※何故スピーカーユニットの特性がエンクロージャー選びに必要なのか?

何故スピーカーユニットの特性がエンクロージャー選びに必要なのか?

それはユニット特性が、背面から吐き出される音が音道(ホーン)に送り出される喉元の広さ(スロート断面積)と深く関わっているからです。

効率の優れたQ0(共振先鋭度)が0.1と言うユニットが有ったとしたら(スロート断面積=ユニットの振動板面積)が成立しますが、Q0が大きくなる(効率が悪くなる)に従ってスロート断面積をどれくらい絞れば良いかの目安があるんです。

これはロウソクを吹き消す時の口の大きさとよく似ています。

肺活量が大きい人は「ハ~」でも消せますが、肺活量が小さい子供などは唇をすぼめて「フ~」としないと火は消せません。

大体の目安はQ0の値が0.2以下なら80%~100% 0.3~0.2は70%~85% 0.3以上は75%以下とQ0値が大きくなればユニットの振動板面積に対するスロート断面積を小さくしなければダメなのです。

出品されているバックロードホーンエンクロージャーの中には明らかに空気室容量やスロート断面積が大きすぎると思われる物が幾つか見受けられます。

またほとんどの量産機は、複数のスピーカーユニットに対応させるためだとは思うのですが、中間の80%程度を基準にスロート断面積を決めている物がほとんどの様です。

これは故長岡氏の著書の影響が大きいのかも知れません。

お手持ちのユニットの特性が設定値と大きく離れていた場合、ユニットその物の性能を十分生かし切れていないばかりか、音として成立しない事も起こりえます。

FOSTEXのユニットを例にあげると、現行10cmフラッグシップFE108EシグマのQo値は0.3。

この場合スロート断面積はユニットの振動板面積の80%でほぼ合っていますが、Qo値が0.46のFE103NVや0.53のP1000Kではスロート断面積はとにかく大きすぎます。

ちなみに空気室容量はスロート断面積に比例する関係にあるので、概ね下記の様な現象が現れる可能性が大きいと思われます。

空気室容量とスロート断面積が適正値より大きい場合、ホーンが役目を果たさず土管の中で聞く様なリバーブの効きすぎた音だったりフワッとした軽い低音になりがちです。

逆に小さいとスピーカーユニット背面からの音がホーンに入りにくく、特に中低域の歪が増える傾向にあります。(空気室自体がエアースプリングに近い状態になりコーンの動きを抑制してしまう)

ほとんどの場合は前者ですが、この音をバックロードホーン特有の音と勘違いしている方が多いのも事実のようです。

「視聴リンクあり」と宣伝している出品者の方の中にも、本当のバックロードホーンの音をご存知ない様で、とんでもない土管音楽を配信されている方がおいででした。

良いスピーカーを作るには、スピーカーユニットの選定と試作・試聴が重要なカギになります。

また設計通りに出来上がっても実際に音を鳴らしてみないとデキの善し悪しが判らないのも、このスピーカーを作る上での難しさの一つです。

バックロードホーンエンクロージャーを選ぶ際は、口径だけでなくスピーカーユニットを指定して作成し、且つ作者が試聴し正確に評価している商品かどうかを確認する必要性を個人的に強く感じます。

また、スピーカーユニットを指定していても、空気室容量やスロート断面積・音道長等の記載がある商品を選ぶべきだと思います。

記載が有る事で正確に計算されて造られたと言う証の一つとなると同時に、数値から逆算して、それに合う別のスピーカーユニットを探す事も可能となります。

不明な場合は出品者に質問してみるのも良い方法だと思います。

スピーカーは真面な音が出て価値のある物。

「上手く鳴ってくれないスピーカーは、ごみ箱にもならない、ただの邪魔な置物だ」と言った辛口評論家が居たそうですが、辛口ではない私も全く同意見です。

話は変わりますが、ユーチューブで同じバックロードホーンエンクロージャーに複数のスピーカーユニットを付け替えて試聴している動画が公開されています。

「このエンクロージャーに合うユニットはどれ?」と言うスタンスでの公開であれば納得も出来ますが、何のコメントも無いまま公開されている以上、単にスピーカーユニットの優劣を評価する動画と思われている方がほとんどではないでしょうか?

スピーカーユニットの特性が、そのエンクロージャーに合ってなければ、良い音で鳴ってくれる事はありません。

私がそのスピーカーユニットの開発担当者だったら、間違いなくクレームを入れていた事でしょう。


また周波数特性のグラフを映しながら実しやかに解説をしている動画も配信されていますが、同じバックロードホーンエンクロージャーバッフル交換式にしたとしても、口径10cm20cmの両方に対応するスピーカーユニットは絶対にありません。

後にスロート断面積と空気室容量の求め方」説明しますが、同じ口径のユニットでもQ0(共振先鋭度)が違えばスロート断面積や空気室容量も変わる事をご存知無い様です。

実際に測定されている音はスピーカーユニットその物の音に薄い低音が乗ったもので、ある10cmユニットでは同位相と思われる200Hz~300Hzが重なる位相歪により、低域が強調されたかの様な印象を与えています。

原音と聞き比べると明らかに異質で、それを「原音より低音が豊か」などと表現しているのにはとにかく驚きました。


この様な方々が専門家気取りで動画を配信している事に憤りを感じます。

私のHPを訪ねて頂いた皆様は絶対に騙されないと思いますが・・・。