性格とは、人がいろいろな状況に対して、習慣的な反応をする、
その反応パターンのことを言います。
人の性格は、意識回路によって、決定されます。
意識回路は、認識・記憶野、欲求野、感情野、意識野の、
大きく四つの分野から出来ています。
したがって性格も、大きく四つの要因からなります。
第一の要因となる認識・記憶野では、
経験や知識を基準にして、物事を認識します。
人によって、認識する明解度(量)、
認識する速度(時間)、
記憶した内容の正確度(質)、
認識したものをパターン化する把握度が、違います。
それらの能力の差が、いくつかの性格の因子となります。
明解度が大きければ、物事を細部まで、正しく、広範囲に認識でき、
感覚の鋭い、抜け目のない性格となります。
能力的には、優れていて良いのですが、繊細すぎるために、
多くのことに気がつきすぎて、気が休まらないという欠点に陥ります。
明解度が小さいと、物事の認識が荒く、誤り、抜け落ちが多くなり、
鈍い、間の抜けた性格となります。
認識の速度が早ければ、反応が早くなりますが、認識が荒いと、
軽薄な性格(おっちょこちょい)になります。
速度が遅ければ、のろまな性格となります。
記憶した内容の正確度とは、
認識した物事を照合するさいの、過去の記憶(知識)の正確さを言います。
物事を正しく記憶するためには、まず、正しく認識されていなければいけません。
正しく記憶されていないと、つぎに、認識したときに、
それがどれだけ明解にされても、照合が荒い、照合が間違っている、照合が出来ない
ことになります。
正確度が高ければ、厳密な性格となります。
正確度が低ければ、大雑把な性格となります。
認識したものをパターン化する把握度とは
物事はすべてを完全に記憶することが出来ないため、
パターン化して記憶する必要があるわけですが、
そのパターン化が、物事の本質、全体を簡略化して、とらえているか、
それらより、どれだけぼけているかの、度合いのことです。
把握が的確であると、理解力のある性格であり、
把握のぼけが多ければ、理解力の乏しい性格となります。
つぎは、第二の要因である欲求野での、性格の違いについて述べます。
欲求野は、三つの本能から
休養追求―(生存本能)―疲労回避
快楽追求―(種存本能)―不快回避
尊敬追求―(存在本能)―軽蔑回避
以上の追求、回避の欲求が、発生します。
それぞれの欲求の強さによって、特有の性格があらわれます。
休養追求とは、食欲、睡眠欲などの、自己の命の充足と安全を求める欲求です。
この欲求が強いと、わがままな、自己中心的な性格となります。
強すぎると、あさましい性格になることもあります。
疲労回避とは、体を動かすような、エネルギーの消耗を避けようとする欲求です。
この欲求が強いと、面倒くさがる、なまけ者の性格となります。
快楽追求とは、性欲を中心にした、感覚的な快楽を求める欲求です。
性ホルモンに突き動かされるもので、女性が化粧に夢中になったり、
男性が勝負事に熱中することなども、ここに含まれます。
この欲求が強いと、欲情的な、欲張りな性格となります。
不快回避は、性的な不安感、不快感を避けようとするものです。
身体的、精神的コンプレックスに触れられることを、嫌がります。
この欲求が強いと、臆病な性格になります。
尊敬追求は、自己の存在価値を認めてもらおうとする欲求です。
この欲求が強いと、自己顕示力の強い性格、攻撃的な性格となります。
軽蔑回避は、自尊心が傷つくのを、避けようとするものです。
この欲求が強いと、内向的、恥ずかしがりやの性格となります。
第三の要因である感情野では、
おもに四つの感情を引き起こすホルモンが分泌されます。
全身を活性、活力化させる、興奮ホルモン
全身を沈静させる、慰安ホルモン
全身を快感、充足感で満たす、快感ホルモン
全身を不安にさせ、緊張させる、不快ホルモン
これらの感情ホルモンの、分泌の多少が、いろいろな性格を作ります。
興奮ホルモンが多く分泌されると、興奮しやすく、少ないと、冷静な性格です。
慰安ホルモンは多く分泌されると、沈みがちで、少ないと、薄情な性格です。
快感ホルモンが多く分泌されると、明るく、はつらつとしており、
少ないと、暗く、不活発です。
不快ホルモンが多く分泌されると、臆病で、神経質であり、
少ないと、大胆で、無用心です。
それぞれのホルモンの組み合わせによっても、さらに性格が作られます。
快感ホルモンに、興奮ホルモンがともに多く分泌されると、
