り起こしそれを解決する能力を醸成するための教育として卒業研究が準備されている.3年後期に就職が 決まれば4年次は卒業研究に専念できるはずである.しかし,実際は就職活動が延々と続き,卒論研究は形式的になってしまっているといっても過言ではない. それに加えて,低学年からの就職試験を想定した常識ペーパーテスト,面接対応テスト等で本来の勉強ができないと言っている学生も多い.一方,就職活動がイ ンターネットを利用する形態に変化して久しいが,このことが混乱の一因になっている.採用する側はインターネット上にホームページを開設し,企業紹介やエ ントリーの窓口を作っている.学生は次から次にネット上を駆け巡り取りあえずエントリーしなければならない.採用側はエントリーさせることで第一次書類選 考的に門前払いができるそうである.ホームページを設置し運用するための費用はかなりの額にのぼるので,中小企業には負担になる.そのため,ホームページ を持たない会社には,大企業に就職できない人材が回って来ないわけである.

卒業論文のテーマももらっていない学生が就職試験対策を受けて表面上は対応できても,経験豊富な人事担当者はその未熟さを見破るはずである.採用側が無 駄と思いながらもそれでよいと思っているとは到底思えない.行事化してしまった就活をこのあたりで見直す必要があるのではと思っていたら,1月8日の NHKニュースで対策を講じる旨を報じていた.

以前も同様なことがあったが,何の役にも立っていない.


・1952年 学生の学業専念が阻害されるため,企業と学校と間で採用開始時期を決定

一方で就職協定を破って抜け駆けで優秀な学生を採用する企業が続出し,このことを「青田買い」と呼んだ.

・1996年に企業と大学・短大の間の就職協定は廃止

・1997年以降は企業側と学校側が独自の基準を策定して行動

それ以降,年々就職活動は早まり,以前は就職活動は4年制大学では4年次の夏休み以降であったが,現在では3年次の秋から始まるのが普通になった.


NHKの熊本県内ニュース(1/12 )によると60%の県内企業が早過ぎるとアンケートに回答したそうである.

(平成23年1月9日)