【23.経営論】において、 以下のように述べました。
(1)経営者は、商品の価格を決定します。
すなわち、仕入れて売る時の、原価に上乗せする利益を決めることです。
それは、売上げ量を予測するということであり、
また、需要を活発化するように、努力することと言えます。
【需要・供給の量】
(2)経営者は、需要と供給の、いくつかの段階の速度を制御します。
すなわち、資本の回転率を、可能な限り早くして、供給量を増やし、
利益を増やすということです。
中途の製品のまま長く保たない、製品在庫を過剰に持たない、
開発商品に投資するなど、資金を遊ばせないようにします。
【需要・供給の速度】
(3)経営者は、リスクを管理します。
製品を供給し、利益を得るまでには、いくつかの不確かな要因が存在します。
その不確かさは、いろいろなロスを生み出し、そのロスは利益を侵します。
不確かさを管理して、確かなものとするということです。
【需要・供給の質】
経営者のすべき働きを、以上三つあげました。
このレクチャーでは、これらをふまえながら、
今まで述べてきた「企業論」「組織論」「商売論」「経営論」などを総括して、
「システム経営」として、経営の仕組み全体を論じていきます。
(1)の商品価格のの決定においては、
全体の需要量と供給量の予想が大きなポイントとなります。
需要量の予測とは、現在の量とその時間的変化を読むことです。
【10.企業論】において、
需要は、一般的な文化生活を維持するための[生活需要]と、
個人の嗜好、趣味的な欲求である[個別需要]、
時代の進歩によって、新しい生活スタイルを生み出そうとする[流行需要]
以上があると述べました。
これらはまた、次の二つに分類できます。
【必須需要】:その需要を満たさないと、生活が成り立たない、
または生活上の処置に困るもの。
【選択需要】:その需要を満たさなくても、代替が可能または、
生活に支障が出ないもの。
人は「慣れる動物」です。
便利な、楽なことには「容易に」慣れます。
不便な、苦痛を伴うことには「時間をかけて」慣れます。
しかし、その場合は、そこに大小のストレスを感じます。
上の【必須需要】は、満たされないとストレスが大のもの、
【選択需要】は、そのストレスが我慢できる程度のものと言うことが出来ます。
[個別需要]や[流行需要]においても、個人においてストレスが大なら、
【必須需要】となります。
同じ商品においても、その機能性で等級が生じ、
【必須需要】から【選択需要】と変化していきます。
これら【必須需要】と【選択需要】の判断は、その地域、時点での経済状況に
影響されます。
需要は、個人単位、家族単位、グループ単位、組織単位と様々ですが、
それぞれの経済力によって、違ってきます。
ストレスがいくつかあれば、より大きなストレスを重要視し、
他のストレスには構っていられなくなるでしょう。
すなわち需要とは、その時の社会の持っているストレスの状態と言うことが出来ます。
これらをふまえて、社会の動向を見て、その商品の需要を予測します。
未来予測は、【28.複雑系】において述べたように、
非常に難しい点があります。
ゆえに経営者は、それを予想する能力が重要ということになります。
需要に比べて、全体の供給量の予測はまだ容易です。
供給は、原材料・燃料、設備、労働力、方法によって可能となります。
それぞれの値段や投入量によって、その供給事業に、
どの程度の個人または企業の参入が可能か、おおよその予想はつきます。
原材料・燃料が、高価または入りにくいもの、
設備が大がかりで、設置費用が多大なもの、
労働力が集まらないもの、多く必要なもの、
新しい技術が必要なもの、またその技術の伝播の少ないものほど、
参入は難しくなります。
供給ルートが作りにくいもの、
リスクが大きすぎるもの、
利益が望みにくいもの、
需要の増加がないと思われているものなども、
参入は少なくなります。
これらの状況条件が逆のもの、またはその障害のとれたものは、
参入が容易ということであり、供給量が増すということです。
経営者は、現時点または将来の需要と供給量のバランスを読み、
その商品に価格を付けます。
利益が多く生み出される価格であるなら、その経営は発展し、
その逆であるなら、その経営は縮小します。
(2)は、需要と供給の速度の制御ということでした。
