外環境において、対人環境を次におおうのは、社会環境です。
社会環境とは、複数の人が所属している空間での、関連・関係のことです。
社会環境の、大きな要素である、企業について、ここで論じます。
企業とは、集団によって、利益を生む活動をするところのことです。
集団で利益を生むとは、
個人や少人数では、能力不足で出来ないことを、力を合わせて行う共同作業と、
個人や少人数では、手間がかかりすぎることを、まとめて早く行う分担作業によって、
効率良く、付加価値を生み出し、
それを、集団外に供給することによって、
代償を得ることです。
企業の働きは、基本的には、原材料を加工して、製品を生み出すことと、
需要のある分野に、それを供給することの二つに分けられます。
原材料を加工するには、原材料、燃料、設備・道具、労働力、方法、時間が、
必要です。
(1)原材料、燃料を仕入れる。
(2)設備・道具を準備する。
(3)労働力を用意して、方法を用いる。
(4)生産時間をかける。
以上によって、製品は生まれます。
製品を供給するにも、製品、設備・道具、燃料、労働力、方法、時間が、
必要です。
(1)製品を用意する。
(2)設備・道具を準備する。
(3)労働力を用意して、方法を用いる。
(4)需要のある分野を知り、その分野に、商品を知らせる。
(5)契約する。
(6)商品を運ぶ。
製品には、実体のないサービスや、情報、技術なども含まれます。
その場合には、製品の生産が、供給後、または供給と同時に行なわれることもあります。
次に、製品について、考察していきます。
製品は、三つの要素から出来ています。
品質、納期、コストです。
品質とは、需要者にとって、製品が持っている最低必要な条件のことです。
納期とは、需要者にとって、製品を手に入れたい最終時期のことです。
コストとは、需要者が、製品を手に入れたい最低価格のことです。
企業は、製品を、需要者の求める、最低の条件で、最終時期までに、
最低のコストで、生産するのが理想です。
品質(Q)、納期(D)、コスト(C)は、バランス関係にあります。
品質が上がれば、納期は遅れ、コストは上がります。
納期が早まれば、品質は下がり、コストは上がります。
コストが下がれば、品質は下がり、納期は遅れます。
品質、納期、コストのバランスラインを、生産能率(P)と言います。
P=1/(Q*C*D)
上で述べたバランス関係は、生産能率(P)が一定のとき、成り立ちます。
品質(Q)が最低の条件(小)で、納期(D)が最小の生産時間(小)で、
コスト(C)が最低(小)ならば、生産能率(P)は、最高(大)となります。
しかし、それぞれが、最低、最小であることは、現実には不可能です。
品質、納期、コスト、それぞれの要素に、ロスというものが存在します。
技術の開発などによって、ロスをへらすことが出来るならば、
生産能率を、さらに上げることが可能です。
たとえば、大量生産は、生産の準備(段取り)によるロスをへらして、
納期、コストのロスをへらすことが出来ます。
しかし、製品量(在庫)において、ロスを増やしてしまうことがあります。
次は、そのロスについて、考察します。
企業は、利益を生み出すことを目的とします。
利益を生み出すとは、基本的に、原材料に付加価値を付けて、製品とし、
その製品を、生産に要したコスト以上の価格で、販売することによって、
その差額を生むことであると述べました。
その利益を生もうとする活動を、阻害する方向にあるものが、
企業のロスです。
生産におけるロスには、
(1)原材料のムリ・ムダ・・・原材料の質が悪い、量が揃わない、値が高い。
(2)燃料のムリ・ムダ・・・燃料の質が悪い、量が揃わない、値が高い。
(3)設備のムリ・ムダ・・・性能が悪い、設備が多すぎる、高コスト(保全、減価償却)。
(4)労働力のムリ・ムダ・・・能力が劣る、人数が多い、人件費が高い。
(5)生産方法のムリ・ムダ・・・技術が劣る、方法が煩雑、段取りが多い、
高コスト(習得、開発費)。
製品におけるロスには、
(6)品質のムリ・ムダ・・・必要とされる品質より劣る、または過剰品質のロス。
(7)納期のムリ・ムダ・・・必要とされる納期に適合しないロス。
(8)コストのムリ・ムダ・・・計画されたコストよりかかる、または実際の価格が下がる。
作りすぎによる処分ロス
供給におけるロスには、