われを忘れて熱中する、調子にのりやすい性格となります。
快感ホルモンに、慰安ホルモンがともに多く分泌されると、
ものごとに感じ入りやすい、情感豊かな性格となります。
不快ホルモンに、興奮ホルモンがともに多く分泌されると、
怒りやすい、キレやすい、またはヒステリックな性格となります。
不快ホルモンに、慰安ホルモンがともに多く分泌されると、
悲観的で、自虐的な性格となります。
第四の要因である意識野での、性格への影響は、
ここで発生している、二つの欲求(達成欲求と秩序欲求)の強さによるものと、
問題に対応するための、五つの機能(記憶、観察、分析、推理、創造)の能力に
よるものがあります。
達成欲求とは、発生した問題(要望)に対して、満足するまで対応したいという
欲求です。
この欲求が強すぎると、完璧を求める、執拗な性格となります。
排他的、攻撃的な性格になることもあります。
欲求が弱いと、中途半端な、あきっぽい性格になります。
秩序欲求とは、問題に対応するために、自己とまわりの環境に秩序を求める
欲求です。
この欲求が強いと、まじめで堅実な性格(常識的)であり、
バランスを欠くと、融通の利かない、がんこな性格(保守的)となります。
弱いと、だらしない、ルーズな性格であり、うそでごまかす性格(非常識)に
なることもあります。
機能としては、
記憶力、観察力が優れると、気が付く、気の利く性格で、
劣ると、気が利かない、学習能力の劣る性格となります。
分析力、推理力が優れると、論理的、合理的な性格で、
劣ると、理不尽な性格、衝動的な性格となります。
創造力が優れると、既存の観念にとらわれない、発想の活発な性格であり、
劣ると、固定観念に陥りやすい性格となります。
以上、意識回路が作り出す性格を述べてきました。
認識・記憶野の能力度、
欲求野の欲求度、
感情野の感情反応度、
意識野での、対応の欲求度と能力度
これら要因の差は、遺伝、環境の差によって生じます。
そして、これらで作られた性格は、当然、互いに影響を及ぼしあい、
さらに性格が増幅していく場合、または、互いに打ち消し合う場合があります。
育ってきた環境の、
欲求度の生存本能が強い(環境が競争下にある)と、認識・記憶能力が優れ、
存在本能が強い(環境が自分中心にある)と、感情反応が強くなる傾向があります。
また、認識・記憶能力の発達は、意識野での対応能力を向上させます。
『かわいい子には旅をさせよ』という諺は、この能力向上のことを言うのです。
現代では、有利に生きるために、能力は優れていたほうが良く、
欲求度は制限され、感情反応度は抑えられるほうが、良い方向にあります。
人は誰でも自分の性格を、その方向に、多少なりと抑制しようとしています。
しかし、生まれ持った能力を、さらに向上させることは、非常に困難であり、
通常は、能力の劣っているために受けるストレスを、欲求野、感情野で回避し、
意識野で、自己を正当化する理屈をひねり出して、やわらげようとします。
すなわち、意識野は、意識回路を一つにまとめ、互いの整合性をとろうとしています。
その、まとまったものが個人の意識であり、基準となる価値観を持ちます。
その価値観が、抑制しきれない性格を許容し、整合性をとります。
価値感とは、物事の優劣を比較するときに用いる天秤です。
その天秤は、過去に、意識回路が反応してきた記憶の蓄積から作られます。
すなわち、性格が価値観を作り出し、その価値観が、性格を許容します。
実生活で、性格に問題があっても、当人は、価値観がその性格を許容して
いるため、性格を大きく変えようとしません。
価値観には、上の四つの要因にともなって、4パターンあります。
過去の記憶を重視する(認識・記憶野)・・・ロボット型
欲求の達成を重視する(欲求野)・・・子供型
感情の衝動を重視する(感情野)・・・王様型
論理性を重視する(意識野)・・・インテリ型
また、価値観には、宗教や慣習による倫理観が影響します。
倫理観が強ければ、正義感の強い性格、犠牲心のある性格
弱ければ、ひきょうな性格、人格を認めない性格となります。
意識に衝撃をうけるほどの、あらたな経験、知識を受けて、価値観が
変われば、性格を大きく変えたいという思いが、生まれる可能性があります。
しかし、性格を変えたいと思っても、意識回路がレベルアップしない限り、
非常に困難です。
それぞれの性格のメリット、デメリットを理解して、
メリットとなる点をさらに伸ばすことによって、全体を良いほうに変えるのが、
性格を変える可能性の高い方法のようです。