26.異性論

種を残していくのは、生命の第一の目的です。

人もまた、その種存本能にあやつられています。

「性」という仕組みが、さらに生命を競争にせき立てます。

生物の多くが、雄雌の性を持つようになったのは、なぜでしょうか?

【16.恋愛論】において、以下のように述べました。

二つの遺伝子が組み合わさって、性質が変化する、分離―融合の

増殖方法が生まれると、環境に適応する確率を、飛躍的にアップさせました。

二つの遺伝子が、無作為に組み合わさるのでなく、

オスとメスと二種類の性の組み合わせになったのは、

無作為では、安易な手段として、自分の遺伝子との再融合が起こってしまいます。

オスとメスという、違う細胞スタイルの組み合わせにすることによって、

その自分との再融合を避けることが出来ます。

このレクチャーでは、人としての男と女の性差と、

その関わりを述べていきます。

女性は、胎児を体内で成長させ、出産します。

ヒトの赤ん坊は、頭部の発達が早く、異常に大きくなるため、

未熟な状態で生まれます。

すぐに外敵から、逃げることが出来ないため、

生後数年は、母親の保護の下に置かれています。

母親は、赤ん坊にとって、体内にいると同じような、

安全な環境を作り出します。

それらの目的が、女性の体質、性質、能力を、大きく決定してしまいます。

体質は、やわらかく、清潔、なめらかです。

性質は、やさしく、こだわりがなく、また感情的です。

能力は、ていねい、確実で、近視的・分散的です。

その女性と子供の生活を保障する必要のある、男性は、

外の環境に働きかけ、食料を得るため、以下のようになります。

体質は、力強く、頑丈で、しなやかです。

性質は、強引かつ繊細、また論理的です。

能力は、処理優先で、すばやく、社会的・集中的です。

以上が、性としての機能性から見た、それぞれの特徴です。

このような特徴を基盤に持つということで、

そうでなければならない、ということではありません。

【16.恋愛論】において、以下のように述べました。

オスもメスも、自分の遺伝子を強くして残したいと思います。

そのために、強いパートナーを求めます。

強いパートナーを選ぶと、当然ライバルも多くなります。

オスもメスも、自分の強さをアピールする、同性間での競争をしなくてはならなくなり、

環境への、より適応したものだけが、子孫を残せるようになりました。

自然淘汰のシステムです。

強い遺伝子とは、何でしょうか?

生命の防御が優れていている(ガード)。

エネルギーの獲得が優れている(リード)。

生命の回復が優れている(ヒール)。

これら三つの特徴をもった遺伝子は、環境の影響に対して強く、

生命の長い存続、継続が可能となります。

前ページで述べた、機能的な性差の特徴は、

子孫を育てるということを、目的にした場合に、求められるものです。

上の強い遺伝子を残したいという目的では、性差はそれほどなく、

以下のようなことが求められます。

体質的には、丈夫であり、俊敏、生命力にあふれていること。

性質的には、積極的であり、かつ慎重であること。

能力的には、社会での適応能力が高いこと。

また、男性と女性の身体の、メカニズムの違いによっても、

性差の特徴が生まれます。

男性は、同時期に、何人でも、女性を妊娠させれます。

女性は、妊娠、出産、育児の期間から、数年間は、一人の男性しか選べません。

遺伝子を残すのに、男性は、拡散型であり、女性は、選択型と言えます。

男性の精子は、一般に、数億あると言われ、それが1個の卵子を目指して、

競争を行ないます。

このメカニズムの、意味は、何でしょうか?