これは、現時点で持っている当方の供給量を、把握すると言うことです。
資本は、原材料・燃料の仕入れ費用、設備費用、人件費、運搬保存供給費用、
その他の経費に使われます。
それらの費用効果が、それぞれ最大になるよう分配されるのが理想です。
機械が止まっている、人が余っていることなどのないように、
バランスを取り、最大有効に資本が費やされているようにシステムを作ります。
そして、製品が作られ、商品として販売され、かけた資本がより早く戻ってくるのが
理想です。
すなわち、当方全体で可能な、時間当たりの供給量を把握します。
発注から代金の回収までの速度を最適にします。
在庫は、資本の回転を悪くしているように感じますが、
流動しているなら、供給速度を上げているとも言えます。
たとえば、在庫を持たないならば、
注文から原材料発注に1日、
原材料納入に3日、
加工、製品化に3日、
運搬に2日、
販売、代金回収に1日、
早くて合計10日かかるとして、
在庫があれば遅くても4日で済みます。
上の例では、注文が入るまで、資本が資金としてキープされていたということであり、
下の例は、注文が入るまで、商品としてキープされていたということです。
下の在庫を持つ方法は、資本を商品でキープすると言うリスクを持っています。
保管費用もかかり、商品の劣化もあります。
そして売れ残れば、全ての費用が無駄となります。
しかし需要者に対して、供給が早く、ビジネスチャンスを見逃さない、
まとめて製品を作れるという生産の効率性が良い、と言うメリットがあります。
使用範囲に応用がきく、原材料でキープすると言う、上の中間型もあります。
流動できる範囲で在庫を持つのが理想です。
設備の維持費や人件費、経費などは、商品の流通がなくてもかかります。
しかしそれらは、ある範囲、流通量に関係なく一定です。
すなわち、ある範囲で、流通量と利益は比例します。
100円の利益のものを100個売るより、80円の利益のものを130個売った方が、
儲かります。
商品の流通と利益を最効率にするため、商品価格を下げて、流通量を増やすという方法を
とることがあります。
いわゆる薄利多売という方式です。
この方式の問題点は、流通量が増えすぎて、供給量の限界を越えてしまうと、
納期が遅れたり、さらに経費がかかってしまうことがあるということです。
そして管理の十分でない、粗雑な製品が流れてしまうことがあります。
十分な供給量の把握が求められます。
供給量の把握には、発注から代金回収までの、各々の段階や工程の流動性に注意し、
最も流れの悪い部分に、焦点を合わせます。
とくに工程と工程の間の検査や運搬など、目に付きにくいところがネックになることが
往々にしてあります。
また、この方法は一般に、その業界に価格競争を引き起こし、
さらに値下げを引き起こすことになりがちです。
競争相手を、この業界から撤退させ、市場の占有率を上げるには効果があります。
企業において、いわゆる損益分岐点分析が多く行われます。
人件費、経費などを固定費とし、原料、燃料費などを変動費として、
変動費に一定の利益率をかけた値段で販売する売上費との差異を見る方法です。
単純に、売上UPが、利益UPにつながるように見えます。
この分析法の注意点は、固定費にあります。
仕事量が増加しても、本当に変化しない経費、たとえば基本給や基本料金や、
定額料金と、実際には変動してしまう経費、たとえば残業代、貯蔵、運搬代や、
設備の消耗費などがあるということです。
人手不足で人員を追加、または設備を増設すれば、固定費は跳ね上がって
しまいます。
さらに、上で述べたように、売上UP(生産UP)が、その他中間在庫の増加、
不良品の増加、クレームの増加を招き、容易に利益UPにつながらないということが
多くあります。
(3)のリスク管理において、経営とは全てにおいて「投資」であるという覚悟が
必要です。
資本を付加価値の付けれるもの(商品)に変換して、販売し、利益を上げる。
資本は変換した時点で、元の資本と同じ価値には容易に戻れません。
そこに投資のリスクがあります。
上の例えとして、通常は、投資した価値100に対して付加価値を付けて、
商品価値120にして販売し、利益20を得ます。
しかし投資した価値100に対して、付加価値を付ける際にロス(-10)が発生した場合、
