01.想定論理
単純系とは、世の中の出来事や成り立ちを、簡単、明確、率直に説明しようとする
方式のことです。
完璧に、厳密に説明しようとするものではなく、あくまでも本質的に、要点としてとらえて
説明することを、目的とします。
そのためには、それに適応した論理が必要です。
論理とは、ある二つの物事が互いに関連しているとき、その関連を、もっとも単純な
原理の組み合わせで解いていく筋道のことです。
もっとも単純な原理とは、何でしょうか?
物事の関連は、以下の三つの原理に分けられます。
(1)所属の関係 (2)組み合わせの関係 (3)変化の関係
(1)所属の関係とは、例えば、「人間は哺乳類である(に属する)」というような、
物事の所属の範囲をあらわすものです。
所属の範囲は、言葉の定義によって限定されます。
二つの関係としては、AはBに属する、BはAに属する、AとBの一部分が共通する、
AとBは無関係である、の4パターンがあります。
(2)組み合わせの関係とは、ジグソーパズルのように、部分が集まって全体となる
関係です。部分の総和は全体になり、部分の重複も不足もありません。
(3)変化の関係とは、「風が吹けば、枝がゆれる」というような、ある物事に対して、
何かが付加する、または削除されて、別の形に、確率的に変化するということです。
A+α⇒B(またはA-α⇒B)
Aとαは原因となり、Bは結果となる、因果の関係とも言えます。
以上が、論理を構成する三つの基本原理です。
しかし私たちは日常の中で、その原理を正確に使うことが出来るでしょうか。
(1)所属の関係では、物事の言葉の定義を正確に知っているとは言えず、
(2)組み合わせの関係では、全体も部分も完全に把握してるとは言えず、
(3)変化の関係では、変化の法則の知識もなく、その確率も知らないのです。
これでは、正確な論理は使えません。
しかし私たちは現実、その状況で、論理を使わなくてはいけません。
そこで、考え出されたのが、想定論理という考え方です。
論理は、実験や調査によって、実証されます。
論理の三つの基本原理について見てみると、
(1)所属の関係においては、研究者によって、物事それ自体の特徴が調べられ、
そのものが限定できる最低の条件によって、定義されます。
(2)組み合わせの関係においては、分析者によって、物事の全体が分析され、
どのような部分から構成されているか、解明されます。
(3)変化の関係においては、実験者によって、物事の変化の確率のデータが
集められ、計算されます。
しかし私たちは、研究者でもなければ、分析者でも実験者でもありません。
物事の論理を実証している時間も手段も、十分に持っていません。
科学者は、論理を実証するために、厳密な実験や調査を行いますが、
私たち一般人は、それに代わって、経験や知識、常識感覚によって、
論理を実証するしかありません。
前者のように実証が確かなものを、確定論理、
後者のように実証に不確実さが残るものを、想定論理と呼びます。
想定論理が導くのは仮想の真実であり、真実とのズレは以下の五つのパターンが
あります。
Ⅰ.導き出された仮想が、真実の一部分でしかない。
(縮小解釈で、真実の全体が把握されていない)
Ⅱ.導き出された仮想の一部分が、真実である。
(拡大解釈で、仮想の可能性がしぼりきれていない)
Ⅲ.導き出された仮想の一部分が、真実の一部分である。
(解釈のズレで、仮想の可能性が別方向を向いている)
Ⅳ.導き出された仮想が、まったく真実ではない。
(解釈が、完全に間違っている)
Ⅴ.導き出された仮想が、真実そのものである。
(解釈が完全に正しい)
想定論理の実証が、個人意識に左右される、経験、知識、常識感覚にもとづくため、
その確かさに、不安定さが残るわけです。
想定論理の有効性を上げて、導き出された仮想の真実と、真実とのズレを少なくする
必要があります。
そのためには、以下のような五つの条件を設けます。
① 【二つの物事の関連において、論理を立てる根拠が、出来るだけ多くあること】
② 【その関連や、周辺状況において、立てた論理と矛盾が生じることがないこと】
③ 【論理が複雑化して、可能性の確率が低くなってしまわないこと】
④ 【基礎となる、経験、知識、常識感覚が、合理的であること】
⑤ 【以上の条件の状態を考慮して、導き出された結果が、どの程度の確かさにあるか
認識し、条件の変化に応じて、たえず軌道修正すること】
《 想定論理についての考え方を、以下にまとめます 》
単純系において、物事の成り立ちを、単純、明確に説明しようとする時、はじめに、
そのものを成り立たせている要素に分解、整理します。
成り立ちの何が知りたいかによって、分解される要素は違います。
そのものを限定している特徴、性質が知りたいのか?
例えば「人間とは何か」というような問いには、【所属の関係】の要素に分解します。
そのものを構成している部分、またはそのものが構成している全体を知りたいのか?
例えば「プログラムはどのように作られているか」という問いには、
【組み合わせの関係】の要素に分解します。
そのものの因果関係を知りたいのか?
例えば「なぜ壊れたか」という問いには、【変化の関係】の要素に分解します。
つぎに、それらの関係の要素が、高い確率で成り立つのかどうかの実証を、
経験、知識、常識感覚で総合判断します。
それらは、上に書いた五つの条件によって制限されるわけです。