バックロードホーン型スピーカーの性能

以前、「バックロードホーンの原理」でご説明した通り、バックロードホーンは空気室内にある程度の密閉度を造って振動板にロード(負荷)を掛け、スピーカーユニットの最低共振周波数(F0)より低い周波数を拾い出す仕組みのエンクロージャーです。

と言う事で、バックロードホーン型スピーカーの性能試験の最重要点は、最低共振周波数(F0)より低い周波数がリスニングポイントで聞こえているかどうかと言っても過言では無いと思います。

では測定にはどんな機材が必要なのでしょうか?

一般的には高性能なマイクに周波数を発生させる周波数ジェネレータ、更には結果を表示するスペクトルアナライザ等が必要になりますが、ホビーレベルで揃えるにはかなり無理があります。

そこでお勧めするのはスマホによる簡易測定です。

必要な機材はお手元のスマホに周波数測定アプリ、そして音源になるCD又はPCが繋がっている場合はYouTubeにも「周波数スイープ」の動画が配信されていますのでご利用いただけます。

以前YouTubeでは低域と高域がデジタルフィルタリングされていて30Hz~16kHzまでしか再生できないと言うお話をしましたが、現在では20Hz→20kHzの周波数スイープが再現できる仕様に変わったと言う事で十分に測定用として使用可能となりました。(下図 周波数特性計測グラフ)

YouTube 20Hz→20kHz周波数スイープ https://www.youtube.com/watch?v=Y5vS13JQ2uQ

(上部 赤ラインが測定結果  下部 黒ラインは無音時のノイズ)

スマホのマイクの性能等、性能にはかなりの差が出るのは致し方ないですが、30~40Hz程度までが測れれば十分に参考にはなります。

測定方法やお勧めのアプリは下記にURLを載せていますので、参考にされては如何でしょう。

設計が真面であれば、スピーカーユニットの最低共振周波数(F0)より低い周波数が開口部から放出されているはずです。

もし出ていなければ、振動板にロード(負荷)が掛かっていない事を意味し、バックロードホーンとは呼べないエンクロージャーと言って間違いは無いでしょう。

バックロードホーンをお持ちの方は、是非測定を試して頂いて、実力を確認してみては如何でしょう。


尚、私の出品している全てのバックロードホーンエンクロージャーは、試作段階で何度も周波数特性の測定を行い製品に仕上げた物です。

(WaveSpectra及びWaveGeneを導入。20Hz~20KHz対応のUSBコンデンサーマイクで測定)

また、スピーカー試聴コーナーで配信している音源は、スピーカーの間隔が1mで直角二等辺三角形の長辺とし、左右それぞれのマイクに正対する角度で設置しPCM録音したもので、部屋で起こる残響や定在波の影響を極力減らす効果を狙っています。

iPhoneやAndroidスマホアプリで簡単オーディオチェック

おすすめの周波数測定アプリ


追記 「あぁ・・・勘違い!!!」

空気室容量やスロート断面積が適正値から外れると、振動板にロード(負荷)が掛からず、スピーカーユニットの最低共振周波数(F0)より低い周波数が得られないと言う説明をしましたが、駄作のエンクロージャーでも意外な勘違いが発生する場合があります。

それは開口部から放出される音が、スピーカーユニットからの直接音とたまたま同位相になり、低域の音量が増えた事による勘違いです。

逆位相なら音が消えたり小さくなったりするので出来損ないと判断できますが、同位相の場合はあたかもバックロードホーンのおかげで低域の改善が見られたと判断してしまいます。

しかし実際は最低共振周波数(F0)近くの曖昧な低域が大きく聞こえるだけで、F0より低い周波数が再現されているのでは無いのです。

試作段階で極端に適正値を外した物と聴き比べると、低域は元気に聞こえますが籠った低音がうるさく感じるだけで、長くは聴いていられません。

その勘違いを見破る手段としても、周波数特性を測定する事は最良の手段となりますので、是非試してみて下さい。