商品価値120の販売によって得られた利益は、10となってしまいます。
そのロスが-30であった場合は、利益はなく、損失10となってしまいます。
これが投資のリスクです。
また、投資した価値100に対して付加価値を付けて、商品価値140にして販売した
として、売れ率が80%だった場合、利益は12となります。売れ率が60%だった場合、
利益はなく、損失16になります。
これが投資のリスクです。
ここでふたたび、経営活動のおおよそのロスを下にあげます。
生産におけるロスには、
(1)原材料のロス
(2)燃料のロス
(3)設備のロス
(4)労働力のロス
(5)生産方法のロス。(習得、開発のロス)
製品におけるロスには、
(6)必要とされる品質に適合しないロス
(7)必要とされる納期に適合しないロス
(8)計画されたコストよりかかる、または実際の価格が下がるロス
作りすぎによる処分ロス
供給におけるロスには、
(9)供給設備のロス
(10)労働力のロス
(11)供給方法のロス。習得、開発のロス
(12)需要調査のロス
(13)需要に対する宣伝、商品開発のロス
(14)契約にかかるコスト、契約内容、タイミングのミス、
契約内容と、製品とのズレによって生まれるロス
(15)製品保管・輸送のロス
以上の、15項目があります
これらのロスはすべて、有効率(質)、供給率(量)、維持率(速度)と、
コストとのバランス関係に、大きく影響されます。
例えば、(1)の原材料は、その有効率(品質)を上げればロスは減りますが、
大抵はそのコスト(値段)が上がります。
供給率を上げれば、一時的な生産の有効率は上がりますが、
在庫のための保管費によるコストアップ、在庫処分による長期的有効率の低下などが
起こります。
維持率とは、有効率や供給率を一定期間、安定レベル以上に保つ度合いです。
維持率を上げるためには、当然コストがかかります。
(5)の生産方法においても、技術の有効率を上げようとすれば、
それなりの研究、開発、習得にコストがかかります。
それらを行っても必ず効果が上がるとは限らず、無駄になるかも知れません。
それらの量的な範囲(供給率)を増やせば、確率的に効率が上がっても、
さらにコストアップになります。
維持率も同じです。
供給においても、お客にとって「気に入ったものがすぐに手に入る」という有効率を
上げるためには、「商品を色とりどり揃え、在庫で多く持つ」という供給率を上げる
方法をとります。
それらは当然、より多くのコストがかかります。
そして在庫が売れ残れば、それまでかかったコストは、すべて無駄となり、
さらに処分費までかかります。
ゆえに、それらを維持するには、かなりの資本力が必要です。
しかし供給は競争であるため、有効率が低ければ、商売のチャンスをなくしてしまう
恐れがあります。
ここでも、どの程度のコストをかけるかが問題となります。
これら、有効率、供給率、維持率を、【効果の三要素】と名付けます。
以上のように、全てのロスが、これら要素とコストのバランス関係の中にあります。
そしてそれぞれのロス間にも、バランスが存在しています。
これらから、ロスを最も少なくなるように、条件を選択するのが、
リスク管理です。
経営とは、これらのリスクを考えながら、前ページで述べた資本の回転率を考慮し、
1ページ目で述べた需要供給の関係から、商品の価格を決めることと言えます。
全てがバランス関係にあるこの経営は、システム的に行わざる負えません。
それが、システム経営です。
【3.システムについて】で述べたように、
システムという言葉は、いくつかの方式が、相互に関連しあって、
物事を有益に変化させる、構造(装置)一体を指します。
システムは制御される必要があります。
システムの制御には、次の三つの機能が必要です。
(1)システムを、その作用の目的から外れないように導く。(リード)
(2)システムの存在を守る。(ガード)
(3)システムを修復する。(ヒール)
それらの機能が働くためには、統一した意志が必要ということになります。
そのシステムを活用したいもの(管理者)の、意志です。
以上のことから、システムを構築するときは、
【(1)リード】 はじめに明確なルールを作る。(設計者)
【(2)ガード】 ルールを守るために、外れたものは排除できるようにする。(監督者)