男性は、拡散型であるため、大量に精子を作ります。

すなわち、欠陥のある精子の発生確率も、多くなります。

競争をさせることによって、欠陥精子を欠落させることが出来るわけです。

生命力にあふれた、正常で、より強い精子が、勝者となります。

また、多くの精子は、自分たちの一個を勝者とするために、互いに協力して、

道を開き、他者の精子を排斥するとも言われています

女性の卵子は一つずつ、一ヶ月ごと、慎重に作られます。

ヒトの胎児は大きく、子宮の、かなりの面積を占めるため、

一般に、複数の卵子を用意しておくことが出来ません。

一つの卵子が受精を待ちます。

失敗が許されないため、パートナーの選択の幅を広くとろうとします。

そのため、自分のまわりに、なるべく多くの男性をひきつけようとし、

女性は、性に対して、開放的になります。

そして、その中から選んだ男性を、自分に引き止めておこうとします。

性風俗・性文化が、男性需要中心型、女性供給中心型になるのは、

この男性の拡散型と、女性の開放性によります。

男性が、一般に性欲の発散が直接的であり、

女性が湾曲的であるのも、これらのメカニズムの違いによるためと言えます。

また、種存本能から、男性は女性を保護しようとし、

女性は、男性の保護を受けようとする振る舞いをします。

これらをふまえて、現代の異性論を述べていきます。

男女の性差の特徴は、時代によって変化していきます。

前ページで述べた、社会での適応能力によります。

古代の狩猟、採取時代には、

男女とも、きびしい環境の中で、男性は必死で食料を得ようとし、

女性は必死で子供を守り、ともに持久力や俊敏さが、必要とされます。

続く牧畜、農耕時代には、

男女、共同の仕事を行って、ともに持久力や体力が必要とされます。

工業、商業の産業時代、発展期には、

男性が、産業活動の中心となり、体力や技術力が求められ、

女性は、男性の世話や、育児が中心となり、持久力が求められます。

成熟期には、労働条件が良くなり、また、家電製品の発達によって、

男性にも、女性にも、生活の余裕が生まれます。

男性は、育児や家事に参加し、女性は社会に進出するようになります。

生活の余裕から、文化的活動が盛んになり、

男性も女性も、知力が重視されるようになります。

現在のサービス、情報時代には、

男女間の仕事差がなくなり、技術力や知力が、ともに必要とされます。

性的特徴に、いくつかの変化があらわれてきます。

【男性・女性の中性化】と、【男性・女性の低年齢化】です。

【中性化】については、以下のように考えられます。

労働の状況が、肉体型から、頭脳型に変化し、

生活も豊かで文化的になり、男も女も個性的、趣味的になっていきます。

そのため、社会から性差の特徴が求められず、平等意識が強くなっていきます。

機能として、社会の適応性に、両性から、より優れたところが選ばれていきます。

体質は、しなやか、清潔、なめらか。

性質は、やさしく、こだわりがなく、強引かつ繊細、論理的。

能力は、ていねい、確実、すばやく、社会的・分散的。

【低年齢化】については、以下のように考えられます。

中性化によって、機能的には、性差の特徴がなくなってしまいましたが、

性のメカニズムによる、性差の特徴は残っています。

男性は、本能的に、男性らしさをアピールしたがり、

また、女性を保護しようとします。

しかし、強調すべき特徴がなく、自信もないため、

対象の女性を、低年齢化する、または仮想化して、

自分が、コンプレックスで傷つくのを避けようとします。

女性も、本能的に、魅力で、男性をひきつけようとし、

また、男性の保護を受けようとします。

女性は、元来から、若さ願望があるうえに、

男性が低年齢化を望むため、それに合わせようとします。

女性が低年齢化し、また、それに合わせて、男性が低年齢化するという、

相関現象が進んでいきます。

将来に向かって、性差の特徴と、その関係は、どのように変わっていくのでしょうか?

文明が進歩し、社会が豊かになってくると、

短時間、軽労働の収入で、男女とも、不自由なく暮らせるようになっていきます。

生活技術、文化、経済も発展し、

欲求を満たす、ほとんどのものが、貨幣で購入出来るようになります。

子供を作り、育てるという、動物の本能に基づく行為も、

安楽な生活に慣れてしまった人たちには、大きな負担に感じるようになります。

そのため、子供を作らない、本能を満たす代償行為をする、

子供を少人数にする、育児を代理者に依頼する、などの方向に進みます。

結婚の意義も薄れ、女性は、男性に、生活上の保護を受ける必然、

男性は、女性を保護する必然がなくなります。

女性は、男性の必要性をなくし、本能から解放され、自立し、自信を持ちます。

男性は、女性から、必要性を拒否され、本能に振り回され、自信をなくします。

機能的な特徴として、女性は、「こだわりがなく、感情的、近視的、分散的」、

男性は、「強引かつ繊細、論理的、社会的、集中的」と述べました。

女性の「こだわりのなさ、感情的、近視的」特徴は、

身の回りの環境に順応しやすいということです。

男性の、環境が変わっても、以前の環境に、いつまでもこだわるといった傾向が、

女性は、薄いことをあらわします。

女性は、環境に合わせて、プライド(自尊心)が変化しますが、

男性は、以前の環境のプライドを、いつまでも引きずります。

これが、男性の、「社会的、論理的」特徴をあらわします。

社会での存在価値を、認識、納得していないと、不安になることから発生する性質です。

女性の「分散的」特徴は、同時に、いくつかのことが認識できるということで、

本来、女性は、日常、防御の体制にあったことを示します。

育児や家事をしながら、敵から、身を守る必要があったからです。

男性は、狩猟において、獲物を追い詰める、「集中的」特徴となりました。

男性はさらに、「強引かつ繊細さ」を持ち合わせ、

慣れないものごとに対しては、神経質になり、慣れてくると、強引になります。

情報があふれ、技術が高度化し、人間関係が複雑になる、先進社会では、

男性、女性ともに、大きな精神的ストレスを受けます。

上で述べたように、女性は、気楽でタフな傾向にあり、

男性は、融通がきかず、神経質になる傾向です。

つまり、女性は、ストレスを緩衝しやすい性質で、

男性は、ストレスをまともに受けやすい性質と言えます。

以上をまとめます。

かって、男性は、環境に対して、攻撃的に、女性は防御的に、

互いの立場を保っていました。

環境が安定し、攻撃や防御が、直接的より間接的に変化し、

対応の意味合いが強くなると、

女性も、男性と同じ社会に進出し、攻撃的に変化します。

攻撃をすれば、反撃を受けます。

男性に対して、女性は、精神的反撃に対して、タフです。

女性は、攻撃、防御のバランスに優れた状態を作り出します。

また、女性の大きな特徴としての、癒し機能によって

敵や味方の関係を緩和し、穏やかに、曖昧にします。

女性は、堂々と環境に立ち向い、

男性は、女性に立場を奪われて、自信をなくし、

やたら横暴に振舞ったり、拒絶的、または、快楽的、

女性に気に入られようと、回りをうろうろしているような傾向になります。

肉体的な強度を必要としない先進社会では、いくつかの点で、女性に優位ということです。

しかし、自立した女性も、生きる目的が明確でないと、その自信を見失います。

男性は、その「論理的、集中的」特徴から、生きる目的を明確に出来る能力に、

優れています。

社会を大きく切り開き、人を未来にリードしていく力は、男性の特徴に委ねられます。

未来に渡り、異性関係はゲーム化、異性交渉はスポーツ化していく傾向に

あります。

習慣的な性差はなくなり、本能的な性差のみが残ります。

異性の、お互いに優れたところは認め合い、劣ったところは補う合う、

高い意識での、異性の協力が、人生を豊かにしていくと思われます。