【レクチャー№21 環境論】において、
人の意識を取り巻く状況を、環境と定義し、
意識の内側を内環境、外側を外環境と名付けました。
外環境は、対人環境、社会環境、自然環境から成っています。
社会環境とは、家族関係から、親戚、学校、職場、各種集団、
近隣、地域、国、世界までの、すべての社会関係を言います。
それぞれの関係は、法律や契約、慣習によって、制約されています。
自分が主導権を取っていられる環境を、自己環境と呼びます。
【7.環境論】において、自己環境を、秩序思考によって制御する方法を
述べました。
社会環境においても、それぞれの関係に応じた秩序で、制御されることが必要です。
社会環境は、いくつかの集団の重なり合いから、ほとんどが出来ています。
それぞれの集団には、目的があります。
集団は、何らかの状況(原因)に対処するために、組まれたわけです。
ゆえに社会集団は、システムとして機能するのが、理想です。
【3.システムについて】で述べたように、
システムという言葉は、いくつかの方式が、相互に関連しあって、
物事を有益に変化させる、構造(装置)一体を指します。
システムは制御される必要があります。
システムの制御には、次の三つの機能が必要です。
(1)システムを、その作用の目的から外れないように導く。(リード)
(2)システムの存在を守る。(ガード)
(3)システムを修復する。(ヒール)
それらの機能が働くためには、統一した意志が必要ということになります。
そのシステムを活用したいもの(管理者)の、意志です。
以上のことから、システムを構築するときは、
はじめに明確なルールを作る。【(1)リード】
ルールを守るために、外れたものは排除できるようにする。【(2)ガード】
ルールから外れやすい部分は、修復できるようにする。【(3)ヒール】
このようなシステムが、たえず健全に機能した状態にあるのが、秩序です。
このレクチャーでは、社会環境のそれぞれの集団をシステムとして、
その秩序を構築する方法を、組織論として述べていきます。
社会集団のシステムには、ルールを作るものが(設計者)必要であり、
そのルールを守らせるもの(監督者)が必要であり、
そのルールを修復するもの(保全者)が必要であると述べました。
そのルールから外れるものは、罰せられるか、除外されます。
ルールは、法律、規則、契約、慣習(常識)によって作られます。
ルールは、明確化されていることが理想です。
そのためには、次の四つの観点から考えます。
ロジック・・・ルールには、一貫とした論理性が必要です。
システム・・・ルールには、水平軸、時間軸での応用性が必要です。
バランス・・・ルールは極論でなく、融通性が必要です。
シンプル・・・ルールは単純で、わかりやすいことが必要です。
そして、そこから導き出されたものを、定量化します。
定量化とは、ルールの許容範囲を決めることです。
定量化されれば、ルールは守られやすく、監督もされやすく、保全もされやすくなります。
次に重要なのが、監督者の監督範囲(濃度)であり、保全者の保全範囲(濃度)です。
システムを管理するには、経費、時間、技術が必要です。、
その社会集団のシステムに、どれほどの経費がつぎ込まれているかによって、
それぞれの範囲(濃度)は決まります。
また、監督者、保全者のそれぞれの能力、技術の高さによっても決まります。
当然、一人の監督者、保全者にとって、その範囲は狭いほうがよく、
濃度は濃いほうがよいわけです。
監督者や保全者の範囲が広い場合は、システムの管理はあいまいになります。
その場合は、その集団の構成員の自覚に頼らざるおえません。
自覚とは、各人の自発的な認識によって、ルールを尊重することです。
そのようにするためには、各人への十分な教育が必要であり、
ランダムな、サンプリング的な監督を行なって、統一性をはかります。
集団が大きくなれば、階層的に、監督者や保全者たちをさらに監督する監督者が
必要となります。
そのような重層集団を、組織と呼びます。
組織では、監督する範囲が多岐におよび、複雑化してしまいます。
ルールを作る設計者も、監督者も、保全者も、それぞれの権限を明確にして、
管理する領域を限定する必要があります。
小さな組織では、監督者が、設計者やや保全者を兼任する場合が多いのですが、