(9)供給設備・方法のムリ・ムダ・・・(3)、(5)と同じ。
(10)労働力のムリ・ムダ・・・(4)と同じ。
(11)需要調査のムリ・ムダ・・・調査能力が劣る、時期が合わない、高コスト。
(12)需要に対する宣伝、商品開発のムリ・ムダ・・・宣伝能力、開発能力が劣る、
時期が合わない、高コスト。
(13)契約によるムリ・ムダ・・・契約にかかるコスト、契約内容、タイミングのミス、
契約内容と、製品とのズレによって生まれる損失。
(14)製品保管・輸送によるムリ・ムダ・・・保管・輸送能力が劣る、時間ロス、高コスト。
以上の、14項目があります。
企業は、上の14項目に対して、管理が必要ということになリます。
すなわち、需要調査・宣伝の管理・・・【企画部】
新製品の研究・開発の管理・・・【開発部】
商品設計、品質、納期、コスト、供給量設定・・・【設計部】
原材料・燃料の仕入れ管理・・・【資材部】
生産、供給設備の改良・開発・保全管理・・・【設備部】
労働力の規則方法教育・維持管理・・・【人事部】
生産、供給の技術改良・開発・維持管理・・・【技術部】
契約による製品の品質の維持管理・・・【品質部】
契約による製品の納期、コストの維持管理・・・【生産管理部】
保管(在庫)・出荷、輸送の管理・・・【出荷部】
資金、売り上げ管理、経理事務・・・【経理部】
事務、庶務、法律関係・・・【業務部】
これらが、生産を行なう【生産部】、供給を行なう【営業部】を、
フォローする形で存在することが、理想です。
管理するとは、与えられた目的を、もっとも効率良く達成するために、
その状況(材料、設備、手段)の、最適なバランス(ムリ、ムダ、ムラのない)状態をつくり、
監視し、そのバランス範囲を状態が越えないように、それらを調整することです。
企業の組織は、生産、営業(供給)、管理の、三本柱からなります。
管理部は、維持コストのみかかり、直接利益を生まないため、重要視されませんが、
ロスを減らし、生産効率をあげる意味で、価値があります。
生産は商品を作り、営業は商品を売る、
管理は、生産・販売コストを下げて、企業を儲けさせるわけです。
次は、企業の存続を左右する、需要について述べます。
需要がなければ、供給により利益を生む企業は、成立できません。
需要は、その大きさ、位置、内容が、時間によって変化していきます。
企業は、たえず、需要の変化に対応していく必要があります。
需要を操作できることが可能ならば、企業として、非常に有利です。
需要とは、人の欲求が根本にあります。
人の欲求を、もう一度あげます。
快楽追求と不快苦回避の欲求があります。
休養追求――(生存本能)――疲労回避 『面倒なことを避けたい』
快楽追求――(種存本能)――不快回避 『快楽を得たい』
尊敬追求――(存在本能)――軽蔑回避 『自分の価値を認めたい』
満足追求――(達成欲求)――不満回避 『達成感を得たい』
安定追求――(秩序欲求)――不安回避 『安定感を得たい』
人は、状況に対応する動物です。
それらの欲求によって、個人から、その周辺と、たえず細かく対応され、
状況は変化して(改善されて)いきます。
その変化が有効であると、その情報は、社会全体に広がります。
以上の広がりは、自然に発生することもあれば、企業が意図的に行なうこともあります。
情報が、多くの個人の欲求を刺激して、社会全体に波及し、大きな需要となります。
需要は、ある程度の量の欲求の集まりと、それに対応する製品の供給が可能になったとき、
現実化します。
欲求は、本能が満たされていれば、発生しません。
疲労することがなければ、休養追求も疲労回避の欲求も起こりません。
また、容易に満たされることを覚えても、強い欲求は起こらなくなります。
欲求は、基本的に、生きることへの飢餓感から発生しているため、
飢餓感がともなわない状態では、起きにくいわけです。
人は、生きる楽しさ、豊かさ、安定を求めています。
それらがある程度、満たされた現代の日本の社会では、
強い欲求は起こりにくく、需要も活発化しにくい状態です。
そして、需要を支える人口も、減少しつつあります。
需要は、一般的な文化生活を維持するための【生活需要】と、
個人の嗜好、趣味的な欲求である【個別需要】、
時代の進歩によって、新しい生活スタイルを生み出そうとする【流行需要】があります。
【生活需要】は、需要が安定しているため、多くの企業が参入してきます。
