大学教職員の削減

2011-6

大学教職員の削減

増税を前に,「自ら身を切れ」,「公務員を減らすことが先決」という意見がマスコミで蔓延している.自分が経験した大学(九州大学,熊本大学)ではどうだったろうかと四十数年を振り返ってみた.

公用車,守衛,電話交換,和文タイプ,ボイラー,授業料係,作業員,電工,木工,ガラス細工,動物舎,集会所,学内郵便配達,清掃,赤外線分光測定,質量分析計,核磁気共鳴装置等の人員などが減員の対象になってきた.

昔は高額な測定機器が導入されると技官が付いていた.最近は,多くの機器がコンピュータ支援方式にになりユーザーインターフェースが進歩したため,講習を受ければ誰でも容易に測定することができる.そのため専属の測定要員が必要な機器は非常に少なくなった.

熊大では医学部と薬学部の事務が統合し会計係は医学部に移り統合された.庶務の一部と学務は学部内容・立地依存のため残っているようである.附属図書館は本館人事で2名の事務員が居て,夜間開館の要求に応えるために学生バイトが採用されている.

外注する分野も多くなった.警備,清掃,ガラス細工等はその典型である.分離キャンパスの場合,全学会議はタクシーを利用することになっている.外注のための予算が当初予算から減額されるため,研究室の初期の予算は微々たるものになってしまう.

このように,時代の変化につれ,かなりの数の事務員,作業員の職が未補充政策(定年まで待つて補充しない)で消えていった.ところが科学技術の進歩と細分化で研究室は二倍以上になり,全体的には減ってはいないと言っても過言ではない.

実際には,かなり前に計画された聖域ない定員削減が割り振られている.そのため,各学部に数年毎に削減がやってくる.機械的に割り振るため,ある年は0.3人といった具合である.累計で1.0になったら一名削減する必要がある.そのため研究室は教授,助教授,助手の三人体制がくずれ,二人で教育研究をやらなければならない欠陥研究室が生じることになる.どこが貧乏くじを引くかということになるが議論しても解決しないので,順番が決まっていて,それを念頭に教育研究の体制を考えることになる.

私の場合は助教授が薬草園に移ったため定年前の2年間は助手と2人体制であった.定年と同時に助手と共に新設私大へ移ったため,長年の整理や引越し研究室を空にする必要があり定年の行事?は何もできなかった.

欠陥研究室?では,大学院の院生が助手の役割をしているところも多い.そのような実情を勘案して院生には指導手当が支給されていると思っていたらそうでもないらしい.私の研究室に所属していた院生で学部学生の卒論指導の手当をもらっていた院生が,指導していた4年生と位相が合わず,指導できなかったため振り込まれた手当を返却したいと申し出てきたことがあった.教員二人体制で合成化学の外に情報処理学の講義や実習(それに加えてキャンパスネットワークの管理運営)を担当していたので,院生の協力は必須であり,そのような研究室の学生に重点的に指導手当を出すべきであるのに実際は均等配分を行っていた. ほとんどの院生は当たり前のように機械的にもらっているようであり,学会参加費用程度にはなると言っていた.

私立大学へ移って事務員が少ないのに驚いた.二人ですべてをこなしていた.その弊害もあり研究室立ち上げ予算の消化状況の把握等ができず不公平な結果をもたらした.事務員が少ない分,教員の仕事が増える.私は,私大では4年間学科長を務めたが,国立大の学部長秘書,事務長,学務係長的な仕事,それに加えて数多くの入試,高等学校への対応(国立では経験できない重要な仕事)等が要求された,

国立大学法人と私立大学を比較すると,国立大学法人の事務員の数はまだ多いように感じるが大学院生の数を考えると単純には比較できない.急速な少子化を考えると大学院の拠点化を進めた方がよいと思うがいかがだろうか.(2011/12/25)

追記 薬学部と医学部の事務統合で合理化が進んでいるような記載をしたが,事務員の数は一時減ったが現在は統合前とほとんど変わらないとの連絡をもらった.それなりの理由があるようである.