全体を通しての設計者や保全者と、範囲の決まっている監督者では、
その管理する領域が違うことが、十分把握されていなければいけません。
社会組織としては、企業の組織が代表的です。
企業は、いろいろな目的を持った部署が、ピラミッド型に集まって、
利益を上げるという、大きな目的を達成するように、組織化されています。
部署一つ一つが、小さなシステムであり、
それらが集まった部門も、また一つのシステムであり、
それらが集まって、大きなのシステムとなっています。
システムは、ものごとをなすのに、もっともムダがなく、ムリがなく、ムラのない
状態であることが、理想です。
ムダとは、時間や労力、経費などに余裕がありすぎること、
ムリとは、それらが不足して、歪みが発生すること、
ムラとは、余ったり、足りなかったり、バラつくことです。
企業は、企業間の競争の中にあるため、たえず発展する必要があります。
他の社会組織や集団より、システムのルール変更が頻繁です。
システムは、投入物を有益に変化させて放出する装置であると述べました。
ルールには、
システムが正常に、効率良く機能しているかの監視方法、
投入物が規定範囲内にあるか、放出物が規定範囲内にあるかの監視方法、
システムを機能させるエネルギーが、正常範囲にあるかの監視方法、
システムを機能させる操作方法
以上の四つの点があります。
ルールの変更は、以下の手順で行なわれます。
設計者が状況に合わせて、システムのルールを変えます。
監督者が、そのシステム上に発生した不具合を見ます。
保全者が、その不具合が再発しないように、システムを改善します。
改善しても、十分に効果がない場合は、監督者は、設計者にルール変更を見直すように
要求します。
監督者は、ルール変更後、および改善後、システム上に不具合が発生しないことを
確認します。
次に、監督者は、構成員にルールの変更を教育します。
指導を繰り返した後、それでもルールを破る構成員には、罰則が与えられます。
システムの安定は、維持されなければなりません。
システムの上に、劣化や欠陥が発生すれば、保全者は、すみやかに修復します。
企業には、たえず利益の追求があり、
利益の追求には、売上げを上げ、コストを下げる方法が有効であると
述べました。【10.企業論】
その目的を優先するあまり、それぞれの部署のシステム維持に、支障を生むことが
あります。
企業の利益追求の根本は、投資からの増幅回収です。
投資しても、かならず利益とともに回収できるとは限りません。
【14.商売論】で述べたように、投資にはギャンブル性があるためです。
しかし、投資は、企業にとっての第一条件であり、
システム維持も、増幅回収を確実にするためにの、投資であると考えて、
尊重しなければいけません。
企業でのシステムの監督者は、一般に上司と呼ばれます。
上司は、部署内での監督責任者であり、設計者、保全者との折衝をはかります。
このレクチャーでは、上司の役割について論じます。
上司は、構成員である部下が、
ルールを知っているかどうか、
ルールが守れるかどうか
ルールを守っているかどうかを、監督します。
ルールを知らなければ、教育します。
ルールが、システム上、守れない状況にあるのなら、
状況か、ルールを変更する必要が出てきます。
前に述べた、ルールの明確化を考慮して、以下のことのないようにします。
ルールが多すぎて、把握できない。
ルールが複雑にからみ合っている。
ルール同士が、矛盾している。
ルールが抽象的である、または大雑把すぎる。
ルールが細かく限定されすぎて、許容範囲が狭い。
ルールを知っており、守れる状況にありながら、部下が守らない場合は問題です。
以下に、その守らない理由と、その対策をあげます。
部下が、そのルールを守る能力がない・・・ルール自体をもっと簡単に守れるように
変えるか、部下を、その能力を得られるように、訓練する必要があります。
そのルールを守る気力がない・・・ルール自体をもっと簡単に守れるように
変えるか、守るべき強要性(罰則)を与える必要があります。
そのルールに反対である(納得していない)・・・ルールの必要性を理解させるか、
または反対理由を参考に、ルールを変える必要があります。
そのルールを守れない、または守らなくてよいと思い込んでいる・・・ルールの