【(3)ヒール】 ルールから外れやすい部分は、修復できるようにする。(保全者)
そのルールから外れるものは、罰せられるか、除外されます。
このようなシステムが、たえず健全に機能した状態にあるのが、秩序です。
経営をシステム化するのも同じです。
経営の目的は、資本を投入して、利益を上げることです。
利益を生み出すとは、基本的に、原材料に付加価値を付けて、製品とし、
その製品を、生産に要したコスト以上の価格で、販売することによって、
その差額を生むことでした。
そしてそれぞれの過程において、労働力として人を雇用します。
しかし人は、何の管理もなければ、システマチックには行動しません。
人には、三つの共通な習性があります。
楽をしたい。
安定化したい。
束縛されたくない。
これら【人の三習性】は、経営にとって、有効率、維持率を下げ、
供給率を上げて、コストアップにつなげてしまいます。
すなわち、人は自由に仕事をさせると、ほとんどが全体のことを考えず、
自分の都合の良いように、仕組みを作ってしまいます。
まとめて仕事をしてしまう。
段取り優先、過剰準備。
勝手にルール化する。
これを【作業者の三傾向】と名付けます。
システム経営を目指すなら、まず、雇用者の自由に任せないと言うことが、
第一のポイントです。
経営者は、まずシステムの大きな枠組みを作ります。
設計者を作り、、現状を調査させて、システム全体から部分のルールを作らせます。
監督者を作り、ルールを守らせ、それを破るものを罰するようにさせます。
保全者を作り、現状でルールが守れないようなら、現状かルールを修正、修復させます。
ルールは厳密すぎず、多少の融通性を持たせ、雇用者に選択の余地を残します。
また、ルールの必要性を十分に説き、ルールの作成、改正への提案を容易にさせます。
ルールは必ず認定者からの発行とし、自由に作られることのないようにします。
上で【作業者の三傾向】を上げましたが、管理者にも傾向があります。
観念的、短絡的となる。
面子や立場を優先する。
自分はルールを守らなくて良いと思う。
これを【管理者の三傾向】と名付けます。
これがまた、システム運営の障害となります。
管理者は、これを自覚し、その傾向を避けなければいけません。
システム運営にとって、その運営者は、
論理思考
システク思考
バランス思考
シンプル思考
以上の【秩序思考】によって、行動すべきです。
これらの思考でシステム経営された企業の構造状況を
【企業秩序】と呼びましょう。
経営は投資であり、リスクを伴うと述べました。
【生産の三要素】である原材料を買い入れ、設備を用意し、労働力を用意するために
かける資金を、【要素投資】と名付けます。
それらの【効果の三要素】である有効率、供給率、維持率の低下などによるロスを
防ぐためにかける資金を、【管理投資】と名付けます。
上の三要素のさらなる効果アップ、または新製品の開発などにかける資金を、
【開発投資】と名付けます。
以上、三つの投資が必要となります。
ローリスク・ローリターン、またはハイリスク・ハイリターンと言われるように、
また投資には、資金をかけた分、利益としてどれだけ戻ってくるかと言う【リターン度】と、
資金の、利益としての戻る確率をあらわす【リスク度】があります。
当然、避けるべきはハイリスク・ローリターンで、
理想はローリスク・ハイリターンとなります。
【要素投資】は、取り扱う商品によって、それぞれの度合いが変わりますが、
【管理投資】は、ローリスク・ローリターンの傾向であり、
【開発投資】は、ハイリスク・ハイリターンの傾向です。
投資の【効果の三要素】である、有効率、供給率、維持率において、
有効率は出来るだけ高く、供給率は最小限必要な量だけ、
維持率は出来る限り低くするのが、理想です。
しかし、これらもバランス関係にあります。
どれかを良くしようとすると、どれかが悪くなってしまいます。
これら三つの要素が、【要素投資】【管理投資】【開発投資】それぞれに存在し、
九項目のマトリックスを形成します。
それぞれの投資の必要性と、互いのバランスを考えながら、
どこに、どれだけ資金をつぎ込めるかを決めるのが、
その企業の資金力、管理力と開発力、情報力です。
すなわち【企業力】です。
商品は、品質、コスト、納期の三要素から出来ています。
【企業力】がなければ、投資はほとんどが原料、設備、労働力確保に向けられ、
