Q1)
バッキーの形が好きなんですが、自分の持っているFE83-Solの口径に合わせサイズを縮小する事って可能ですか?
また逆にFE168EΣ等、16cmユニット用に拡大はどうでしょうか?
A)
結論を先に言うとバックロードホーンの仕組みを少しでもご存じの方なら、そんな物は絶対に作りません。
口径が10cmのエンクロージャーを8cmユニットに対応させる例を解説してみます。
「直径10cmを8cmにするんだから構成するパーツをそれぞれ2割減らしら良いんじゃないの」と思っている方が多いのでは無いでしょうか?
バックロードホーンの設計において肝となる要素は「スロート断面積」と「空気室容量」です。
この数値を導き出すのに必要なデーターはスピーカーユニットの「有効振動板半径」です。
FOSTEXの場合、口径が10cmの有効振動板半径は4cm、口径が8cmの有効振動板半径は3cm。
以上からそれぞれの「有効振動板面積」を計算すると、口径が10cmの場合は50.24平方センチメートル、口径が8cmの場合は28.26平方センチメートル。
仮に二つのユニットの「Q0(共振先鋭度)」が同じだとしたら、(実は99%ありえない)「スロート断面積」や「空気室容量」を含めて縮小率はこの有効振動板面積に比例した大きさで無ければダメな訳です。
過去にこの比率でサイズダウンを設計してみましたら、ユニットが空気室に収まらない事が判明しました。
「スロート断面積」を求める計算式
(有効振動板面積)=(有効振動板半径)×(有効振動板半径)×3.14
(スロート断面積)=(有効振動板面積)×「Q0(共振先鋭度)に対する係数」
「Q0(共振先鋭度)に対する係数」は、Q0の値が0.2以下なら80%~100% 0.3~0.2は70%~85% 0.3以上は75%以下
「空気室容量」を求める計算式
(空気室容量)=10×(スロート断面積)/(クロスオーバー周波数)
(クロスオーバー周波数)は概ね200Hz付近にするのが良いとされています。
じゃ逆に10cmを16cmに拡大したら???と言う事になりますが、今度はスロート断面積が小さすぎて、ホーンの効果が期待できないばかりか、空気室内がエアースプリング状態となり、中低音の歪が確実に拡大します。
更に「Q0(共振先鋭度)」まで考慮したたら、なおさらです。
似た様な形を設計する事は可能ですが、現存する設計図をそのまま縮小・拡大は100パーセント不可能です。
真夜中の暇な時間に任せてバッキーをFE168EΣサイズに拡大した場合を計算してみました。
こちらも「Q0(共振先鋭度)」が同じと仮定して乗数を無視する事にします。
FE168EΣの「有効振動板半径」は6cmですから、「有効振動板面積」は113平方センチメートルになります。
10cmが50.24平方センチメートルですから体積比で2倍以上のサイズになる計算です。
オリジナルサイズのDー10バッキーで、一本約8kgですから、板厚の増加も考えれば軽く倍以上の重さになります。
これってアリだと思いますか?
今は長岡氏・炭山氏らが設計した図面が書籍等で簡単に手に入ります。
それぞれ口径の違ったエンクロージャーの設計図が多数あるのに、わざわざ面倒な計算をし板厚を合わせ縮小版・拡大版を造る暇があっあら、バックロードホーンの事をもっと勉強して貰ったほうがどれ程良いか・・・。
もし仮にスピーカーユニットの諸元を無視して有名機の縮小拡大をしたバックロードホーンエンクロージャーが存在したとしたら、
それはもはやスピーカーではありません。
ホーンは役目をはたしていないし、ロードは全くかからないし・・・。。
それは「バックロードホーンの形をした置物」と言っても言い過ぎでは無いと思います。
そんな物、存在しないと願いたいですが・・・。