必要性を理解させるか、守るべき強要性を与えます。
上司や組織に反抗的である・・・システム全体を理解させるか、
または守るべき強要性を与える必要があります。
上司か、または同僚の多くが守っていない・・・ルールの必要性を再検討する、
または他にかかわらず、守るべき強要性を与える必要があります。
以上のことから、次に、上司としての条件をあげます。
ルールを十分に把握していること。
ルールを尊重する意志があること。
ルールを破るものを、罰せれること。
システムにルールが適応しているか、たえず見直しが出来ること
企業において、監督者のトップ、または最上位の上司は社長です。
社長は、同時に、設計者のトップ、保全者のトップであるか、
または、彼らの監督者であり、企業の最高経営責任者です。
社長は、経営方針を立てます。
経営方針とは、社会状況にあわせた企業自体の変化の指針です。
【14.商売論】において、商売を成功させるポイントとして、
以下のことをあげました。
(1)商売が成り立つかどうかを予見出来ること、
(2)それに見合う投資が出来ること、
(3)宣伝、信用、利点、環境、快楽の五つの要素が効果的であること。
(1)は、企業にとって、社長の経営ビジョンと言えます。
その企業の持つ強み(Strength)を、展開する。
その企業の持つ弱み(Weakness)を、克服する。
その業界の発展性(Opportunity)に対応する。
その業界の、他社の脅威(Threat)に対応する。
(2)は、経営資源としての、資金、人材、技術を言います。
(3)は、企業の、独自の論理や信念にもとづいて、進められる戦略です。
知名度を上げることを優先する(宣伝)
信用度を上げることを優先する(信用)
独自性を優先する(利点)
企業イメージを優先する(環境)
社会との適応性を優先する(快楽)
以上の、経営ビジョン、経営資源、経営戦略の三方向から、
経営方針は決められます。
経営方針は、短、中、長期の計画を立てることで、具体化されます。
そして、その計画にもとづいて、システム全体と、そのルールが設計されます。
組織にとって、明確な方針・計画があるということは、そのシステムの、
維持(設計、監督、保全)を容易にし、秩序を保ちます。
最後に、公共社会の組織について論じます。
国家は、世界から、いろいろな国際法によって、規制されています。
そして国内は、憲法を頂点にした各種の法律や、地方自治体が発令する条例に、
よって規制されています。
それらのルールが違反されれば、監督者(司法権)によって罰せられます。
しかし、国家の場合は、その構成員である国民の数が、監督者より、
圧倒的に少ないため、監督は、サンプル的に、ランダムに行なわれます。
このような国家が秩序的であるためには、国民が、ルールを守る重要性を、
十分に認識している必要があります。
そしてそのためには、人々が、秩序を欲求する意識をもっている必要があります。
秩序欲求は、人の、他のいくつかの欲求がある程度、満たされていないと
発生しません。
国家(公共社会)での秩序とは、
生命の安全が守られていること、
基本的な自由(人権)が、守られていること、
財産が守られていること、
労働により、基本的な生活が維持されること、
納税により、公共組織が維持されること、
選挙により、法律などの見直しができること、
法律などの教育を受けることができることが、あげられます。
他者の権利を侵害すれば、自分の権利も侵害されるということが、
秩序の必要な、第一の理由です。
そして、秩序が保たれていれば、新たな問題が起こったときに、
すみやかに解決でき、または最悪の結果を防止でき、
社会の発展を促します。
これら国家の秩序が、他国から侵害される場合があります。
また、国際社会のルールを破ってしまう国には、罰則を与えなければいけません。
その結果、戦争ということになる可能性もあります。
戦争は、他国の秩序を破壊してしまう、もっとも避けるべきですが、
自国や世界の秩序を守るための、最終の手段です。
これを回避するためには、国際社会での秩序の構築に、
日頃から努力しておく必要があります。
自己環境の秩序の確立は、社会環境の秩序につながり、
社会の秩序は、国家の秩序を保ち、
やがてそれは、世界の秩序につながります。