品質、コスト、納期は、無計画の成り行きとなります。
【企業力】が上がれば、
品質を安定させる、品質を上げる。
コストを安定する、コストを下げる。
納期を安定させる、納期を早くする。
そして、[14.商売論]で述べた、
需要者に対する【利得感】【充足感】【安心感】を
上げることが出来るようになります。
【企業力】は、ムダをなくして供給を安定化し、
また需要を安定に引きつけておくことができます。
また利益を確保し、貯蓄ができ、幅広い投資が可能で、
さらに【企業力】を上げることができます。
【企業力】を上げるとは、
資金力を上げる、管理力を上げる、開発力、情報力を上げると言うことです。
そのためには、[資金、製品(材料)、設備、人、技術(知識)]
それぞれの質(量)を上げることです。
製品:取り扱う製品の、将来への発展性が重要なポイントとなります。
(1)で述べた、その製品の需要の形態によって大きく影響されます。
必須需要・・・急な発展もないが、急な縮小もない、
大きな利益は生まないが、安定している。
選択需要・・・流行需要となると、大きく発展する、
やがて必須需要となる場合と、縮小する場合がある。
社会の景気に影響される。
生活需要・・・急な発展もないが、急な縮小もない、
大きな利益は生まないが、安定している。
時代に応じて、徐々に変化していく。
技術革新で大きく変化することもある。
個別需要・・・急な発展もないが、急な縮小もない、
大きな利益は生まないが、安定している。
生活需要より規模が小さいが、競争も少ない
流行需要・・・流行に乗ると、大きな利益を生む。
急激に縮小するため、引きぎわを誤ると損失が大となる。
生活需要になれば、安定化する。
【企業力】を上げる、他の要素について述べます。
設備:需要の変化に合わせて、それを生産、供給する設備も更新しなければなりません。
更新すべき必要、十分条件を見定め、時期を決めることがポイントです。
設備の更新は、大きな投資となります。
資金の貯蓄量、融資量により、その規模が決められます。
人:企業にとって、優れた人材が必要なのは当然です。
優れた人材とは、職種に応じた以下の能力を持つものです。
理解力が高い・・・認識に抜け目がなく、本質をとらえる。
制御力がある・・・根気よく維持する。感情や欲求に影響されない。
創造力がある・・・慣習にとらわれず、自由に発想できる。
動機力がある・・・チャレンジ精神がある。行動が早い。
これら優れた能力の者を引きつけ、状況に応じて満足する待遇を与え、
また人の、未知の能力を見抜く洞察力が、経営者には必要です。
(これらそれぞれの人の能力は、企業力のそれぞれの力に匹敵します。
すなわち経営者の能力、役員、中堅社員の能力が、大きく【企業力】に
影響すると言うことです)
理解力=情報力
制御力=管理力
想像力=開発力
動機力=資金力
技術:設備と同じく、需要の変化に合わせて、生産、供給の技術もレベルアップし、
研究開発されなければいけません。
前ページの製品の項で述べたように、その製品が持つ将来への発展性に影響されます。
品質アップ、コストダウン、納期短縮技術を目指します・
大きな発展が望めないのなら、関連開発、新規開発を目指すことになります。
【企業力】がさらに【企業力】を上げます。
スタートは、資金力となります。
資金力は、利益を上げることから始まります。
繰り返しになりますが、ふたたび経営者の判断を、
需要・供給量から、具体的に述べていきます。
企業の供給量の算出し、需要量と供給量の関係把握します。
供給量より需要量が少ないなら、作りすぎです。
商品の売れ残り、または設備や人の余剰が起こります。
規模に縮小、または値段を下げて、売上を増やし経費(固定費)分を算出します。
原価のコストダウンが、企業の利益をキープできるかの、大きなポイントとなります。
そのコストダウン化に、余った人材、時間を導入します。
供給量より需要量が多いなら、増資(増経費)を考え、規模を拡大するか、
値段を上げて、需要を抑制します。
利益を上げるチャンスです。
利益を上げれば、【企業力】の資金力が上がります。
しかし利益を求め過ぎ、供給量より過剰に受注しては、納期対応ができません。
また、手抜き商品を供給することになりかねません。
クレーム、ロスの発生で、利益をくってしまいます。
