※バックロードホーンの原理


数限りなくあるスピーカーユニットにはそれぞれに最低共振周波数(F0)が記載されています。

これは別名「低域再生限界」と言って、これ以上低い周波数の音は出せないと言う数値です。

スピーカーユニット前面にある無限の空気に対し、振動板がいくら動いても波として伝えられない事を意味します。

スピーカーユニットの口径が大きくなれば、F0も下がり低い周波数まで空気を震わせる事が可能になります。

例えると手うちわでは、ほとんど風を感じる事が出来ませんが、扇子位の大きさになれば十分風を感じる事ができます。

バックロードホーンとは前面にある空気では無く、スピーカーユニット後部の限られた空間の空気を振動させ、ホーンの単一方向性・拡大効果 で豊かな低域特性を得る事が出来る仕組みのエンクロージャーなんです。

ここで言うバックロードホーンの「ロード」とはスピーカー振動板に負荷をかけると言う意味となります。

要するに空気に波を伝えるには、ある程度の密閉度が必要になる訳です。

次にお話しする空気室からの出口のスロート断面積とは、この密閉度を決める重要な要素となります。

スロート断面積が適正値より大きければロードがかかりにくく、ホーン内の空気に波を伝える量が激減します。

逆に小さすぎればロードをかける以前に、振動板の動きを抑制してしまいます。(エアースプリング状態)そこで狙うのは、エアースプリング状態になるギリギリのスロート断面積。

これをしっかり押さえれば、理論的には最低共振周波数(F0)が150Hzの数センチのユニットからでも20Hzを拾い出す事が可能なのです。

逆に言うと、このスロート断面積をいい加減に決めてしまった場合、後ろに続くホーンは何の意味も無くなり、単なる飾りだけならまだ良いですが、悪戯に定在波を増やしたり、共鳴や共振・位相歪等による癖の強い音を作り出してしまいます。

またスロート断面積と比例関係にある空気室容量は、大き過ぎれば振動板の動きが波として伝えにくくなります。

逆に小さいとエアースプリングのバネ定数を大きくしてしまい、振動板が動きにくくなります。

スピーカーユニットを限定し専用設計する意味は、バックロードホーンの原理を知ればご理解できるのではないでしょうか?

 

私の作るバックロードホーンエンクロージャーは、エアースプリング状態になるギリギリのスロート断面積を、Q0(共振先鋭度)値を基準に試作を行い、適正値を探った上に製作しています。

手間はかかりますが、スピーカーユニットの潜在能力を余す事無く引き出せた時の感動は、一度味わうと癖になってしまいそうです。