戦前の薬剤師卒後教育

父の持ち物の中に,卒業証書等に混じって講習證書があった.

昭和17年に熊本県薬剤師会が行った薬学講習の修了證書である.

当時の熊本薬学専門学校の教授陣が下記の学科を担当している.

消毒法,試薬調製法,無機化学総論,衛生化学,生薬学.植物化学,鉱物分析学,化学技術総論

九州薬学専門学校を大正14年に卒業しているから,卒後17年目の卒後教育である. 講師の中には,新制大学になってからも教鞭をとった先生方の氏名が見うけられたいへん興味深い.化学技術総論担当の藤田穆先生は熊大薬学部退官後,第一薬 科大学の学長を務めた方であり,有機概念図を考え出した学者でもある.戦前は薬剤師が医療従事者であるという考えはなく,薬を原料から調製することが仕事 であったことを考えると講習の内容が理解できる.現在は軽視されている学科目であるが,これらの知識を医療面で応用するには薬学を修めた者でないと不可能と言っても過言ではない重要な領域であることは今も変わらない.

(2011/7/8)


追記

藤田 穆先生について

官立熊本薬学専門学校 校長(1942年3月31日 - 1951年3月31日)

新制熊本大学薬学部 初代学部長

父から聞いた話

父が開業していた薬局に藤田先生が寄られた際,店先に「ちり紙」が置いてあるのをみて,「薬局でちり紙を売るとは」と言って帰られたそうである.大学人の立場と街角薬剤師の生活とのズレと言えよう.

藤田 穆先生の論文

大正12年の薬学雑誌に掲載されたアネモニン酸に関する論文である.薬学の分野では朝比奈,藤田の時代があった.

画像データをGoogleドキュメントに変換にした際,OCRで文字変換されたページが1ページ毎に挿入されている.

110003668091Fujita.pdf