需要が多いのに、不景気感から、さらに値段を下げると、注文が殺到してしまいます。
利益は少ないのに、設備も人も大忙しのため、コストダウン化も不可能で、
ロスや無駄が多発してしまいます。
上と同じで、納期対応に間に合わず、手抜き商品の出荷で、クレームも多発します。
少ない利益をさらにくってしまい、【企業力】の低下を引き起こします。
【企業力】の低下は、設備更新の遅れ、そのための時代対応の遅れ、
待遇の悪化、人材の流出、技術の不安定、未開発となります。
現状の【企業力】に応じた、利益の追求をしなければなりません。
自然に従い、ビジネスチャンスに飛びついてしまうのでなく、
多少の無理程度に、進出をとどめておく制御も必要です
すなわち、規模の拡大ばかりでなく、縮小、撤退、維持も、
ある意味で企業の発展と言うことです。
これがシステム経営の立場です。
【企業力】が高ければ、問題はありません。
システム経営は容易であり、さらに【企業力】を上げることが可能です。
しかし多くの企業が、景気の動向や気まぐれな需要で、
【企業力】を圧迫されています。
システム経営は、(4)で述べた【企業秩序】を目指します。
【企業力】が高ければ、緻密な【企業秩序】が可能です。
【企業力】が低ければ、そのレベルに応じた【企業秩序】を求めます。
論理思考~システム思考~バランス思考~シンプル思考
以上の【秩序思考】によって、今、企業の秩序にとって、
何が重要で、必要であるかを判断し、行動すべきです。
【企業秩序】とは、システム内にルールを作り、それを守ることでした。
ルールとは、混乱を避けるために、システムを整理整頓しておくことです。
整理整頓とは、
もっとも効率良く(有効率)、
多人数のものが(供給率)、
いつでも(維持率)利用できるようにしておくことです。【効果の三要素】
【企業力】に応じて、整理整頓の度合いを決めます。
決めなければいけない基本的なルールは、何でしょうか?
ふたたび、企業の基本的な働きを上げましょう。
「資本を費やして、価値のあるものを生み出し、それを販売して、利益を上げること」です。
すなわち、
資本投資の経営上のルール
生産のための管理のルール
販売のための社会上のルール
利益を確保する経理上のルール
以上が必要です。
感覚的、衝動的に行われがちな、これらを明確なルールの下で把握することが、
システム経営の第一歩です。
経営者は、付加価値や差別化で利益を上げます。
協力・協同による利点
分担、分業による利点
新発想による利点
高能力による利点
価値の譲渡による利点
これらは、基本的に社会の秩序の上に成り立っています。
人と人の係わりから成り立っているわけですから、
経営者に、人を尊重する気持ちがないと、利益は持続できません。
人を尊重するとは、社会のバランスの中で誠意をもって対応すると言うことです。
企業には、従業員がいます。
客は、金銭と商品を交換して、利益を企業にもたらします。
従業員は、労働力と金銭を交換して、利益を企業にもたらします。
そう言う意味では、客も従業員も、経営者にとっては同じです。
従業員に対しても、節度を持って大事に扱わなければなりません。
大事に扱われた従業員は、その得を、大きな利益にして企業に返してくれるはずです。
誠意を持って人に対すれば、ほとんどの人が誠意で答えてくれるでしょう。
中には、誠意の通じない従業員もいます。
自己の利益を優先しすぎ、企業の損害も平気な者です。
そういう者を引き入れてしまった企業側に、すきがあったと反省すべきことです。
企業の誠意が食いものにされ、他の従業員にも悪影響を与えます。
経営者と従業員の信頼関係もなくなり、損得勘定だけの競い合いとなります。
そういう者はできるだけ早く排除すべきです。
システム経営は、客や従業員の心の動きをもシステマチックに考慮して成り立ちます。
最後に、企業の衰退について述べます。
企業が利益を上げるためには、次のことが必要でした。
(1)値段を高くする。
(2)資本の回転を上げる(効率を上げる)。
(3)リスク(ロス)を管理する。
(1)の値段を上げても、(2)の回転率が落ちない(需要を独占)なら、
企業は儲かります。
企業力が上がり、リスク管理でさらにコストダウンが可能です。
企業は大きく発展します。
すなわち需要があれば、商品は高く売れ、利益に恵まれるという図式です。
