※開口部が後方にあるバックロードホーンの是非

スーパースワンに代表される開口部が後方にあるバックロードホーンにはどんな特徴があるのでしょうか?

まずメリットからお話ししてみましょう。


バックロードホーンは開口部からスピーカーユニットの最低共振周波数(F0)より低い周波数をスピーカーユニットの諸元に合ったスロート断面積と空気室容量を要して拾い出し、開口部から放出する仕組みのスピーカーシステムです。

その際、最低共振周波数(F0)より高い周波数は音道内で吸収・拡散されて開口部から出ないまたは大幅に減衰している必要があります。

もしこの周波数帯が開口部から出てしまうと、スピーカーシステムからの直接音と干渉し「位相歪」の要因となってしまいます。

この「位相歪」とは正相では音が大きくなり、逆相では音が消えてしまう厄介な現象です。

2.0mの音道長の場合を例にすると、85Hz,255Hz,425Hzが正相、170Hz,340Hz,510Hzが逆相にと言う様に周波数の違いで正相と逆相が交互に現れます。

開口部が後方、またはスピーカーユニットから離れた位置に設けられているバックロードホーンは、仮に中音成分が開口部から漏れていたとしても「位相歪」が出にくい特徴があり比較的バランスの取れた物が多い様です。


では逆にディメリットにはどんな事があるのでしょう。

第一に低域の音像定位が曖昧な事です。

オーケストラや一般的な楽曲のほとんどはドラム等の低音楽器は中央に配置されているため特に違和感なく聴く事ができますが、ジャズ等で良く見るドラムがサイドに配置されていたりツインドラムを採用した演奏の場合は可笑しな現象が現れます。

バスドラムは中央付近で、ハイハットはサイドで演奏している様な音像が現れ「はたして何人で演奏しているの?」ってな感覚になってしまいます。

そして二つ目のディメリットは低域が背面から回り込んで聴こえるために、音圧自体も反射する壁等に吸収・拡散され柔らかな印象に聴こえる事で、この事は多くの方が経験しているはずです。

しかしこの二つとも聴き比べてみて初めて実感する方が多い様で、なかなか周知されていない事ではないかと感じます。


開口部が前面か背面か・・・、それぞれ一長一短がありますが、試作・計測・調整を繰り返して造られた前面開口型のバックロードホーンは、最大の特長「点音源」の恩恵を受けられ、音像定位はステージの奥行きまで感じる事が出来る素晴らしいスピーカーシステムで有る事は間違いありません。