2011-35

薬学部旧4年制課程+修士課程出身者の実力

来年4月,6年制課程の1期生が薬剤師国家試験を受験し新世代の薬剤師が誕生する.

現在,卒業研究の完成に向けて日夜頑張っているはずであるが,聞こえてくるのは国家試験対策のことばかりである.このままでは4年制課程の私立大学で見られた卒業研究の時間を国家試験対策ゼミに充てていたのと同じである.

そのようなことなら,4年制課程+修士課程出身者の方がベターではないかと思うようになった.

私は合成化学,しかも指導原理にフロンティア軌道論を用いてきた.卒業研究はその線にそったものであり.修士課程の論文では計算科学を含んだ内容を要求してきた.そのような知識を習得しても薬剤師には役に立たないと言われそうであるが,まったくそのようなことはない.

修士課程で習得した論文を読む能力,問題点を見い出し解決する能力,論文を纏める能力,プレゼンテーション能力は研究テーマの内容に関係なく醸成されるものである.

私の研究室出身者で実家が薬局のため,製薬会社や病院勤めの後,現在は調剤薬局を経営している修士課程出身者2名から,薬局業務の中で勉強したことを発表する機会があったということで論文を届けてくれた.

J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)では以下のリンクで抄録を見ることができる.

発表資料1 薬局,病気と薬 パーフェクトBOOK2009 精神疾患 気分障害(うつ病・躁うつ病)

発表資料2 更年期と加齢のヘルスケア,更年期女性の胃腸症状についての検討—薬局ドラッグストア店頭にて簡略更年期指数との関連において

旧4年制課程の教育は化学系に偏り,医学的知識が希薄であったと言うことで,6年制へ移行した.しかし6年制が完成年度を迎えるにあたり,旧4年制課程の薬剤師をはるかに凌駕する能力を持った薬剤師の卵が育っているだろうか.

即戦力を目標にコアカリキュラムにそって高度の教育を行ったとしても,最終目標として国家試験突破のための詰め込み教育を実施する限り,創造性などは醸成されない.現に6年制実務実習を引き受けた側の人達も同じことを言っている.

上記の例に限らず,薬学の基礎学を修得し,さらに修士課程へ進学し研究に従事した者は,医療現場における諸問題は自分で気付き解決できるわけである.

極論になるが,現行の4+2修了者は薬剤師国家試験を受けることはできないが,修士論文合格後薬剤師として働くことのできるシステムを作ってもよいのではないだろうか.(H23/7/17)