しかし、利益に恵まれると知れると、多くの企業が参入してきます。
市場は競争となり、(1)の値段が高ければ、売れ行きが悪くなります。
売れ行きが悪くなれば、(2)の回転が悪くなります。
すなわち供給が増えると、回転率が落ちるか、商品の値段が下がり、
利益が乏しくなるということです。
(1)の値段を他よりさらに下げれば、注文が集中します。
(2)の回転が上がり、薄利多売で利益を上げることが出来ます。
しかし(3)のリスク(ロス)が増えてしまう可能性も出てきます。
(3)のリスク管理を強化すれば、さらに利益を食ってしまいます。
管理をしなければ、「安かろう、悪かろう」の状態となります。
(1)の値段を下げても、(2)の回転率が上がらないなら、最悪です。
その分野からの撤退を検討すべきです。
利益が乏しくなれば、やがて企業は衰退します。
コストダウンや、新商品の開発、新分野への進出に、生き残りをかけます。
新たな需要を起こすことは、宝くじに当たるごとくです。
また、新分野への進出は、しょせん後追いとなり、市場競争に巻き込まれます。
コストダウンは品質、納期に影響し、またリスクを高めます。
他社も追従するため、コストダウンは限りなく追究されてしまいます。
企業は、遅かれ早かれやがて衰退していきます。
他の追従を許さない、固有の技術を持った企業や、
特有の重要を独占している企業は、衰退が緩やかです。
しかし、企業の利益率の良さから、大きく規模を拡大すると、
赤字部門を抱えたりして、企業利益を圧迫します。
また技術の流出などを引き起こします。
需要を独占している企業は、サービスが低下している傾向があり、
他に供給があれば、簡単に客離れしてしまいます。
需要は、高品質化、短納期化(少ロット化)、低コスト化の方向に進みます。
どれも、企業の利益を圧迫するものです。
そして必要がなくなれば、需要は跡形もなく消えてしまいます。
需要者は、わがままで欲張り、気まぐれです。
需要に応じて、企業が生まれ、需要の減衰に応じて、企業は衰退します。
これは、企業の運命です。
これら、高品質化、短納期化(少ロット化)、低コスト化に、
過剰に応じないのが、システム経営です。
「顧客満足」という観念に、左右され過ぎてはいけません。
品質は、ランク付けします。
最高級、高級、中級、低級、最低級と分け、それぞれのグレードを顧客に
選ばせるのが理想です。
当然、グレードが下がる度に、短納期化、低コスト化していきます。
または、値段によって、グレードが理解されます。
値段に比べて、グレードが高い、またはそう感じさせることが重要です。
グレードが明確に分かれていない場合、いわゆるオーダー品の場合、
顧客は当然、最高級を望みます。
契約の際、グレードまたは品質レベルを明確に、相手に伝えることが需要ですが、
通常、商品の劣る点をあげて、営業することは避けてしまいます。
契約時、品質レベルを明確にしないため、クレームが発生します。
次に、クレームについて論じます。
クレームは、主に顧客が要求している品質レベルより低いために発生します。
納期は日付、コストは値段として、明確に数値化出来ますが、
品質は状態であるため漠然としているため、顧客との間に齟齬が生じやすいためです。
クレームの原因としては、以下の状態が想定されます。
(1)一部が、何らかの異常で、品質レベルに達していない。
(2)全体が、品質レベルに達していない。
(3)品質レベルの許容境界線上にあり、品質のバラツキが大きい。
顧客は自分が支払った代価に対して、常識的に見て、不利益、不満足または
不快を感じた時に、クレームを発生させます。
すなわち品質レベルにはグレードがあり、品質が、それぞれの品質レベルの
許容境界線より劣る場合は、商品としての価値が不当であると言うことです。
許容内品質、または基本品質を守ることは、企業としての良識です。
発生したクレームがあまりに非常識である場合、
クレームに対する対応が悪い場合、同じクレームが連続する場合、
顧客は、その企業に良識がないと判断し離れていきます。
クレームが出てる時点では、まだ顧客は企業の良識を信じているわけです。
企業の良識が、その企業の発展の原動力となります。
すなわち、顧客からのクレームの対応が、その企業の試金石と言えます。
企業の良識とは何でしょうか?