そのために、供給過剰となりやすく、価格の低下が起こり、利益率が悪くなりがちです。
企業は、コストダウンを目指すか、
差別化して、【個別需要】や【流行需要】を刺激しようと、多様化、独創化します。
【個別需要】、または【流行需要】は、気まぐれで、その発生、増加が予想されにくく、
また、需要が増加すれば、企業が多く参入してきて、供給過剰となり、
一般化して定着すれば、やがて【生活需要】となってしまいます。
コストダウンは、過当競争⇒価格の低下⇒利益の減少⇒多売化⇒過当競争と、
商品価値を、さらに下げていってしまいます。
現代は、生産能力、開発能力、資源能力が、需要を、はるかに凌いでしまっている
状態なのです。
しかし需要は、減少化し、多様化していますが、なくなることはありません。
供給もまた、利益を得たいと言う需要と言えます。
物品・サービスを得ようとする需要と、金銭を得ようとする需要(供給)のバランスが、
崩れてしまっているのが、現代です。
需要が多く、供給が足りないと、そこに競争が発生します。
競争心が、欲求を高め、需要をさらに大きくします。
供給が多くなり、需要が減少しても、上で述べたように、競争が発生します。
そして、供給者と需要者の間にも、競争は存在します。
需要者は、出来るだけ安価に、供給者は、出来るだけ高価に、商品を売買したいからです。
市場には、必ず競争が存在します。
そして、供給者であり、需要者でもある企業は、市場を活動の場としているため、
たえず、競争の中に、身を置いているわけです。
企業が作り出した利益は、何に使われるのでしょうか?
それらは、企業がさらに成長するための、資金に使われるのが、一般的です。
設備・規模の拡大、管理の充実、製品の開発、貯蓄、投機に、使われます。
さらに、安定した、大きな利益を得るために、使われるわけです。
市場には、たえず競争があるため、成長のない企業は、いつか敗退してしまうのです。
競争に勝つためには、強い攻撃力、
強い防御力、
すばやい行動力、
的確な対応力、
正確な情報収集力の、五つの力が必要です。
そして、そのためには、相手の攻撃力を低下させ、
相手の防御の弱点を突き、
行動力を鈍らせ、
対応を誤らせ、
不正確な情報しか与えないことが、有効なわけです。
企業は、供給同士の競争、需要同士の競争、供給・需要間の競争に、
上の戦略をとる必要があります。
競争することなく、需要と供給が協調して、全体がバランスを保つような状況は、
作り出せないのでしょうか?
人以外の生物は、争いは起こしますが、自ら競争はしません。
競争とは、複数の相手に対して、それぞれの能力を想定し、
優位に立てるように能力を上げて、争いに挑むことです。
競争は、互いの研鑚を必要とします。
これは、人が状況に対応できるところから生まれた、人特有の争いの方法です。
人に達成欲求がある限り、競争は、いたるところで起こり、なくなることはありません。
達成欲求と、それより起こる競争は、人類の文明の発展に、かかせないものです。
過剰な達成欲求や、過当競争は、人の秩序欲求によって、ある程度、制御されます。
需要者が少ないということは、供給者も少ないということですが、
供給は、機械化によって、省人化が可能で、過剰ぎみになります。
供給過剰は、天然資源の乱費につながります。
需要は、品質のより良いもの、価格のより安いもの、納期の早いものを選び、
品質の劣るものもの、高価のもの、納期の遅いものは、淘汰されていきます。
需要は、耐久性のないものを次々に交換して、短期間で使うよりも、
耐久性のあるものを、長期間使う傾向になりつつあります。
または、リサイクルして使用できるものを、選ぶ傾向になりつつあります。
以上のことから、時代は、品質重視になってきていると言えます。
次に、その品質について、述べます。
需要が減少している現代では、品質が重視されます。
求められるのは、高品質でなく、良品質です。
企業が販売する製品は、三つの要素から出来ていると述べました。
品質と、コスト(価格)と、納期です。
需要者は多くの場合、製品を、品質→価格→納期の順で優先して、多くを選択します。
品質が必要条件より劣るものは、製品として認められません。
企業にとって、そのような製品を作ってしまうことが、現在では、一番大きなロスです。
作り直すことになれば、納期に、そして、破棄することになれば、コストにも損害を与えます。