企業は、需要に対する商品やサービスを供給するために存在します。
上で述べたように、出来るだけ需要者を満足させることが、
一番初めに求められる企業の良識です。
その満足は、その商品の有効期限の間、保証されなければいけません。
しかし、前ページでものべたように、顧客満足という観念で、
品質やサービスを重視しすぎてもいけません。
需要者の満足のために、社会全体や人類の将来に渡って、
大きな害を与えないことも、企業の良識です。
たとえば、社会に過剰な商品やサービスは、原料やエネルギーの乱費です。
社会全体の持つ資源を、無駄に消費してしまいます。
資源の有効利用が、企業に求められます。
資源が尽きれば、企業自体が衰退してしまいます。
利益を出して、企業力を高め、さらなる需要を開拓し、
企業と社会が、相乗に発展していくのが理想です。
利益を出さず、経費分だけ浮かせて、資金を回転させていくだけでも、
企業は維持していけます。
商品が売れて、社員の給料が払え、原料や燃料費、必要経費が払えれば、
会社は潰れることはありません。
しかし余裕がなければ、変化についていくことは出来ません。
その企業も、やがて衰退していくでしょう。
利益を生んで、社会や経済効率、文明の発展を望むのも、企業の良識です
クレームは、その企業の良識を問うものと述べました。
企業が、その社会的良識に乗っ取って十分であるなら、クレームが不当となります。
顧客の過剰要求となります。
クレームは、顧客からだけでなく、企業内からも発生します。
従業員の問題点提議です。
この場合も、従業員の、現状の企業力に対する過剰要求のことがあります。
しかし内外のクレームの多くは、企業の雑さ加減をあらわにするものです。
企業システムの不備として、次のようなことが考えられます。
(1)システムが未完成である。
(2)システムが不合理に作られている。
(3)システムが煩雑である。
(4)システムが物流速度についていけない(物流が多すぎる)。
(5)システムの管理力が足りない(管理者が少ない)。
システムに不備があれば、当然、整備されるわけですが、
一つ考慮すべき、重要なポイントがあります。
それは、そのシステムの寿命、またはそのシステムを必要とする事業の寿命です。
その事業、または需要と供給が、一過性のものから段階的に、
将来に発展、成長していくものまであります。
すなわち、それらの寿命があります。
短命なものには、システムにおいて、供給の速度が最優先されます。
システムの作りが多少雑でも、やむを得ないと言うことです。
長期的に安定、発展していくものには、細やかなシステムの整備が必要です。
目先の利益に捉われて、長命のものを短命のもののごとく取り扱うと、
成長の目を摘んでしまうことになりかねません。
それらには、クレームを羅針盤とした、余裕を持ったシステム作りが理想です。
企業は、長期安定、発展を望みます。
当然、事業に対しても、短命なものより長命なものを望みます。
しかしどの事業も、いつか寿命を迎えます。
次を担える事業が育っているかが、企業の永続の決め手となります。
企業活動を野菜の収穫に例えると、社会は農地になります。
農地を貧しくしてしまっては、収穫もやがて貧しくなってしまいます。
収穫の効率を良くするのと同時に、農地も豊かにならなければなりません。
それが、企業の良識であり、良識は企業を安定、発展させます。
企業の良識を維持できるのは、企業秩序システムの構築であり、
それらは高い企業力によって可能となります。
そして、企業力は利益によって養われます。
利益は、有効な投資によって生まれます。
しかし投資には、必ずリスクが伴います。
企業はどんなに大きくても、いつもリスクと言う不安を基盤にしています。
その上に、いかに安定した供給システムを作り上げているかが、重要です。
そして、そのシステムもやがて寿命を迎えます。
これらを十分認識して経営を行う、それが、システム経営です。