価格の高いものは、値を下げることで、条件はかなえられます。
納期の遅れたものは、弁償することで、条件をかなえられることがあります。
製品は売れて、初めて価値がでることから、企業にとっては、
品質→納期→コストの順で、優先されます。
品質が劣る理由としては、
(1)現状の設備・技術などの限界を越えている。(契約の不備による)
設備、技術の限界内にあるのか、限界を越えているかの、見極めが難しいのが
ほとんどです。
(2)設備の劣化による。
設備は、長期間の使用により、磨耗(消耗)し、
また、材料、燃料、錆、埃などの付着により、劣化します。
清掃や、保全、修理には時間がかかり、その間、生産がストップしてしまうため、
放置されることが多く、劣化は、さらに進んでしまいます。
(3)燃料ムラによる。
設備を動かす、すべての動力を含みます。
メーターなどを目安にでき、この中では、管理しやすい項目です。
(4)原材料の不良による。
コストの安いものを原材料に使いたいために、品質にムラのあるものを、受け入れ
ざるおえないという面があり、対処に限界があります。
(5)人の作業ミスによる。
人の能率向上にともなう慣れが、思い込みを生んで、ミスを起こす場合が多く、
その二面性ゆえ、対処が難しいところがあります。
また、生産時間に追われたり、コスト感覚から、ミスを発生させることも多いものです。
生産だけでなく、契約ミスによるものも、含まれます。
(6)人の技術不足による。
設備や技術の改良や変化についていけず、引き起こされることが多く、
これも、対処の難しいところがあります。
(7)保管・輸送不良による。
保管・輸送は、時間の管理が主になり、目安のつけやすい項目です。、
以上の、7つがあります。
それらを防止するには、
【設備点検】、【燃料点検】、【作業点検】、が必要です。
【原材料検査】、【製品検査】が必要です。
点検とは、正常を示す値範囲を決め、測定値が、その範囲内にあることを、
確認することです。
検査とは、正常を示す規格範囲を決め、品質状況が、その範囲内にあることを、
確認することです。
点検、検査とも、確認時間や確認量を決めて、抜き打ちに行なわれます。
その頻度は、それぞれの不良などの発生量によって、決められます。
当然、点検・検査の結果が、正常範囲にない場合には、生産は停止され、
原因を追求されて、正常になるように対処されます。
再発が防止されるような対処が、理想です。
点検や検査は、生産活動ではないため、省略されがちですが、
上の(1)から(7)であげたような、工程に不安がある場合には、必要となります。
次に、企業論のまとめを述べます。
環境に、何らかの働きかけを行なうには、エネルギーと時間、場所、
そして方法が必要です。
企業は、環境に働きかけて、利益を生もうとします。
利益とは、個別で行うときに生じるロスを、集団で行なうことによって、なくし、
そのなくしたロスを、金銭として受け取ることです。
たとえば、個人で作るキャベツは、200円の経費がかかるとして、
企業で作れば、100円の経費でできるとすると、
企業が150円で売れば、個人も企業も50円ずつ、儲かるわけです。
利益を生み出すにも、エネルギーと時間、場所、方法が必要です。
エネルギーとは、原料や燃料などにかかる費用のことです。
時間は、従業員それぞれが費やす、人生の時間です。
場所は、設備です。
方法は、従業員の持っている、知識のことです。
企業は、開発、仕入れ、生産、宣伝、販売には、上にあげた、これらの資源を投入しますが、
管理部門には、直接利益を上げていないために、充分な投入をしません。
しかし、前に述べたように、いくつかのロスを最小限にするためには、管理部門は、
重要な働きをするわけです。
管理とは、点検・検査項目を設定し、それらを実施し、外れた場合は対処することです。
管理を必要とする、企業の不安定要素をなくすために、管理は必要です。
企業とは、人の社会生活のロスを減少させるという目的を持っている集団と言えます。
人の社会生活とは、人がそれぞれに持つ五つの欲求を満たすために、社会環境の中で、
多くの人と共同で暮らすことです。
資源を投入して、ロスを減らし、それを利益とする企業は、失敗すれば、さらにロスを
増やしてしまうリスクを、持ち続けています。
リスクと利益のバランスを、企業は、認識する必要があります。